新規IPO
2020年12月22日に株式会社Kaizen Platform(情報・通信業)が
東京証券取引所マザーズに上場いたしました。
今回は同社から公表されている資料にもとづき、
IPOの状況を確認してみたいと思います。
上場時資料
■成長可能性に関する説明資料
https://www.nikkei.com/nkd/disclosure/tdnr/cnu8qd/
■東京証券取引所マザーズへの上場に伴う当社決算情報等のお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120201217436269.pdf
■新規上場申請のための有価証券報告書(Ⅰの部)
https://www.jpx.co.jp/listing/stocks/new/nlsgeu0000053yl3-att/12KaizenPlatform-1s.pdf
成長可能性に関する説明資料
■会社概要
まずは会社概要について、
全体像を一通り説明されています。
具体的には、以下の資料を用いての説明となります。
「会社概要」
「エグゼクティブサマリー」
「創業の想い」
「事業概要」
「サービス概要」
「カスタマージャーニー」
「取引構造」
「取引実績」
「拡大するサービス/顧客/ユーザー」
「業績推移」
「経営メンバー」
「ミッション」
事業概要としては、
「企業のDX推進を支援するプラットフォームとサービスを提供」
ということですが、それに関するサービス概要の説明も
実施しているパートになります。
イラストを交えて説明をされていますが、
その分野にあまり詳しくない人にとっては、
少し専門的な印象で理解しづらい部分もあるかもしれません。
但し、ユーザーが増えていることは、
説明資料を見る限り、理解ができました。
また、業績推移についても説明がありましたが、
黒字化も達成してきているフェーズのようです。
■カンパニー・ハイライト
次に、資料の作りとして、
カンパニー・ハイライトという目次的なページに以下の4つの項目を掲げ、
この4つの内容をそれぞれ説明していく作りになっています。
①存在意義について
②提供価値について
③ビジネスモデルについて
④成長戦略について
■①存在意義について
まず1つ目の項目は「存在意義」についてですが、
具体的には、以下の項目の資料をもとに、
説明を深堀しています。
「創業の狙い」
「DX市場における当社の事業機会」
「急速に拡大するDX市場」
「5G時代における動画市場」
このパートでは、
同社が創業したときの思いと仮説にも触れらており、
そこから現在のサービスへのつながりを説明している点で、
同社の方針がわかりやすい資料になっていると思います。
また、あわせて市場分析もしていて、
同社サービスの潜在的な可能性が高いことも
説明をしています。
■②提供価値について
次に同社の「提供価値」についての
詳細説明のパートになります。
具体的には、
「提供価値」
「プラットフォームの強み」
「顧客企業から見た時のメリット」
の3つの資料で説明をしています。
まずは3枚の資料に整理をしている点で、
コンパクトにまとまっていてわかりやすいと思いました。
そのなかで、
従来の制作/運用の現場の業務フロー及び提供価値と比較する形で
同社のサービスの業務フロー及び提供価値の違いを説明していて、
新たな提供価値を説明している点は、
同社の特長がわかりやすい資料だと思いました。
また、そのような同社サービスのプラットフォームの強みや、
顧客から見たメリットも併せて説明をしており、
同社の競争優位性の説明も兼ねているパートといえます。
■③ビジネスモデルについて
そして次に、同社の「ビジネスモデル」についての
説明のパートになります。
具体的には、
「強固な競争力を持つ事業構造」
「強固な競争力を実現する仕組み」
「成長エンジン」
「KAIZEN PLATFORMの価値創造メカニズム」
「取引アカウント数とARPU」
といった資料を用いています。
まず事業構造として、
・1人あたりの生産性:1人当たり4倍の案件を担当できる
・顧客への価格:価格を1/3にできる
・報酬単価:2倍を還元でき採用競争力を高めることが可能
が実現できることを数値を使って説明しており、
この点で競争優位性があることの理解がすすみます。
また、実績としても、
取引アカウント数とARPUが右肩上がりに成長していることを
グラフを用いて説明をしています。
■④成長戦略について
そして、カンパニー・ハイライトの最後として、
「成長戦略」についてです。
具体的には、
「顧客体験DXの進化と取引の拡大」
「顧客単価向上のシナリオ」
「市場獲得に向けた戦略」
「これからの成長戦略」
「IPOによる調達資金の使途」
「事業等のリスク」
といった資料を用いています。
まずは、そもそものDX市場の成長可能性の説明から入り、
そのうえで、顧客単価向上の余地について説明をしています。
また、急成長していくDX市場における
プラットフォームとしてのポジションを確立していくために
成長投資を継続することを示しています。
具体的にIPOで調達した資金を何に使用するかを
説明するところまでつなげています。
■Appendix
そして最後に「Appendix」として
以下の説明を加えています。
「UXソリューション」
「UXソリューション(事例)」
「動画ソリューション」
「動画ソリューション(事例)」
「DXソリューション」
「DXソリューション(事例)」
「業績推移」
「損益計算書(連結)」
「損益計算書(事業別)」
「貸借対照表(連結)」
まずは、同社サービスに関する
具体的な事例をいくつか紹介することで、
イメージをふくらませています。
そのうえで、会社としての業績推移と
財務諸表のサマリーについての説明を加えて、
全体資料を終えています。
財務数値の特徴
まずはB/Sについては以下のような感じです。
とてもシンプルなB/Sです。
資産については、
資産総額に占めるソフトウェアの割合が若干高いですが、
とはいえ、業種を考えると高すぎる印象はありません。
結局、資産のほとんどはキャッシュになりますし、
一方の負債の方も借入はなく、無借金経営となっています。
固定負債もありませんし、
自己資本比率が80%を超えており、
とても健全なB/Sといえます。
次にP/Lの方はどうでしょうか。
売上高は順調に成長している印象ですが、
直前期時点は、営業損益は赤字になっています。
IPOの申請期においては黒字化しているようですが、
とはいえ、まだまだこれから成長していく段階のステージといえそうです。
なお、売上拡大のわりに販管費は伸びていないので、
ある程度固定費化しているのかもしれません。
そう考えると、今後の売上拡大分が、
利益にのってくる割合は大きそうです。
また、粗利率も改善している印象ですし、
今後の投資回収ステージが待たれるところです。
資本政策
■特別利害関係者等の株式等の移動状況
<有価証券上場規程施行規則第253条の規定>
東京証券取引所マザーズへの上場にあたり、
特別利害関係者等が、新規上場申請日の直前事業年度の末日から起算して
2年前の日(2018年1月1日)から上場日の前日までの期間において、
発行する株式又は新株予約権の譲受け又は譲渡を行っている場合には、
「新規上場申請のための有価証券報告書(Ⅰの部)」に記載することとされています。
2020年4月
・NTT系VC⇒NTT系事業会社(理由:所有者の事情による)
・850円×B種優先株式423,451株
・株価は、直近の第三者割当増資(D種優先株式)の価格を参考として当事者間で協議決定
なお、D種優先株式はDCF法により算出した価格を基に当事者間で協議決定
2020年10月
・VCからの優先株式取得⇒対価として普通株式交付
・2020年10月1日開催の取締役会において、
A種優先株式、A-1種優先株式、A-2種優先株式、 B種優先株式、C種優先株式、
D種優先株式のすべてにつき、定款に定める取得条項に基づき取得することを決議
・2020年10月16日付で自己株式として取得し、
対価として各優先株式1株につきそれぞれ普通株式1株を交付
・A種優先株式、A-1種優先株式、A-2種優先株式、B種優先株式については
当該優先株式の発行時の価格は、事業計画に基づき各株主との協議を通じて算定
・C種優先株式及びD種優先株式については、
DCF法により算出した価格を基に当事者間で協議のうえ決定し、
当該価格は普通株式1株との権利の違いも考慮したものとなっている
・優先株式1株の払込金額は、
A種優先株式328円
A-1種優先 株式393円
A-2種優先株式346円
B種優先株式450円
C種優先株式471円
D種優先株式850円
・優先株式取得の対価として交付する普通株式数については、
当該優先株式の払込金額を定款に定める当該優先株式の取得価額で除した数となっている
・取得したA種優先株式、A- 1種優先株式、A-2種優先株式、B種優先株式、
C種優先株式、D種優先株式は、2020年10月16日付で会社法第178条に基づきすべて消却
・2020年10月16日開催の臨時株主総会において定款変更が決議され、
2020年10月16日付で種類株式を発行する旨の定款の定めを廃止
■第三者割当等の概況
こちらについても情報量が多いため、
以下の通り、Ⅰの部から転載をさせていただきます。
新株予約権の交付も17回にわたっており、
かなり多くのストックオプションが発行されています。
■株主の状況
・第1位:代表者個人 4,600,000株(28.95%)
・第2位:Japan Ventures Ⅰ L.P. 2,554,551株(16.08%)
・第3位:AT-I投資事業有限責任組合 1,303,064株(8.2%)
■新株予約権の状況
・2,012,318株
・12.67%
■資産管理会社
・なし
■総括
・かなりの数のVCが入っており、資本政策も複雑になっている
・ストックオプションの付与も12%を超えており、かなり高い割合になっている。
※詳細は、以下の「新規上場申請のための有価証券報告書(Ⅰの部)」参照
https://www.jpx.co.jp/listing/stocks/new/nlsgeu0000053yl3-att/12KaizenPlatform-1s.pdf
監査報酬
上場直前の監査報酬の状況は以下のような感じです。
直前期の監査報酬(非監査業務を除く)で3,000万円程度となっており、
他社と比べて高めの水準といった感じでしょうか。
(おそらく連結決算だということも理由の1つかと思われます)
新規上場株価情報
●事業内容
・Webサイトの UI/UX改善サービスの提供及び広告/営業/販促動画制作支援により、
企業の顧客体験のデジタルトランスフォーメーションを推進
●業種別分類
・情報・通信業
●株主名簿管理人
・三菱UFJ信託銀行㈱
●監査人
・EY 新日本有限責任監査法人
●幹事取引参加者
・㈱SBI証券
●発行済株式総数
・13,874,473 株(2020 年 11 月 18 日現在)
●上場時発行済株式総数
・15,424,473 株
(注1)公募分を含む
(注2)新株予約権の権利行使により増加する可能性がある
●公募・売出しの別
・公募:1,550,000 株
・売出し(引受人の買取引受による売出し)3,459,300 株
・売出し(オーバーアロットメントによる売出し)751,300 株
●売出株放出元
・Japan Ventures I L.P.
・AT-Ⅰ投資事業有限責任組合
・YJ2号投資事業組合
・代表者個人
・㈱コロプラ
・㈱セゾンベンチャーズ
・取締役個人
●公募・売出価格
・1,150円
●初値
・1,170円 (公募価格比+20円 +1.7%)