記事一覧

STEP4【IPO】税務会計から上場会計へ

  • 2020.8.15

今回の内容

今回は、株式場(IPO)に向けたロードマップの【STEP4】となります。
経営者として「株式上場の進め方」についてのイメージをつかんでいきましょう。

 

 

IPOに向けての会計対応

IPOを考え始めている社長の多くが、
「このまま事業や売上の拡大をしていけば
 自ずと上場が実現できる」
くらいのイメージを持たれています。

管理体制や会計について、
どのような対応が必要かといった点までは、
あまり意識はされていないことが多いです。

 

ただ、実際にIPO準備の現場では、
「管理体制を整えていくこと」
が求められますし、そこへの対応は、
おそらく想像以上に大変だと思います。

この管理体制の整備のなかでも、
大変なことの1つとして「会計制度への対応」があります。

この点についても、
あまり詳しく聞かれたことが無い経営者も
いらっしゃると思いますので、今回は、
「【STEP4】税務会計から上場会計へ」
というテーマでお伝えしたいと思っています。

 

 

経営者は会計に対する思考を変える必要がある

まず、結論ですが、
IPOを検討し始めている経営者には、
会計や税金に対する意識を変えていただく必要があります。

どのように変えていただくかというと、

————————
・節税はあきらめる
・会計スピードが必要とされる
・自社で会計数値を作る
・管理会計が必要になる
————————

といった感じです。

 

上場するうえでは、
事業拡大のなかで利益追求していくことが
基本的には求められます。

利益は増えるけど、納税額は減らすといった
魔法のような手法は基本的にはありませんので、
普通に考えると、利益追求をすると納税額も増えていきます。

そのなかで、
オーナー社長が自由に経営をしてきた
プライベートカンパニーでは実施できていたような節税対策も
上場を目指すと決めたときからは、かなり制限されます。

 

上場を前提としていなかったステージでは、
おそらく「税金」に関する話題が多いと思いますので、
経営者としても、「税務会計」による会計数値に、
接していることが多かったのではないかと思います。

 

一方で、上場するにあたって求められるのは、
上場レベルの会計基準に従った「上場会計」になります。

この「税務会計」と「上場会計」は、
まったく別次元のものになります。

 

 

上場会計とは?

上場会計の特徴は
—————————————-
・きちんと会社の状態を表す決算書を作る
・会計スピードが要求される
・経理部を整えて、自社で会計数値を作成する必要がある
・業績管理のための「経営管理会計」が求められる
・予算を立て、それを達成するための仕組みが求められる
・税金は、その結果として淡々と計算する位置づけになる
—————————————-
といったことが挙げられます。

 

小さな会社の場合、
オーナー社長がある程度自由に
決算数値をコントロールできることが多いです。

この決算数値のコントロールの主目的は、
税額のコントロール(節税)にあることが多いと思います。

上場しないのであれば、
とくにそれでも問題ないと思いますし、
オーナー社長のやりたいようにやれば良いと思います。

 

一方で、IPOするということは、
プライベートカンパニーではなくなるということですので、
多くの外部株主のために会社を経営していく必要が出てきます。

そこでは、
税金を主体とした会計ではなく、
きちんと経営に活用していきながら、
経営の実態を表していく会計が求められます。

 

そのためには、
自社で経理部を構築して、
スピーディーに会計数値を作成していく必要があります。

月次決算も当然必要ですが、
そのスピードと精度が重視されます。

 

管理会計も重要になります。

たとえばですが、
・部門別管理
・セグメント管理
・予算管理
といったことが、会計のなかで求められます。

 

そこには「節税」という思想は基本的にありません。

 

きちんと利益を出して、管理することが主で、
税金の金額は結果として計算されるだけです。

利益を追求するので、
基本的には納税額はそれに応じて増えます。

 

納税することも上場会社の社会的意義である、
というくらいに思考を変える感じでしょうか。

結果として、IPOを目指すと、
おのずと顧問税理士との付き合い方も
変わってくるのです。

 

 

まとめ

今回のテーマは、
「【STEP4】税務会計から上場会計へ」
ということでした。

 

実際にIPOを考え始めている社長に、
今回のような内容をお伝えすると、
両極端に反応が分かれます。

1つは、
「上場を目指すなら仕方ないですね」
という反応です。

そしてもう一方の反応は、
「上場する意味はあまりないような気がしてきました」
といった感じです。

 

当然、会計や税金だけでなく、
上場によって出てくるいろいろな縛りについて、
あわせて説明をしますので、
IPOによるデメリットの方に
反応される経営者がいるのは事実です。

 

これは、人それぞれですので、
私がとやかく言うべき点ではありませんが、
1つ言えることは、

———————–
IPOを目指すということで得られるメリットも多いが、
あきらめないといけないことも多くある
———————–

ということです。

 

税金対策についても、
諦めなければいけないことの1つと言えるでしょう。

 

 

参考:IPOのロードマップ

【STEP 1】 事業計画・コーポレートストーリーの作成
【STEP 2】 資本政策・資金調達計画の立案開始
【STEP 3】 税理士依存からの脱却
【STEP 4】 税務会計から上場会計へ
【STEP 5】 管理部門人員の強化(経理・人事)
【STEP 6】 労務管理体制の強化
【STEP 7】 監査法人の選定・ショートレビュー
【STEP 8】 証券会社選定
【STEP 9】 役員構成の整備開始
【STEP10】 関連当事者の整理
【STEP11】 上場PJチーム発足
【STEP12】 規程類の整備開始
【STEP13】 月次決算の早期化
【STEP14】 予算管理体制・セグメント管理体制の構築
【STEP15】 内部統制体制&内部監査体制の構築開始
【STEP16】 会計監査の本格対応
【STEP17】 証券会社審査等の対応
【STEP18】 上場のための開示書類作成
【STEP19】 取引上の上場審査
【STEP20】 ロードショー&株価決定

 

関連記事

最近の投稿