STEP16【IPO】会計監査の本格対応

今回の内容

今回は、株式上場(IPO)に向けたロードマップの【STEP16】となります。
経営者として「株式上場の進め方」についてのイメージをつかんでいきましょう。

 

IPO監査とは?

IPOに向けては、
監査法人を選定して監査をしてもらう必要があります。

また、監査にあたっては、それなりのコストもかかります。

このあたりの内容は、
以下の記事にも記載をしていますので、
ご参考までに、確認をいただければと思います。
https://speed-accounting.com/2020_08_11/1043/
https://speed-accounting.com/2020_08_18/1141/

 

ただ、これだけ多くのコストをかけて、
監査法人は何をしてくれるのか、
といった疑問もあるかもしれません。

長年、監査法人の監査を受けている会社の
経理部門の方でも、
「監査法人はいったん何をしているのだろう?」
と疑問を持つ場面もが多いものです。

そこで、今回は、
「【STEP16】 会計監査の本格対応」
というテーマで、
監査対応についてお伝えできればと思います。

 

ショートレビュー

まず、監査法人を選定する段階において、
「ショートレビュー」というのを受ける必要があります。

私が監査法人に所属していたのは15年くらい前ですが
そのころも、新規のクライアントについては、
この「ショートレビュー」を行ったうえで、
監査法人として契約を実施していました。

ただ15年前は、新規案件があれば、
入口のチェック体制は厳しくなかったので、
人と人のつながりで発生した案件を、
そのまま監査法人として受注・契約をしていた気がします。

 

一方で、
今は新規にクライアントを受ける際のチェック体制が
厳しくなっているのが現状です。

人と人のつながりというより、
きちんと入口で監査法人としてチェックをかけて、
新規受注をするかどうかを決めることになっています。

 

その入り口としてショートレビューもあると思いますが、
このショートレビューを受けると、
いろいろと問題点を見える化してくれて
今後の目指す方向も示してくれると思います。

それと同時に、
「この会社と契約して良いかな」
といった感じで、
監査法人側がチェックをしているステージとも言えます。

 

経営者としても、
このようなショートレビューという短い期間ですが、
監査法人の対応や担当者の性格等も見て、
社会人として、ビジネスパートナーとして、
きちんと付き合っていけそうかどうかを見極める必要があります。

どこの監査法人にするか、
といった点も重要かもしれませんが、
それ以上に、その監査法人の中で、
誰が担当になってくれるかが重要だと思います。

 

ちなみに、監査法人では、
一般企業でいう「役員」の立場にある担当者を、
「社員」「パートナー」といった肩書で表現されます。

この担当となる「社員」「パートナー」が、
会社の状況をきちんと聞いてくれて、
一ビジネスマンとして会話がきちんとできるかどうか、
このあたりを見極めていただく形になると思います。

 

監査法人は何をするのか?

実際に監査契約を実施すると監査が始まります。

そこで、ざっと監査現場の状況について、
簡潔に箇条書きでご説明をしてみたいと思います。

 

会社規模や諸々の状況によって当然状況は変わりますが、
一般的なIPOを目指すベンチャー企業の
IPO監査という想定で、以下をまとめてみました。

・監査はチーム体制で行われる
・監査チームには、トップになるパートナーがいる(2名程度)
・そのパートナーのもとチーム統括のマネージャーがいる(1名)
・そしてその下に現場の実質的な責任者の主査(インチャージ)がいる(1名)
・主査以外に3人~4人程度のスタッフがいる
・全体として5名程度の会計士がチームとして会社にやってくる
・会議室を占領して、監査を実施する
・1回くると、3日~5日程度は会議室に居座る
・監査では、会社の帳簿や請求書等の証憑を見る
・そのなかで、きちんと帳簿が作成されているかを見る
・さらに、会社の経営状態を数値面から分析をする
・会計数値や経営状況、帳簿の内容について質問をしてくる
・J-SOXという内部統制の整備・運用状況も確認をする
・経営者ディスカッションも定期的に実施する
・決算発表の資料等もチェックする
・決算に関する監査状況を経営者や経理部へ報告する

 

いろいろと挙げさせていただきましたが
少しはイメージはわきましたでしょうか?

 

実際には、経理部メンバーが対応することがほとんどなので、
経理メンバーの負荷は相当なものになると思います。

経理担当者は、通常の日常業務の傍らで、
監査法人からの質問に答えたり、
要求された資料を準備し、提出したりで、
経理は疲弊すると思います。

また、このなかで、
経理部の増強やスキルアップが求められてくると思いますので、
このあたりは経営判断として、
経理担当者採用といったことも出てくるかもしれません。

 

最近の監査法人の傾向

昔は、監査チームが、
2ヵ月に1回くらいとか会社に訪問をして、
訪問したら1週間程度会議室を占領し、監査をしていましたが、
最近は少しずつ傾向も変わってきました。

そこで最近の監査の傾向も参考としてお伝えできればと思います。

・会社の会議室での作業が少なくなった
・一方で、監査法人の事務内作業が増えてきた
・パソコンに向かって勝手に作業をしていることが増えてきた
・傍から見ると、パソコンをずっとみているだけで何をやっているかわかりづらい
・対面での質問ではなく、メール等での質問が増えてきた
・質問内容を理解せずに、監査マニュアルに書いてあることを聞いてくる

 

昔は、会社の監査法人の関係は、
結構近い距離感で仕事をしていたと思います。

パソコンを使った監査も今ほど普及していませんでしたし、
良い意味でも、悪い意味でも、人と人が対面しながら、
人間味のある監査をしていました。

そのなかでは人と人との信頼関係が、
とても大切でした。

 

ただ最近は、時代の変化とともに、
会社と監査法人の間の距離感がかなり出てきました。

かなり「ドライな関係」という感じでしょうか。

 

これは、
会社と監査法人がきちんと独立した関係を保つことで、
不正に加担したりすることが無いようにということで、
時代がそのような関係性を求めた結果でもあります。

また、ITツールの発達も要因の1つだと思います。

さらに、監査法人側がミスをしたときに
訴訟されるリスクを恐れて、
監査手法をマニュアル化していることで、
淡白な監査になっているということもあります。

 

いろいろな要因が積み重なって、
会社と監査法人の関係も変わってきたのですが、
個人的には、このようなドライな関係になってきたことは、
残念な気がしています。

人間味があって、お互いの信頼関係のもと、
お互いが良い意味で助け合う関係性のなかで行われていた
監査体制の方が、やはり良かった気がします。

昔はよかったみたいなことを発信するのは
あまり好きではないのですが・・・、
私が歳をとっただけかもしれません。

 

ただ、監査法人側も、
この傾向が望ましいという積極的な思いがあって、
今のような監査体制になったわけではないと思います。

監査法人の多くの人に聞いても、
「昔の監査体制の方がよかった」
「だけど、時代の流れや、金融庁のチェックもあり、仕方ない」
といった声ばかりなので、
監査法人の方も、仕方なく変わらざるを得なかったということでしょう。

 

そして、最近ではコロナの影響もあり、
この傾向に拍車がかかり、
「リモート監査」
というものも定着してきました。

 

会社に来て、会議室を占領する、
といった風物詩も少なくなってくると思います。

1週間から2週間という長い期間を
監査法人用に会議室スペースの確保することに苦慮している会社も
実際には多かったので、リモート監査自体は、
悪い話ではないかもしれません。

 

ただ、今まで以上に、
「監査法人はどこで何をやっているのだろう」
「何をしているかわからないのに監査報酬が値上げされていく」
といった疑問は増すかもしれません。

 

まとめ

以前の記事にも書きましたが、
最近は、会計士不足ということもあり、
監査法人を選べる時代ではないかもしれません。

そのため、
少ない選択肢中からの選定になるかもしれませんが、
嫌だからと言ってすぐに監査法人変更できるものでもありません。

スイッチコストも結構かかりますし、
実際には、監査という意味では、
どこの監査法人も大差がない可能性が高いので、
安易に監査法人変更はしない方がよいでしょう。

 

それより、まずは
契約をしている監査法人との信頼関係を
1つ1つ築いていく努力をすることが大切だと思います。

そのためには、
経営者側からの歩み寄りもときには必要かと思います。

 

上記に記載しましたが、
監査法人も、その職業として、
仕方なく実施せざる得なくて実施していることも多いものです。

監査法人で働いている会計士は、
いろいろと疑問やジレンマを感じながら業務にあたっています。
これはかなり切実な問題として存在します。

 

会計士の1人1人の思いとは別に、
監査法人の立場として、そうせざるを得ないといった状況もありますので、
経営者としては、そのあたりを理解してあげながら、
監査法人と上手く付き合っていくことが重要になると思います。

 

今回の内容