記事一覧

STEP5【IPO】管理部門人員の強化(経理・人事)

  • 2020.8.16

今回の内容

今回は、株式場(IPO)に向けたロードマップの【STEP5】となります。
経営者として「株式上場の進め方」についてのイメージをつかんでいきましょう。

 

 

はじめに

株式上場スケジュールを表現するにあたって、
以下のような表現が使われますが、ご存知でしょうか?
———————
・直前々期(2年前)
・直前期(1年前)
・申請期(上場時期)
———————

 

株式上場条件をクリアし、
諸々の審査を通過して初めて上場できますが、
この上場する年を「申請期」と言います。

そして、「申請期」に至るまでの
1年前の期を「直前期」、2年前の期を「直前々期」、
と呼びますが、この直前の2期間の間に、
管理体制の整備をしていく必要があります。

 

申請期になんとか管理体制を
整備できれば良いというものではなく、
過去2期間で整備して運用実績を出していく必要があります。

そのため、
IPOを考えると、どれだけ順調にいっても
その準備に3年くらいは必要です。

 

このIPO準備期間において、
管理体制を早急に整備していく必要がありますが、
その際にキーになるのは、やはり「人材」です。

一般的には、上場を目指すにあたって、
経験がある人を新たに採用することも多いと思います。

 

そこで、今回は、
「【STEP5】 管理部門人員の強化(経理・人事)」
というテーマでお伝えしたいと思います。

具体的には、
———————————————–
・IPOまでにどのような人材が、いつ頃必要か?
・管理部門は最低でも何人必要か?
・新たな採用で気を付けるべきは?
———————————————–
といったことについてお伝えしたいと思います。

 

 

IPOのための経営者向け参考本

管理体制といっても
経理や人事、総務、経営管理、
といった感じで幅広い概念になります。

私自身としては、
経営管理や経理といった分野は専門ですが、
人事や総務等については専門というわけではないので、
今回は、参考になる書籍のご紹介と、
その書籍に記載されているヒントをもとにお伝えできればと思います。

 

その書籍はこちらです。

 

全体的によくまとまっている印象ですので、
もしIPOを考え始めた際には
手に取っていただいても良い本かと思います。

 

 

IPOまでにどのような人材が、いつ頃必要か?

管理部門の強化に向けて人材が必要になってくる際に、
どのような人材が、いつ頃必要になるのか、
といった点は、まずは気になるところだと思います。

この点、上記の書籍では、
以下のようなメッセージが記載されています。

————————————–
①IPO準備の作業量ではなく、
 IPO後の体制を見据えて、
 人材を採用・拡充すべきである

②CFOは遅くとも直前々期の期首までに、
 採用・選任することが望ましい
————————————–

このご意見はごもっともですね。

 

IPOはあくまでゴールではなく、
IPO達成した時点からが本当のスタートです。

そう考えると、IPO後を意識しながら、
人選をしていくのが理想的ですが、
なかなか社内に適任がいない場合には、
やはり新規で採用ということになると思います。

 

いつの時点で、どれくらいの人数が必要かについては、
上記書籍に参考人数がもう少し詳しく書いてありますので、
ご確認いただければと思いますが、
やはり、まずはCFOの選任・採用でしょう。

一般的には、上場経験のあるCFOを
新たに採用する会社がほとんどだと思います。

 

ここ最近はIPOブームということもあり、
このCFO人材も不足していた印象ですが、
最近のコロナの状況もあり、もしかしたら有能な人材を
採用できるチャンスでもある時期かもしれません。

IPOを達成するためには、
やはり「経験があり、人格の良いCFO」
巡り合えるかが、本当に重要かと思います。

 

このようなCFO人材が採用できれば、
その後の管理体制についても、
自社にあった形を検討してくれると思いますので、
自然と管理体制強化に進んでいくと思います。

ですので、社長として、
いろいろなコネや情報網を活用しながら、
自社に最適なCFOを探すことに、
まずは特化していただくのが最優先かと思います。

上場しようと思っている時期の
遅くとも3年前には、CFOが機能している必要があります。

 

 

管理部門は最低でも何人必要か?

次に、管理部門強化にあたって、
気になるのは増加人数だと思います。

良いCFOが見つかれば、
いろいろと検討はしてくれると思いますが、
やはり管理コストという意味では、
従来より確実に増加してしまうと思いますので、
早めに増加人数のイメージをつかんでおきたいところでしょう。

 

この問いに対して、上記書籍では、

—————————————
管理部門は少なくとも4人は必要
—————————————

と記載されています。

 

組織図的にざっくりイメージすると
・管理部長1名
・経理1名
・財務1名
・人事総務1名
といった形で紹介されています。

あくまで参考人数だと思いますが、
これは本当に最低限の人数だと思います。

 

実際には、経理1名というのは、
結構厳しいと思いますし、
労働集約型の会社の場合には、
人事総務1名というのも現実的ではありません。

一部アウトソースすることで
成り立たせるということも当然あり得ますが、
その場合でも、きちんと外注先を
社内でコントロールできる体制は求められます。

 

また、上場するためには、
内部統制・内部牽制という概念が必須になります。

つまり、業務を1人で完結するのではなく、
きちんと相互チェックや上司の承認といったプロセスを整備して、
間違いや不正が起きない体制を整備しておくことが、
上場のための必須条件になります。

 

そのため、
今回は最低4人とご紹介していますが、
実際には、諸々の管理のための人材は
もう少し必要になると思いますので、
最低6名~8名は覚悟しておいて方がよいかもしれません。

当然、すべてを外部採用する必要はなく、
社内人材を異動しながら育成していく方法もありますので、
そのあたりの管理組織の検討が必要になってきます。

 

 

新たな採用で気を付けるべきは?

今回の最後して、
「新たに採用する際に気を付けるべきこと」
という点についてもお伝えしておきます。

こちらも上記書籍を参考に回答をご紹介させていただきますと、

——————————————-
①IPO後の適時開示や株主対応を見据えた
 人員体制にするべき

②IPO経験者やCFOを採用することにこだわらず、
 外部関係者を上手く活用して社内人材を育成することも考える
——————————————-

と記載されています。

 

まず最初の
「適時開示」「株主対応」といったフレーズは、
まさに上場後に直面する大変な業務です。

このあたりは経験者がいると心強いのです。

 

ただ、経験者を新規採用するというのも
結構難しいものです。

私も上場準備会社の新規採用の場面で、
「IPOの経験があります」
という触れ込みで採用されてきた人材を多く見てきましたが、
いわゆる「当たり」の人材は2割程度の印象でしょうか。

 

IPOというのは、
1人の力で成し遂げられるものではなく、
社内人材、社外の専門家、等、
本当に多種多様な領域のメンバーの協力のもと
実現できるものです。

そのような特殊性もあり、
「IPOに関わったことがある人」
というのも意外と多くいるのですが、
IPO経験者と名乗れるレベルの人材はかなり少ないです。

 

たとえば、
「開示書類の一部を作成しました」
「整備体制づくりの上場PJメンバーでした」
といった、IPOにかすっている程度でも、
「IPO経験あり」
と表現されてしまいます。

 

そのようなレベルの経験者は、
確かに経験はあるかもしれませんが、
全体像も見えてないことがほとんどですので、
基本的にIPO経験がない社内人材と
それほど差はありません。

そうであれば、
無理をして外部人材にこだわらず、
社外の専門家の協力のもと、
社内人材を育成していくという方法も当然ありますし、
その方が企業文化維持にとって良い場合もあると思います。

 

ということで、個人的には、
———————————-
「IPO準備の経験があります」
という言葉は3割程度で受け止める
———————————-
くらいが良いと思っています。

 

経験も大事ですが、それよりは、
・自社の企業文化に適しているかどうか
・素直に業務を行ってくれるかどうか
・上場に向けての意欲があるか
といったあたりを重視して採用をした方が良いかと思います。

素直で意欲があれば、
新規採用者であっても、社内人材であっても、
外部のコンサルタントとかに協力をしてもらうなかで、
自然と知識を吸収して、育ってくれると思いますので。

 

 

まとめ

ということで、今回は、
「【STEP5】 管理部門人員の強化(経理・人事)」
というテーマでお伝えさせていただきました。

人材の問題はとても難しい領域だと思いますが、
管理部門人材が強化されれば、
結果的に企業成長エンジンになりますので、
あまり「管理コスト増加」という認識をしすぎず、
「人材投資」という位置づけで考えてみていただければと思います。

 

 

参考:IPOのロードマップ

【STEP 1】 事業計画・コーポレートストーリーの作成
【STEP 2】 資本政策・資金調達計画の立案開始
【STEP 3】 税理士依存からの脱却
【STEP 4】 税務会計から上場会計へ
【STEP 5】 管理部門人員の強化(経理・人事)
【STEP 6】 労務管理体制の強化
【STEP 7】 監査法人の選定・ショートレビュー
【STEP 8】 証券会社選定
【STEP 9】 役員構成の整備開始
【STEP10】 関連当事者の整理
【STEP11】 上場PJチーム発足
【STEP12】 規程類の整備開始
【STEP13】 月次決算の早期化
【STEP14】 予算管理体制・セグメント管理体制の構築
【STEP15】 内部統制体制&内部監査体制の構築開始
【STEP16】 会計監査の本格対応
【STEP17】 証券会社審査等の対応
【STEP18】 上場のための開示書類作成
【STEP19】 取引上の上場審査
【STEP20】 ロードショー&株価決定

 

関連記事

最近の投稿