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Vol.132【IPO事前準備】原価計算体制

  • 2021.4.26

株式新規上場(IPO)のための事前準備ガイドブック

今回も
日本公認会計士協会から公表されている
「株式新規上場(IPO)のための事前準備ガイドブック」
の概要について、ご紹介をさせていただきたいと思います。

そのなかでピックアップされている項目として
———————————————-
会計データ・裏付け証憑の整理
発生主義会計及び収益認識会計基準への対応
棚卸資産管理
原価計算体制
資産・負債の管理
連結決算
関連当事者取引の把握・整理
⑧内部管理体制の構築
⑨労務管理
⑩情報システムの内部統制
⑪不正への対応
⑫会計上の見積り
⑬会計基準の選択
———————————————-
が挙げられています。

このうち、今回は
「④原価計算体制」
についてご紹介をしたいと思います。

 

 

原価計算とは

IPOを前提とすると、
原価計算はとても重要なテーマとなるのですが、
未上場会社の場合、
この原価計算をあまり細かく実施できていないというのが実情です。

 

それでは、IPOに向けての原価計算とは、
いったいどのようなことが求められるのでしょうか?

 

原価計算はそれだけで多くの論点があるのですが、
端的に表現すると
———————————-
売上に対応する費用をきちんと集計して、
売上原価として計上をする
———————————-
という感じでしょうか。

 

当然ですが、
経営管理目的として原価管理をすることが、
本質な目的にはなると思いますが、
その結果として、損益計算書にきちんと、
原価がいくらかかっているかを表現していく必要があるということです。

 

ちなみに、計算式としては、
「売上高-原価=売上総利益(粗利)」
と表現できますが、
この粗利率(売上総利益÷売上高)が高いビジネスほど、
魅力的な会社とされています。

この粗利率が高いビジネスは、
本業のサービスそのものの付加価値の高さを意味しますので、
ビジネスとしての強さ、競争優位を表しているといえ、
投資家も、この「原価計算」の精度については
かなり注目していると言えるでしょう。

原価計算がきちんと実施されていないと、
本業サービス自体の強さの程度がわかりませんので。

 

 

製造業だけではない原価計算

製造業では、
原価計算は業務のなかに組み込まれていますので、
IPOするかどうかにかわらず、
原価計算は実施していることが多いと思います。

但し、IPOをするとなると、
その原価計算の精度が問われてきますので、
より細かな計算や仕組みの構築を要求される場面も多いでしょう。

 

また、原価計算というと、
なんとなく「製造業」だけをイメージしたものと思われるかもしれませんが、
製造業以外のすべての会社で論点になってきます。

たとえば、
ソフトウェア開発をメインにしている会社の場合には、
制作原価をプロジェクトごとに集計し、
原価として計上することが求められます。

クラウドサービスを提供している会社であっても、
そのサービスを開発したコストを減価償却として原価に計上したり、
そのサービス提供に関わる諸々の間接費(たとえば、水道光熱費とかも)を集計して、
原価に含めることも要求されたりします。

 

すべてのサービス・商品において、
必ずそのサービス・商品自体の原価というものは存在しますし、
また、間接的な原価も含めて検討する必要があるため、
原価の範囲を考えて、集計をできる体制を構築することが、
IPOにあたっては厳しく求められるということです。

 

 

今のうちにできること

それでは、原価計算を
各社はどのように実施しているのでしょうか?

 

組織規模が大きくなると、
何らかの原価管理システムを導入して
計算をしていることが多いと思います。

但し、そのような会社も、最初は、
Excelを駆使しながら計算を実施している気がします。

 

システム化されれば、
ある程度仕組みとして回っていくと思いますが、
システム化されるまでのExcel計算の時代に、
原価計算の考え方や基礎を作っていくため、
この時期が結構苦しいものです。

このExcelでの原価計算の時代に、
監査法人ともいろいろと議論しながら、
基本的な考え方を決めていく感じなります。

 

但し、監査法人と協議をしていくにも、
その基礎となるデータが無いと、議論が前に進んでいかないため、
今後IPOを考えている場合には、
せめて原価計算の基礎となるデータだけは、
今のうちに集計しておくとよいかもしれません。

たとえば、原価計算によく使うデータとして、
「誰がどのよう業務にどれくらいの時間を費やしたのか」
という時間管理データとかがあったりします。

 

このようなデータは、そのときどきで収集していないと、
後で振り返って集計したりするのは難しい場面がありますので、
是非、今できることとして、社員の時間管理データだけでも
取得できるようにしておいた方が良いと思います。

そうすれば、監査法人の監査が始まっても、
過去の基礎データをもとに議論ができ、
スムーズに原価計算手法を決めていけると思いますので。

 

次回は

ということで今回は、
「④原価計算体制」
というテーマでお伝えをいたしました。

そして次回は、
今回の棚卸資産管理とも密接に関わるテーマとして
⑤資産・負債の管理
についてご紹介できればと思います。

 

 

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