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Vol.76【IPO事例】かっこ株式会社

  • 2020.12.24

新規IPO

2020年12月17日にかっこ株式会社(情報・通信業)
東京証券取引所マザーズに上場いたしました。

今回は同社から公表されている資料にもとづき、
IPOの状況を確認してみたいと思います。

 

上場時資料

■成長可能性に関する説明資料

 https://ssl4.eir-parts.net/doc/4166/tdnet/1913863/00.pdf

■東京証券取引所マザーズへの上場に伴う当社決算情報等のお知らせ

 https://ssl4.eir-parts.net/doc/4166/tdnet/1913864/00.pdf

■新規上場申請のための有価証券報告書(Ⅰの部)

 https://www.jpx.co.jp/listing/stocks/new/nlsgeu0000053g80-att/12Cacco-1s.pdf

 

成長可能性に関する説明資料

■エグゼクティブサマリー(ビジネスモデルとサービス概要説明)

まず資料の最初に、
「エグゼクティブサマリー」
というパートを設けて、
会社のビジネスモデルやサービス概要の説明から入っています。

ビジュアル的に説明をされていますが、
サービスとしては、
「SaaS型 アルゴリズム提供」
という形でまとめる形で表現されています。

 

さらに次の資料として、
具体的に「SaaS型アルゴリズム提供事業」における
3つのサービスについて簡単にまとめています。

そのなかでも主力製品である1つのサービスに絞って、
より具体的な説明と収益推移の説明を
追加で1枚の資料を使って説明がされています。

 

そして、同社の強みについても
3つポイントにまとめて説明する形で、
導入部分を締めくくっています。

 

■会社概要

上記の「エグゼクティブサマリー」のパートの次からは、
いわゆる全体的に説明に入っていく形になっています。

まずは、会社概要として、
以下の資料を用意して一通りの説明をしている感じです。

「会社基礎情報」
「会社沿革」
「経営ビジョン」
「SaaS型アルゴリズム提供事業の3つのサービス」
「当社ビジネスの商流」
「当社の強み」
「循環成長モデル型のビジネス構造」
「売上高・営業利益の推移」
「中核の不正検知サービスが堅調に推移」
「P Lサマリー」

このうち、
「SaaS型アルゴリズム提供事業の3つのサービス」
「当社の強み」
の2枚の資料は、
上記①の「エグゼクティブサマリー」のパートで
用いられていた資料と同じものです。

 

■事業内容

次に事業内容の詳細説明のパートになります。

目に見えづらいサービスということもあり、
上手く伝える必要がある部分かと思いますが、
わかりやすいイラストを用いて丁寧に説明をしている印象です。

「ターゲットとなる主な業界」
「解決するE C領域の課題」
「仕組みと主な機能」
「提供シーン」
「主なクライアント」
「差別化要因と競争優位性が生まれる好循環」
「収益が伸びるメカニズム」
「ストック収益の推移」

 

顧客となるマーケットや
そこで生じている社会的な課題を説明したうえで、
同社サービスの提供シーンの説明につなげており、
目に見えづらいサービスでも身近に感じることができます。

そのうえで、収益が伸びるメカニズムとして、
収益構造の説明も「顧客数」「単価」「クロスセル」という項目に
因数分解したえうで説明をしていますので、
同社の財務数値へのつながりもわかりやすくなっている印象です。

 

■事業が属する市場の成長

そしてマーケット分析について、
改めて説明をするパートが用意されています。

具体的には、
「持続的な成長を続けるE C市場」
「後払い決済市場の急成長」
「増えるクレジットカード不正利用による被害額」
といった項目で説明がされています。

 

マーケット規模・状況と
同社サービスのつながりがあることは理解ができますが、
個人的には、より具体的な同社への数値インパクトを
上手く表現できていると、より今後の成長性について
理解が深まる気がしました。

 

■中長期の成長戦略

そして、最後に中長期の成長性について、
戦略が説明されています。

具体的には、
「既存領域の成長戦略」
「既存領域の成長戦略 | 概要」
「既存領域の成長戦略 | API連携によるクライアント層の拡大」
「将来のビジネス展開 | SaaS型アルゴリズム開発領域の拡大」
「将来のビジネス展開 | 東南アジアを起点にグローバル展開」
「エクイティ・ストーリー」
「主な事業リスクと対応策」
といった資料が用意されています。

 

まずは既存領域における成長戦略について説明がされています。
同社の事業規模を考えると、
既存領域でもまだまだ狙える市場が大きいことを
説明している感じです。

次に、将来的なビジネス展開として、
グローバル展開を意識しながら、
具体的に3つのマーケットへ参入意欲があることが
説明されています。

 

財務数値の特徴

まずはB/Sについては以下のような感じです。

 

最近の情報通信系のIPO会社の
特徴的なB/Sといった感じです。

重い資産はなく、多くは預金といった感じです。
そのうえで、今後増加が見込まれるとすると、
ソフトウェア(無形固定資産)といった感じでしょうか。

この無形の資産が、どこまで、
事業成長に寄与するかが重要な点になります。

 

また、負債もとくに目立ったものも無く、
借入も預金より少ないですので、
実質無借金経営といった感じです。

上場前には利益剰余金もプラスになっていますし、
自己資本比率も50%を軽く超えていますので、
健全なB/Sといった感じです。

 

次にP/Lの方はどうでしょうか。

粗利率が65%を超えており、
かつ営業利益率も10%を超えており、
この点では良い数値とも言えます。

 

但し、新規IPO企業としては、
売上の伸びが直近2年でほぼ無い点は、
寂しいところです。

B/Sで計上している新規のソフトウェアが
稼働してくると思われる今後において、
IPOで調達した資金も追加投資しながら、
どこまで事業スケールの大きくしていけるかどうか、
この点がポイントといった印象です。

 

資本政策

■特別利害関係者等の株式等の移動状況

有価証券上場規程施行規則第253条の規定

東京証券取引所マザーズへの上場にあたり、
特別利害関係者等が、新規上場申請日の直前事業年度の末日から起算して
2年前の日(2018年1月1日)から上場日の前日までの期間において、
発行する株式又は新株予約権の譲受け又は譲渡を行っている場合には、
「新規上場申請のための有価証券報告書(Ⅰの部)」に記載することとされています

2020年3月
・代表者個人⇒代表者個人の資産管理会社(理由:資産管理会社への譲渡
・3,800円×155,000株(割合:約17.48%
・その後の株式分割を考慮すると「1,266円×465,000株」となる
・移動価格は、DCF法により算出した価格に基づき、譲渡人と譲受人が協議のうえ決定
・約9ヵ月後には上場を果たし、株価(公募価格)2,020円であるため、
 上記の譲渡時時価と比べると、9ヵ月で約1.5倍の株価になっている

 

■第三者割当等の概況

2018年3月
・第6回新株予約権
・発行数:13,863株
・発行価格:3,800円(分割後ベース:1,267円)
・発行価格算定方法:DCF法により算出した価格に基づき決定
・発行価額の総額:52,679,400円
・発行方法:2018年3月28日開催の定時株主総会決議
・発行対象者:取締役、従業員

2018年3月
・第7回新株予約権
・発行数:30,000株
・発行価格:3,910円(分割後ベース:1,377円)
・発行価格算定方法:DCF法により算出した価格に基づき決定
・発行価額の総額:114,000,000円
・発行方法:2018年3月28日開催の定時株主総会決議
・発行対象者:取締役

2020年7月
・第8回新株予約権
・発行数:10,652株
・発行価格:3,800円(分割後ベース:1,267円)
・発行価格算定方法:DCF法により算出した価格に基づき決定
・発行価額の総額:40,477,600円
・発行方法:2020年3月25日開催の定時株主総会決議
・発行対象者:取締役、従業員、社外協力者

 

■株主の状況

・第1位:代表者個人 523,176株(19.66%)
・第2位:代表者個人の資産管理会社  465,000株(17.48%)
・第3位:社員個人  247,803株(9.31%)

 

■新株予約権の状況

・323,484株
・12.16%

 

■資産管理会社

・株主順位第2位(17.48%)
申請期に代表者個人から資産管理会社へ株式移動がある

 

■総括

・代表者が資産管理会社含め1/3以上を保有した状態で上場
VCが30%弱保有している状況

※詳細は、以下の「新規上場申請のための有価証券報告書(Ⅰの部)」参照
 https://www.jpx.co.jp/listing/stocks/new/nlsgeu0000053g80-att/12Cacco-1s.pdf

 

監査報酬

上場直前の監査報酬の状況は以下のような感じです。

直前期の監査報酬で1,200万円程度となっており、
他社と比べても平均的な水準とえいます。

 

新規上場株価情報

●事業内容
・データサイエンスの技術とノウハウをもとに、アルゴリズム及びソフトウェアを開発・提供する
 ことで、企業の課題解決やチャレンジを支援する「SaaS型アルゴリズム提供事業」
●業種別分類
・情報・通信業
●株主名簿管理人
・三菱UFJ信託銀行㈱
●監査人
・仰星監査法人
●幹事取引参加者
・㈱SBI証券
●発行済株式総数
・2,337,081 株(2020 年 11 月 13 日現在)
●上場時発行済株式総数
・2,582,081 株
(注1)公募分を含む
(注2)新株予約権の権利行使により増加する可能性がある。
●公募・売出しの別
・公募:245,000株
・売出し(引受人の買取引受による売出し)5,000株
・売出し(オーバーアロットメントによる売出し)37,500株
●売出株放出元
・代表者個人
●公募・売出価格
・2,020
●初値
・7,890円 (公募価格比+5,870円 +290.6%)

 

 

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