今回の内容
今回は、株式場(IPO)に向けたロードマップの【STEP2】となります。
経営者として「株式上場の進め方」についてのイメージをつかんでいきましょう。
資本政策・資金調達計画
IPOを意識したことのある経営者であれば、
「資本政策」
という言葉は聞いたことがある方が
多いのではないでしょうか?
IPOを意識されている経営者とお会いすると、
最近の経営者はよく勉強されているので、
「資本政策は気になっていて調べたりしています」
「資本政策を過去に一度作ってもらったことがあります」
といったような回答をされる方も多い印象です。
とはいえ、実際にIPO準備が進んでいないステージの場合、
結局、過去に作った状態でデータは眠ったままになっていたり、
資本政策シートを実際に作成できていなかったり、
あまり前に進んでいないケースも多いのではないでしょうか?
経営者によって「資本政策」への取組み度合いは様々だと思いますが、
IPO準備の初期段階で一度は検討しておきたいテーマですので、
「【STEP2】資本政策・資金調達計画の立案開始」
について今回は資本政策についてお伝えできればと思います。
具体的には、
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①資本政策とは何なのか?なぜ必要なのか?
②資産管理会社とは?
③資本政策はどうやって作るのか?
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についてお伝えできればと思います。
資本政策とは何なのか?なぜ必要なのか?
まず、資本政策とはどのようなものなのか、
簡単に説明させていただくと、
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上場後の「株主構成」のバランスを考慮しながら
資金調達の計画を立てること
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といった感じでしょうか。
株式上場するということは、
多数の外部株主が増えるということです。
外部の株主が増えて経営するのは、
結構、窮屈なものです。
好意的な株主が多ければよいのですが、
なかには、好き勝手に注文をつけてきたり、
クレームを言ってきたりする株主も
一定割合増えるでしょう。
上場前は自由に経営できていたことが、
株主を意識した経営が必要になり、
自由度は少なくなると思います。
この点は上場を目指す時点で覚悟は必要ですが、
とはいえ、できれば、きちんとした株主さんに
株をもってもらいたいところです。
ただ、株主構成についてあまり意識せず上場を目指すと、
結果的に計画性のない株主構成になり、
経営がしづらくなる恐れがあります。
そこで必要になるのが、
資本政策と言えるでしょう。
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上場時の株主構成を意識しながら、
いつの時点で、どのような株主構成にしながら、
どれくらいの資金調達をしていくか
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こういったことを事前シミュレーションをしておき、
その計画に従って、外部株主対策・安定株主対策をしながら、
資金調達の計画も立てていくのが資本政策です。
無計画に進んでいくと、
気づいたときには軌道修正しづらい資本構成になったり、
予定通りの資金調達ができなかったり、
ということが起きかねません。
また、
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一度できあがった株主構成を
あとから補正していくのは相当大変である
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ということも是非覚えておいていただきたいと思います。
そのため、IPOを目指す初期段階で、
仮でも良いので資本政策の検討をしておくことが有益です。
資産管理会社とは?
次に、資本政策のお話をしているときに、
必ずといってよいほど出てくる話題として
「資産管理会社」
についてのテーマがあります。
この資産管理会社についても、
最近の経営者はよく勉強されている印象です。
オーナー社長として上場した場合に、
保有株の価値が上がることは良いことなのですが、
それに伴って株に係る税金も多額になります。
そのようなオーナー社長が、
いわゆる「税金対策」のための
自己資産管理のための会社を設立するというのが、
「資産管理会社」です。
とくに違法なことでもなく、
税制上で認められている制度ですので、
上手く活用できれば節税対策になります。
IPOの相談を受ける際に、多くの経営者から、
「資産管理会社は作った方がよいですよね?」
「資産管理会社はどうやって作ればよいですか?」
「資産管理会社へ何割の株式を持たすのがよいでしょうか?」
「資産管理会社へどうやって株を移せばよいでしょうか?」
といったことを次から次へと質問されます。
結構ナーバスな点もあるので、
私も即答できないことも多いのですが、
オーナー社長の自己資産に直結するテーマですし、
やはり皆さん、興味があるようです。
この「資産管理会社」のテーマだけで
いろいろある論点があるため、
今回の記事で詳しく説明するには少し厳しいので、
また改めて別の機会で整理してお伝えしたいと思います。
ただ、とりあえずではありますが、
もし「資産管理会社」が気になる場合には、
私が別で運営しているサイトの方で(最近は更新していませんが…)、
以前に「資産管理管理会社」をテーマにした記事を書いたことがあるので、
いったん下記サイトをご参照いただければと思います。
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オーナー社長のための資産管理会社(総論)
https://holdings-renketsu.com/1031.html
オーナー社長の個人資産管理とホールディングス
https://holdings-renketsu.com/661.html
オーナー社長のための資産管理会社のメリット・デメリット
https://holdings-renketsu.com/1053.html
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上記のサイトで記事を書いたのは5年以上前だったと思うので、
最近の傾向も少し変わっているかもしれませんので、
とりあえず参考までに。
どうやって資本政策を作るのか?
話を「資本政策」に戻します。
資本政策の重要性や、
その過程で資産管理会社も検討余地があることは
ご理解いただけたかと思います。
ただ、
「実際に、どうやって資本政策を作成すればよいの?」
という疑問もあるかと思います。
この点についての結論としては、
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資本政策立案は難易度が高いので
最初は専門家に入ってもらい一緒に作るべき
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だと個人的には考えています。
というより、
専門家抜きで資本政策を
最初から立案できている会社は
ほとんどないと思います。
税制の問題や会社法的な問題もあるため、
仮で作成する段階であっても、
独学で作成するには少しハードルが高いかもしれません。
いろいろな視点を取り入れる意味でも、
ここは外部の専門家やコンサルタントにお金を支払って、
初回バージョンは作成した方が無難かと思います。
そのうえで、いったん出来上がれば、
その後の経営状況に応じてブラッシュアップしていくのは、
自社内でも可能になってくると思いますので。
私自身も、株式上場に向けた資本政策作りの場で、
何度かコンサルタントとして携わってきましたが、
実際の作成現場は資本政策用Excelシートを使いながら、
以下のような会話を経て作成していく感じです。
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私 「ここの数字をこれだけ動かすと、こうなりますね」
社長「そうですか・・・、それなら、ここのところをもう少し変えてもらってよいですか?」
私 「それでは、こうしたらこんな感じですね」
社長「なるほど、もう少しだけここを動かしてもらっても良いですか?」
私 「これだけ動かすと、こうなりました」
社長「お!結構良い感じですね」
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結構、数字のお遊び的な感じにもなりますが、
このようなことを繰り返すことで、
社長自身がロジックを理解していく感じでしょうか。
資本政策は一度作って終わりではなく、
都度、状況の変化に応じて、
資本政策も変更していく必要があります。
そのため、大事なのは、
専門家に最初は手伝ってもらったとしても、
丸投げしたままで終わらせず、
作り方や更新方法も伝授しておいてもらうことが大切だと思います。
まとめ
ということで本日は、
「【STEP2】資本政策・資金調達計画の立案開始」
というテーマでお伝えしました。
資本政策は、とても重要ですし、
社長自身の自己資産管理の意味でも、
また、上場後の経営のしやすさを実現するうえでも、
是非、早い段階で検討はおきたい論点です。
上場後にどのような株主構成になるかはとても重要ですので。
私自身、社外役員として、
上場会社や上場準備会社の株主総会に
出席する機会も最近はより増えました。
外部の株主がいる「株主総会」は毎年経験していますが、
本当に緊張感があり、いまだに慣れません…。
安定株主対策をきちんとしておき、
無事に株主総会を終えられる体制を保つことも、
上場後はとても重要になりますので、
是非、上場後の姿をイメージして、
資本政策を考えてみていただければと思います。
参考:IPOのロードマップ
【STEP 1】 事業計画・コーポレートストーリーの作成
【STEP 2】 資本政策・資金調達計画の立案開始
【STEP 3】 税理士依存からの脱却
【STEP 4】 税務会計から上場会計へ
【STEP 5】 管理部門人員の強化(経理・人事)
【STEP 6】 労務管理体制の強化
【STEP 7】 監査法人の選定・ショートレビュー
【STEP 8】 証券会社選定
【STEP 9】 役員構成の整備開始
【STEP10】 関連当事者の整理
【STEP11】 上場PJチーム発足
【STEP12】 規程類の整備開始
【STEP13】 月次決算の早期化
【STEP14】 予算管理体制・セグメント管理体制の構築
【STEP15】 内部統制体制&内部監査体制の構築開始
【STEP16】 会計監査の本格対応
【STEP17】 証券会社審査等の対応
【STEP18】 上場のための開示書類作成
【STEP19】 取引上の上場審査
【STEP20】 ロードショー&株価決定