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Vol.58 ベンチャーの資金調達で必要な月次決算

  • 2020.10.24

ベンチャー企業の資金調達

ベンチャー企業にとって、
資金調達は最重要テーマだと思います。

とくに、今年の新型コロナウィルスの影響で、
ベンチャー企業の資金調達が難しくなる場面も、
かなり出てきたと聞いています。

 

国の政策もあり、金融機関の貸付は、
一時的に寛容にはなっているものの、
この状態がいつまでも続くわけではないと思いますし、
依然として「会社としての資金調達力」は、
ベンチャー企業にとって重要なテーマであり続けると思います。

そこで、今回は、
「ベンチャー企業の資金調達で重要なこと」
についてお伝えできればと思います。

 

資金調達の種類

起業直後、シード期においては、
経営者の知り合いやエンジェル投資家が、
小口のお金を出してくれることもまれにあると思います。

このような資金調達であれば、
社長の人脈や過去の付き合いで何とかなる場合もあると思いますが、
一定以上の規模の資金調達を考えると、
それだけでは限界が出てくると思います。

 

より広い範囲から資金調達を考える場合には、
資金の出し手によって、
お金に対する見返りの要求は当然異なりますので、
そのあたりを意識しながら資金調達活動になります。

 

たとえば、金融機関の場合には、
貸したお金をきちんと返してくれることを
最重視しています。

きちんと返してくれる会社には、
できるだけ貸付をして利息収入を得たいと考えていると思います。

 

一方で、
出資という形でお金を出す投資家・VC等の場合には、
そのリターンとして要求するものは、
将来的なキャピタルゲインの場合が通常です。

当然リスクがあることも承知での投資であり、
企業の成長性・将来性にかけての出資になると思います。

現状は業績が苦しくても、
将来的に成長する可能性があれば、
投資をしたいと思うものです。

 

資金調達で見られるポイント

資金調達の手段はいろいろとあり、
お金の出し手によって要求するリターンも異なりますが、
どのようなプレイヤーであっても、お金を出す際には、

その会社なり、経営者が、信用できるのか?

については必ず見ていると思います。

 

嘘をつく、信用できない、
といった会社にはお金は出したくないと思いますので、
経営者・会社として「信用」を得られるかどうかは、
資金調達を行ううえでは欠かせないポイントです。

 

この「信用」という点についてですが、
信用を測るうえで何が重視されるかというというと、
まずは「経営者の性格」であることは間違いありません。

人それぞれ、人間性や、強みがありますので、
どこが一番重視されるかは一概に言えませんが、
やはり「人として信用できるかどうか」という点は、
必ず見られているポイントだと思います。

 

但し、経営者の人間性だけで、
すぐにお金を出してくれるほど世の中甘くありません…。

「お金を貸しますよ」
「是非、出資させてください」

金融機関やベンチャーキャピタル等が
このようにお声がけしてくれることもあるかと思いますが、
いざお金を出すという話が具体化していく際には、
次のステップとして「あるもの」を要求されます。

 

それは、

「決算書」と「試算表」

です。

 

試算表と月次決算

決算書というと、
事業年度ごとの会社の数値として
使われることが多いと思います。

事業年度ごとの税務申告もしますので、
正式な会社の業績や財政状態を把握するために、
過去の「決算書」の情報は必ず求められます。

 

但し、決算は基本的に1年に1回ですので、
資金調達のタイミングと、決算のタイミングがちょうど一致していれば、
決算書だけで資料として事足りる場合もありますが、
通常は、資金調達したいタイミングが、
そのような決算のタイミングばかりではないと思います。

そのような際に、追加で要望を受けるのが、
「直近の試算表を見せてください」
というフレーズです。

 

お金を出す側の視点で考えると、
ベンチャー企業の場合には、
数ヵ月前に終わった事業年度の過去の決算数値よりも、
直近がどうなっているのかを知りたい、
というのが本音でもあると思います。

このようなときに、
直近の経営数値を表す「試算表」をすぐに提出できるかどうかは、
会社としての「信用を得る」ためにはとても重要なことだと考えています。

 

資金調達の話題がホットなうちに、
タイムリーに話を進めていくという意味で「試算表」の提出は重要ではありますが、

きちんと「月次決算」をして
直近の数字を見ながら経営をしていることを証明できることは
会社経営という意味で信頼をされやすい

という理由もあり、月次決算による試算表がとても重要といえます。

 

いざというときの資金調達のための月次決算

月次決算は、
必要になったからといってすぐにできるものもありません。

必要になったときに、
突貫工事的に顧問税理士に依頼をしたりして、
試算表を作成することは実際には見かけられる事例かと思いますが、
そのような状況では、信用を得られる「試算表」は
提出できないのではないかと思います。

 

また、月次の数値状況を聞かれたときに、
経営者であれば売上はだいたい回答できるとは思いますが、
経費の状況や、利益の状況、資産や負債の状況については、
「月次決算」をして「試算表」を定期的にチェックしていないと、
すぐに回答ができないと思います。

 

資金の出し手から、
試算表の提出を求められる背景には、

毎月の月次決算の結果として
毎月の経営数値把握ができている経営者かどうか

という点も、実質的にチェックをされていると思っておいた方がよいです。

 

もしかしたら、平時においては、
月次決算の必要性に気づきづらい経営者もいらっしゃるかもしれませんが、
緊急時には、その必要性がとても実感できると思います。

月次決算がきちんとできていないがゆえに、
緊急時に苦労をしている会社もこれまで多く見てきました。

 

ベンチャー企業の経営者であれば、
是非、「月次決算」を経営の仕組みとして活用しつつ、
いざというときの資金調達の場面では、
経営体制のアピールとしても活用していただければと思います。

 

 

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