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Vol.56 IPOに向けて顧問税理士を変更するべきか?

  • 2020.10.19

IPOと税理士の関係

IPOを目指し始める会社で
よく出てくるテーマとして、
「税理士変更」
の必要性についてです。

IPOにおいての税理士変更については、
別のSTEP3【IPO】税理士依存からの脱却のなかでも
個人的な思いを記載していますので参考にしていただきたいと思いますが、
改めて、このテーマで考えを整理してみたいと思います。

私自身も、IPOに向けて
税理士変更の受け入れ先として
業務依頼を受けることがたまにありますが、
共通して感じることもありますので。

 

今回のテーマとしては、
「IPOに向けて顧問税理士を変更するべきか?」
についての検討となります。

 

税理士変更の背景

最近はインターネット等で税理士同士の比較もしやすくなり、
顧問税理士を変更するケースも増えてきたと思います。

 

とはいっても、他の業界と比べると、
やはり税理士変更はかなりハードルが高いと思いますし、
事例としても一般的かというと、まだまだそうではないと思います。

とくに創業時から税理士さんに依存をして、
ずっと頼っているケースも多いと思いますので、
そのような場合には、細かな不満等はあったとしても、
税理士変更することによる不安の方が大きいと思います。

 

そのようななかでも税理士変更を検討するケースとしては、
どのようなケースが多いのでしょうか。

税理士側が業務継続困難ということで断るケースもあるかと思いますが、
一般的には、クライアント経営者側が、
サービス面への不満をもとに税理士変更を検討する場合か、
もしくは報酬額を下げるために税理士変更を検討する、
といったケースが大半かと思います。

 

実際に、業務を依頼してみないと
比較が難しい業界が税理士業界だと思いますので、
その点では、知り合いの紹介による変更の割合が
多いのかもしれません。

 

それでは、IPOを目指す会社において、
たまに生じる「税理士変更」の状況というのは、
どのような感じなのでしょうか?

 

事例による傾向

IPOに向けて顧問税理士を変更したいという理由で、
私のところへ相談が来る事例として共通している傾向は、
以下のような状況です。

共通の傾向

・創業からずっと同じ顧問税理士さんへ依頼をしている
・創業時にたまたまその税理士さんへお願いしただけで
 その税理士さんに対する強い思い入れがあるわけではない
・一方で、その税理士さんへの強い不満もない
・すべての会計入力や申告等を税理士さんにお任せしていて、
 社内では経理機能がほぼなく、状況を把握できていない
・税理士による違いはあまり意識したことがないが、
 IPOの相談をしたら「IPOのことはよくわかりません」という反応だった
・知り合いから「IPOでは税理士変更が必要」というアドバイスがあった
・但し、「IPOに向けてなぜ税理士変更が必要か」についての
 社長自身として理解はできていない

 

私の場合、
IPOのための税理士変更として依頼をいただくルートとしては、
以前に一緒に仕事をさせていただいたクライアントのCFO経由の場合が半分で、
残りの半分のケースは、別途運営している以下のサイトで、
IPOに一部触れているので、その運営サイト経由です。
※別の運営サイト:https://holdings-renketsu.com/

 

私自身としても、
IPO理由で税理士業務の依頼を受けたのは10件もないくらいなので、
上記の傾向が一般的な傾向かはわかりません。

 

但し、少ない事例の中でも、
今回振り返ってみると、結構、状況が共通している感じでしたので、
IPOに向けて税理士変更を検討される共通項的なものがあるのだと思い、
それが何なのか、考えてみました。

この要因がわかれば、
「IPOに向けて顧問税理士を変更するべきか?」
に対する答えも出てくるかと思いますので。

 

IPOに向けて顧問税理士を変更するべきか?

IPOを目指して、上場会社になっていくためには、
上場会社特有の会計処理が必要になるため、
中小企業しかクライアント経験のない税理士の場合、
ほとんど上場会社の会計についていけないと言っても良いと思います。

さらに最近はIFRS(国際会計基準)導入の流れもあるため、
上場会社に慣れている会計士でも、
上場レベルの会計基準についていくのが大変な時代ですので、
いわゆる「中小企業専門」の税理士では対応は難しいというのが、
率直な本音です。

 

但し、だからといって、
いわゆる「中小企業専門」の税理士が顧問の場合に、
すぐに税理士変更が必要かといういうと、
そのような場合ばかりではないと思っています。

税務顧問業務としてベースとなる税務業務について
レベル高く対応してくれている顧問税理士であれば、
仮にIPOについて詳しくなくても、
顧問を継続していくなかでIPOについて知見を深めてもらう形も
あるのではないかと思います。

 

それでは、
「IPOに向けて顧問税理士を変更するべきか?」
判断のポイントがどこにあるかですが、
私なりに整理をして見ると、以下になると思っています。

 ・税理士に会計入力業務を丸投げしているケース
 =税理士の能力がそのまま会社の経理能力になる
 =税理士がIPO経験や上場会社のクライアントがないと対応難しい
 =税理士変更をすべき

・会社に経理部があり、税理士がチェックをしているケース
 =会社自身でIPOに向けて成長していける
 =税理士はあくまで税務的な要素でフォローすればよい
 =税理士としての税務業務ができれば必ずしも税理士変更は必要ない

 

IPOを進めていくのは、
税理士ではなく、クライアントである会社です。

STEP3【IPO】税理士依存からの脱却でもお伝えしましたが、
IPOを目指すには、税理士依存から脱却することが不可欠です。

会社として、IPOを目指す過程で、
経理部・管理部を強くしていく必要がありますが、
そこについては、監査法人や証券会社がフォローをすることになりますので、
その部分についてまで税理士にフォローをする分野ではありません。

 

そう考えた際に、
会社に経理部があり、きちんと強化していく土台があれば、
あえて顧問税理士を変更しなくても、
経理部が監査法人や証券会社のフォローのもとIPOに取り組めばよいですし、
顧問税理士には税務的なところをきちんとフォローしてもらう形で、
きちんとすみ分けができると思っています。

 

一方で、会計入力等含め、
いろいろなことを税理士に依存してきた会社については、
そもそもの前提を変えていく必要があります。

そのような状況を作ってきた背景には、
きちんと社内で経理ができる体制をアドバイスしてこなかった
業務請負型に慣れている税理士の存在も大きいと思います。

 

IPOを目指す時点で、
そのような税理士の業務スタイルが合わなくなると思いますので、
結果として、税理士の存在自体が、
IPOのボトルネックになる可能性があります。

そのような場合には、
税理士変更を検討する必要はあるかもしれません。

 

まとめ

以上をまとめますと、
「IPOに向けて顧問税理士を変更するべきか?」
の判断のポイントは、
「税理士へ会計入力等を依存している会社かどうか」
という点が大きなポイントになるかと思っています。

 

小規模・中小企業から脱却して、
上場会社を目指していくステージとなれば、
当然、会社として求められる役割も変わってきます。

そして、そのステージごとに、
最適な顧問税理士も変わってくるのも当然です。
それぞれのステージに適した税理士像も変わりますので。

 

ということで、今回は、
「IPOに向けて顧問税理士を変更するべきか?」
というポイントについて、
私なりの検討をまとめてみました。

IPOを目指される経営者には、
是非、参考にしていただければと思います。

 

 

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