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STEP15【IPO】内部統制体制&内部監査体制の構築開始

  • 2020.8.26

今回の内容

今回は、株式上場(IPO)に向けたロードマップの【STEP15】となります。
経営者として「株式上場の進め方」についてのイメージをつかんでいきましょう。

 

 

内部統制と内部監査

今回のテーマは、
「内部統制」
「内部監査」
といった内容です。

上場をしていない会社では、
ほとんど関心のないテーマだと思いますが、
IPOをするためには、必須の取組みとなります。

 

実際の上場会社の現場では、
「内部統制なんて意味ないよ」
「内部統制とか、内部監査とか面倒なだけ」
といった言葉が聞かれるのも事実ではあります。

とはいえ、上場会社では形式も重要視されるものなので、
必要以上にコストをかけて、形式を整えることを第一にして
内部統制や内部監査に取り組んでいる会社もあります。

そのような会社を見ると、
コストと人件費をかけすぎていてもったいないな、
と思うこともあります。

 

ただ、きちんとポイントを押さえて、
形式より実質を意識して内部統制や内部監査の制度を作りこめば、
きっと良い効果出てくると思います。

ということで、今回は、
「【STEP15】 内部統制体制&内部監査体制の構築開始」
となります。

あまり堅苦しくならないように、
簡潔にイメージをお伝えできればと思っています。

 

 

内部統制とは?内部監査とは?

まず、簡単に定義をご説明させていただきます。

最初に「内部統制」の説明です。

内部統制
=自社の「不正」「ミス」を事前に防いだり、見つけたりできるような仕組み

 

要は、ダブルチェックだとか、
上司の承認といったような制度を
きちんと社内に整備しておき、
かつ、運用されるような形を作ることです。

上場会社では、
多くの株主から経営を任せられるため、
きちんと、このような「不正」「ミス」を事前に防ぐような仕組みを、
経営者として整備しておくことが求められます。

 

次に「内部監査」ですが、
こちらも「内部統制」と似たような内容ですが以下の通りです。

内部監査
=自社の「不正」「ミス」を防いだり、見つけたりできているかを
 社内に監査人を設置し、チェックをする体制

 

先ほどの「内部統制」は、
社内の不正やミスを防ぐための仕組みのことを指す、
どちらかというと、より大きな概念なのに対して、
「内部監査」はそのような内部統制がきちんと機能しているかを、
確認するための制度という感じでしょうか。

いずれにしても
「内部統制」も「内部監査」も
一体となって動いていくような仕組みです。

 

上場会社であれば、
当然のように求められる仕組みであり、
IPOにあたっては、
このような仕組み作りが必須とされています。

未上場会社でも
不正やミスを防止するような取組みはしているかもしれませんが、
IPOとなると、会社全体として、
体系立ててこのような仕組みを作ることが、
経営者の責任・義務として求められます。

 

そのうえで、経営者の名前で、
「当社は内部統制をきちんと構築し、
 不正やミスを防げる体制を整備し、運用しています」
という宣誓書のようなものを提出する必要があるのです。

つまり、経営者自らが、
一番先頭に立って構築すべき仕組みなので、
「興味がない」「面倒だ」
とも言っていられないとことです。

 

 

J-SOXとは?

次に、
「J-SOX」
というワードもご紹介しておきたいと思います。

IPOを目指すとなると、
避けられないワードです。

 

細かい説明は省略しますが、
ざっくりいうと以下のような制度です。

決算数値や財務報告に係る部分に関する内部統制の仕組みに特化した制度

 

上場会社では、
この「J-SOX」対応が義務化されています。

投資家により多くの影響を与える決算書等が、
きちんとミスなく、不正なく、作成されているかについて、
きちんと内部統制の仕組みを作ることを経営者に義務付け、
さらに監査法人のチェックも入ることになります。

 

このJ-SOX制度は、
2010年頃から正式に義務化されたのですが、
当時は「J-SOXブーム」と言われる時代で、
各上場会社は、かなりの時間とコストをかけて、
内部統制の仕組みを構築したものです。

今は、制度開始後10年が経ち、
少し言い方は悪いですが、
J-SOXの制度は「形骸化」してしまっていて、
経営者も監査法人も、かなり興味を失っています…。

 

但し、考え方は重要なテーマなので、
これからIPOを目指す経営者は良い時代だと思います。

J-SOX制度の良い面のみにフォーカスをして、
あまりコストをかけずに、効果を得られる形を作っていくことも
許容される時代になったと思うからです。

昔は、形式を整えることが目的になり、
無意味にJ-SOXコンサルに多額のお金を払い、
無意味にシステム会社に多額のお金を払い、
無意味に、社内人材を増やしながら、
J-SOX対応していた会社も多かったですので。

 

ということで、
今からIPOを目指す社長は、
J-SOX対応は面倒だとは思いますが、
逆に「良い時代になってラッキー」というくらいの気持ちで、
前向きに取り組んでみていただきたいと思います。

 

 

具体的には何をやるの?

それでは、
具体的にどのようなことを
実施する必要があるのでしょうか?

たとえば、具体的に実施すべきこととしては、

・社内リスク(ミス・不正)を見える化する
・そのようなリスクをどのように防ぐかを考える
・規程やルールを作る
・きちんと内部統制が機能しているかをチェックする

 

といったことになります。

 

そして、この過程で、
きちんと社内の状況を「見える化」することが
有効であるとされていまして、一般的には、

・業務フロー
・業務記述書(マニュアル)

 

の作成が求められます。

 

確かに形式面の対応で少し大変ですが、
自社の「業務の見える化」ができるため、
前向きに考えると、
業務の効率化にもつなげることはできるはずです。

 

 

まとめ

ということで今回は、
「【STEP15】 内部統制体制&内部監査体制の構築開始」
というテーマでお伝えしました。

 

とくに「J-SOX」という点でいうと、
10年前くらいに制度が開始するにあたって、
その前の3年くらい、私も、ひたすら
上場会社の業務フローを書き続けた時代がありました。

当時は、J-SOX対応するために
専門家が不足している時代でもあり、
そのなかで、私もJ-SOX対応をせざるを得ませんでした。

ただ、今思うと、
とても貴重な経験になったと思っています。

それまでは、
「会計」領域のスペシャリストを目指していましたが、
J-SOXコンサル業務を通じて、営業や製造、購買、商品部といった
あらゆる立場で担当者にヒアリングをして業務フローを書くことで、
会社の仕組みを理解することができるようになりました。

営業マンが何を考え、
購買部が何に苦しみ、製造部が何を大切にしているか。
それぞれの部署間で起きる問題点や、
現場と経営層の間にある目線のズレにも
気づくことができました。

これらの会社組織全体と人の関わりに、
会計という領域を結び付けることで、視野が広がるとともに、
会計をどのように経営に活用していくべきかも
気づくことができました。

 

このサイトでは、
「会計スピード」
というのをかなり意識してお伝えしていますが、
これを実現するためには、
会社全体での取り組みが必要です。

会計や経理だけで解決できるものではありません。

 

このような発想ができるようになったのも、
20代の頃に多くの上場会社で、
多くの現場の方に、いろいろとヒアリングをさせてもらい、
それを業務フローという形で見える化してきた経験があってこそだと、
今となっては思っています。

組織全体と会計をつなげられるようになると、
見える世界が変わってきますし、その意味で、経営者にも、
このあたりの感覚を体験してみてもらいたいと思っています。

 

 

参考:IPOのロードマップ

【STEP 1】 事業計画・コーポレートストーリーの作成
【STEP 2】 資本政策・資金調達計画の立案開始
【STEP 3】 税理士依存からの脱却
【STEP 4】 税務会計から上場会計へ
【STEP 5】 管理部門人員の強化(経理・人事)
【STEP 6】 労務管理体制の強化
【STEP 7】 監査法人の選定・ショートレビュー
【STEP 8】 証券会社選定
【STEP 9】 役員構成の整備開始
【STEP10】 関連当事者の整理
【STEP11】 上場PJチーム発足
【STEP12】 規程類の整備開始
【STEP13】 月次決算の早期化
【STEP14】 予算管理体制・セグメント管理体制の構築
【STEP15】 内部統制体制&内部監査体制の構築開始
【STEP16】 会計監査の本格対応
【STEP17】 証券会社審査等の対応
【STEP18】 上場のための開示書類作成
【STEP19】 取引上の上場審査
【STEP20】 ロードショー&株価決定

 

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