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STEP12【IPO】規程類の整備開始

  • 2020.8.23

今回の内容

今回は、株式上場(IPO)に向けたロードマップの【STEP12】となります。
経営者として「株式上場の進め方」についてのイメージをつかんでいきましょう。

 

 

IPOに向けた社内規程整備

今回は「社内ルール」に関連するテーマで
お伝えをしたいと思います。

IPOを前提とすると、
形式的な側面として規程類の整備が必須になります。

窮屈になる面も当然あるかと思いますが、
きちんと社内ルールを作って、それを守っていく会社でなければ、
上場基準を満たさない、ということです。

 

ということで、今回は、
「【STEP12】 規程類の整備開始」
というテーマでお伝えいたします。

具体的には、
———————————–
・規程はどこまで作成すべきか?
・規程をどうやって作り始めるべきか?
———————————–
といったあたりについて
お伝えしていきたいと思っています。

 

 

規程作成にあたって

IPOに向けて管理体制の整備が求められるなかで、
社内ルールである「規程」の必要性については、
経営者であればご理解いただけるかと思います。

ただ、その際に、どこまで
規程を整備する必要があるのか、
といった点は気になるところかと思います。

必要以上に文書や規程を増やすことは
経営者であれば避けたいところだと思いますので。

 

どうしても規程といったようなものは、
一度作ったら終わりで、そのまま存在も忘れられたり、
改定もされないまま眠っているケースも
実務的には多いというのが現実です。

このあたりは、外部の専門家や
証券会社のアドバイスにも従って、
自社の身の丈に合ったレベルで規程作成を
していきたいものです。

 

そこで、今回は、
以下の書籍を参考に規程整備を進めるうえでの
考え方のポイントをご紹介させていただきます。

 

監査法人のトーマツが出版している
昔から何度か版を重ねている分厚い書籍で、
「株式上場ハンドブック」
という書籍になります。

 

 

規程作成上のポイント

上記書籍によると
規程作成上のポイントとしては以下のような点が、
挙げられています。
——————————–
①簡潔明瞭に作成する
②全社の合意のもとで作成する
③現状業務の分析改善
④規程の教育をする
⑤誰でも閲覧できるようにファイリングする
——————————–

 

このなかでも、
個人的にも意識していただきたい点としては、
①簡潔明瞭に作成する
④規程の教育をする
⑤誰でも閲覧できるようにファイリングする
といった点でしょうか。

 

長々と文章が詰まった規程の方が
それっぽい感じもありますが、
やはり簡潔明瞭でないと読み手に伝わりませんので、
きちんと活用されるためには、
シンプルであることは重要かと思います。

また、そのうえで、
どこの会社でも同じ課題ではありますが、
「規程自体の存在を知らない」
という社員が多いということが挙げられます。

 

普段、規程を意識しながら業務をすることは
基本的にないと思いますので、
この点は仕方ない面もあります。

ただ、せっかく作成する規程であれば、
まずは、その存在や目的については
社員へ落とし込んでおきたいところです。

 

そして、よくある状況としては、
規程を確認したいときにどこにあるかわからない、とか、
改定をしていたりした場合のバージョン管理ができていない、
といった問題も見受けられます。

最近は、書面による規程共有ではなく、
社内の共有サイトで閲覧できたりすることが多いと思いますが、
やはりその閲覧ルートを把握できていない社員も多いので、
そのあたりの周知徹底といったあたりが求められると思います。

 

 

規程作成プロセス

上記のポイントを意識したうえで、
「実際にどのような流れで規程作成をすべきか」
という点については、上記書籍では、
以下のような流れを紹介されています。

———————————-
STEP1)現状分析
STEP2)問題点の把握
STEP3)改善の要否と改善案の検討
STEP4)原案作成
STEP5)関係部署との調整
STEP6)承認
STEP7)教育
STEP8)施行
———————————-

 

確かに上記のような流れが理想的なのかもしれませんが、
実際には、規程のひな型を入手して、
会社全体をわかっている人が自社にあった形で
カスタマイズをする、というのが現実的でしょうか。

そのなかで、
どうしても現場確認が必要な点とかに絞って、
複数人で議論をして決めていくようなイメージです。

 

あまり理想的な作成ステップを意識しすぎては、
前に進めなくなりますので、
まずは仮でもよいので作成したうえで、運用の中で
カスタマイズするくらいの気持ちの方がよいかもしれません。

 

 

規程作成にあたっての優先順位

社内規程の種類について
挙げだすときりがないのですが、
作成にあたっての「優先順位」も気になるところです。

この点については、
上記書籍では以下のようなポイントを
記載されています。

————————————
・株式上場にあたって組織的経営が求められるので、
 組織規程、業務分掌規程、業務権限規程といったあたりから
 優先的に整備をする必要がある
・次に、個別業務に関わる規程を整備していく
・最後に、細則、マニュアル等を整備していく
————————————

 

この優先順位の考え方は参考になると思います。

株式上場にあたっては、
これまで属人的、個人の裁量で進めていたような業務を
組織的に運営する形の業務へ変えていく必要があります。

 

たとえば、
1人で業務を完結するのは、
効率が良い場面も多いと思いますが、
一方で、ミスや不正が起きる原因にもなります。

IPOを前提とすると、
この「ミス」や「不正」を事前に防ぐための
環境を整備することが求められます。

業務的には効率が悪くなる場合もありますが、
やはり規模拡大し、パブリックカンパニーとなっていくためには、
それに適した組織運営が必要ということで、
IPOの条件となってきます。

 

優先順位が高いものとして挙げられていた
・組織規程
・業務分掌規程
・業務権限規程
といったものを検討・作成・整備するなかでは、
組織の在り方を見つめ直す良い機会になると思います。

是非、経営者として率先して組織の在り方を
考えてみてもらいたいと思っています。

 

 

リモートワーク時代の規程の存在意義

今回は、
「【STEP12】 規程類の整備開始」
というテーマでお伝えさせていただきました。

この分野を苦手にしていたり、
興味を持てない経営者も実際にはいらっしゃると思いますが、
IPOのためには必要条件ということで、
良い機会として前向きに取り組んでいただければと思っています。

 

最近は、リモートワークが急速に進んでいる中で、
多種多様な価値観、働き方が広がっています。

そのような多種多様な社員をまとめあげて、
一緒の方向に向かって経営をしていくためには、
従来以上に「社内ルール」の重要性が増していると感じています。

 

社員個人個人を尊重しつつも、
組織として統一しておきたい部分は持っておきたい、
というのが経営者の思いではないでしょうか。

そのような組織としてのルールは、
やはりきちんと明文化をしていないと、
伝わる度合いが低くなったり、
理解度に差が出て、後々問題になることもあると思います。

 

そのような視点においても、
今の時代だからこそ、逆に、
社内ルールとしての規程の重要性が
増してきているのではないかと感じております。

 

 

参考:IPOのロードマップ

【STEP 1】 事業計画・コーポレートストーリーの作成
【STEP 2】 資本政策・資金調達計画の立案開始
【STEP 3】 税理士依存からの脱却
【STEP 4】 税務会計から上場会計へ
【STEP 5】 管理部門人員の強化(経理・人事)
【STEP 6】 労務管理体制の強化
【STEP 7】 監査法人の選定・ショートレビュー
【STEP 8】 証券会社選定
【STEP 9】 役員構成の整備開始
【STEP10】 関連当事者の整理
【STEP11】 上場PJチーム発足
【STEP12】 規程類の整備開始
【STEP13】 月次決算の早期化
【STEP14】 予算管理体制・セグメント管理体制の構築
【STEP15】 内部統制体制&内部監査体制の構築開始
【STEP16】 会計監査の本格対応
【STEP17】 証券会社審査等の対応
【STEP18】 上場のための開示書類作成
【STEP19】 取引上の上場審査
【STEP20】 ロードショー&株価決定

 

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