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Vol.133【IPO事前準備】資産・負債の管理

  • 2021.4.29

株式新規上場(IPO)のための事前準備ガイドブック

今回も
日本公認会計士協会から公表されている
「株式新規上場(IPO)のための事前準備ガイドブック」
の概要について、ご紹介をさせていただきたいと思います。

そのなかでピックアップされている項目として
———————————————-
会計データ・裏付け証憑の整理
発生主義会計及び収益認識会計基準への対応
棚卸資産管理
原価計算体制
資産・負債の管理
連結決算
関連当事者取引の把握・整理
⑧内部管理体制の構築
⑨労務管理
⑩情報システムの内部統制
⑪不正への対応
⑫会計上の見積り
⑬会計基準の選択
———————————————-
が挙げられています。

このうち、今回は
「⑤資産・負債の管理」
についてご紹介をしたいと思います。

 

IPOに向けては、なんといってもB/S!

経営者の多くは、
売上や利益といったP/Lの方は、
当然関心をもたれていると思います。

但し、B/Sの方まで関心をもって
財務諸表や決算書を見られている経営者は、
やはり少ないという印象です。

これは、上場会社レベルの経営者であっても
同様な状況と言えるでしょう。

 

B/SとP/Lはもともと別物ではなく、
表裏一体の関係にありますので、
本来は、どちらかだけが重要というわけではありません。

但し、会計のロジックを理解していくと、
B/SはP/L以上に重要なデータであると言っても過言ではありません。
それくらいB/Sは重要なデータとなります。

 

両者の関係性としては、
—————-
P/L=原因
B/S=結果
—————-
と表現しても良いかもしれません。

つまり、過去の企業活動の結果が、
最終的にはB/Sの資産なり、負債に集約がされていき、
この資産と負債の差額である純資産が、
過去の企業の利益を集約した企業価値を表すといった感じです。

 

そして、監査法人の会計監査でも
実は、P/LよりもB/Sの方をチェックをするのです!

会計の専門家の視点でいうと
「B/Sを固める」
といった表現になるかと思いますが、
会計監査では、まずはB/Sを固めていくことが重要とされています。

 

そう考えると、
経営者としてもB/Sをおろそかにはできません。

IPOを目指すのであれば、
最低限、B/Sの見方は勉強をしておいて
損はないかと思います。

 

資産

B/Sの作りとしては、
まずは左半分に会社が保有している「資産」が
掲載される感じになっています。

資産はいくつかのカテゴリーに分けられますが、
資産計上されている項目に共通して求められるのは、
「資産性」
「回収可能性」
といった点です。

 

IPOを前提にしない場合には、
この「資産性」「回収可能性」という点は、
あまりフォーカスされることも少ないかもしれません。

但し、IPOを前提とするならば、
「資産性」「回収可能性」という点は、
最重要ポイントになってきます。

 

要は、
——————————-
資産として計上されている金額について、
その金額に見合う価値があるかどうか
——————————-
ということです。

たとえば、
商品として100万円の計上があったとしても、
この商品が売れる予定が無ければ0円で評価し直したり、
値引して原価割れでしか売れないような場合(例:30万円)には、
売れる金額の30万円まで価値をおとして計上する必要がある、
ということです。

 

会計監査の場面においては、
すべての資産において、
この「資産性」「回収可能性」を検討されます。

そして回収可能性が低いと判断された場合には、
評価減ということで価値をおとしたうえで、
P/Lに損失計上をすることになるのです。

この点でも、
B/SとP/Lは表裏一体の関係性にあることは
イメージできるかと思います。

 

負債

次に負債です。
B/Sの右半分に計上されている項目です。

負債は、
将来支払わないといけない債務ですが、
こちらも、会計監査ではしっかりとチェックをされます。

 

資産の方が、
「資産性」「回収可能性」といった感じで、
きちんと価値があるかどうかをチェックしていくのに対して、
負債の方は、
きちんと漏れなく負債が計上されているかをチェックされます。

いわゆる「簿外負債」がないかどうか、
という点が重要な確認ポイントになってきます。

まだ確定していない将来の支払いであっても、
すでに費用が発生することが見込まれている場合には、
「引当金」として負債に計上することも求められます。

 

つまり、
—————————————-
資産側:過大計上になっていないかのチェック
負債側:過少計上になっていないかのチェック
—————————————-
といったアプローチになります。

 

B/Sは、きちんと勉強すると、
とても奥深く、面白いものです。

B/Sを見れば、
過去の企業活動の状況が見えることも多く、
経営の現場でも、B/Sを見て経営判断をするようになれれば、
より間違いのない判断ができるようになると思います。

 

次回は

ということで今回は、
「⑤資産・負債の管理」
というテーマでお伝えをいたしました。

そして次回は、
今回の棚卸資産管理とも密接に関わるテーマとして
⑥連結決算
についてご紹介できればと思います。

 

 

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