記事一覧

Vol.110 経営者のための「電子帳簿保存法」基礎知識【前編】/総論

  • 2021.2.4

電子帳簿保存法の2021年改正を確認する前に

前回の記事で、
2022年1月から税制が緩和改正され、
証憑類のデジタル化がしやすくなる、
ということをお伝えしました。

このあたりについての説明をさせていただくにあたり、
まずは、電子帳簿保存法の前提条件を把握しておいた方が、
いろいろと理解がしやすいと思いますので、
電子帳簿保存法の基礎知識を、かみ砕いてお伝えをできればと思っています。

 

 

電子データ保存の5要件

まず最初に、
電子帳簿保存法の基本的な概念として
「電子データ保存の5要件」
についてお伝えしたいと思います。

 

現在の税制では、
原則として書類は紙保存なのです。

但し、例外として
電子データとして保存することが認められていますが、
そのために必要な基本要件が5つあります。

 

経営者として細かく要件を覚えるまでは不要ですが、
イメージだけでもつかんでいただければと思いますので、
簡単にこの5要件について以下にご紹介させていただきます。

 

要件①:訂正・削除履歴の確保

・記録について訂正又は削除を行った場合には、事実及び内容を確認できるシステムを使用する
・記録入力を通常期間を経過した後に行った場合には、その事実を確認できる

 

要件②:相互関連性の確保

・「帳簿」と「関連帳簿」の間において相互に関連性を確認できる

 

要件③:関係書類等の備付け

・システム関係書類等の備付ける
・具体的には「システム概要書」「システム仕様書」「操作説明書」「事務処理マニュアル」等が必要

 

要件④:見読可能性の確保

・電子計算機、プログラム、ディスプレイ及びプリンタ並びにこれらの操作説明書を備付ける
・ディスプレイ画面及び書面に、整然・明瞭な状態で、速やかに出力できるようにしておく

 

要件⑤:検索機能の確保

・検索機能を確保しておく
・「取引年月日」「勘定科目」「取引金額」等、主要項目を検索条件として設定できる
・「日付」又は「金額」に係る記録項目については、範囲指定して条件を設定できる
・2つ以上の任意の記録項目を組み合わせて条件を設定できる

 

表現が固いため少しわかりづらいかもしれませんが、
上記の5要件を要約すると、
—————————————
・正確に記録できて、データ改ざんされないような仕組みにしてくださいね!
・記録したものを、見やすく、検索しやすくしておいてくださいね!
—————————————
といった内容になります。

 

紙の原本が無くなり、電子データのみが存在する前提になっているので、
きちんとデータの正確性や真実性が確保できる体制を
法律が要求していることは当然かと思います。

また、その後の税務調査等も考えると、
後でデータを確認しやすい環境にしておくことが要求されるのも
当然といえば当然かとは思いますので、
規定されていること自体に違和感は感じないのではないでしょうか?

 

ただ、この5要件を具体的に確保するための
細かいルールが、別途いろいろ設けられていまして、
これがとてもハードルが高い法律になっていたため、
多くの会社では適用されてこなかった、
というのが、これまでの状況でした。

 

 

帳簿と取引関係書類

次に、電子化をする対象について、
確認をしてみたいと思います。

 

電子帳簿保存法は、
なかなか整理の仕方が難しいのですが、
ざっくりいうと、
——————————————
帳簿(仕訳帳、現金出納帳、等)
取引引関係書類契約書、領収書、請求書、等)
——————————————
の2つの電子データ化の話があると
考えていただければと思います。

 

上記のうち「帳簿」については、
会計システムの機能によるところが大きく、
直接関連するのは、経理部メンバーや税理士、
といったあたりになるかと思います。

そのため、経営者としては、あまり深入りする必要はない気もします。

極論すると、
電子帳簿保存法に対応している会計ソフトを使用すればよい
という感じで、とらえておいていただければ十分かと思います。

 

ということで、
会社全体の実務を考えると、
全社員が関連して、かつ、業務上も影響が大きいのは、
「取引関係書類(契約書、領収書、請求書、等)」
の方の電子化ということになります。

つまり、
契約書とか、領収書とか、請求書とか、
実務上で使用する証憑類のことです。

これらは原則的には紙で保存をする必要があるものです。

 

そして、これらのあらゆる取引関係書類を、
なんとか電子データで保存できる方法がないか、
と多くの会社が考えているとは思いますが、
なかなか、法律のハードルを越えるのが難しく、
それができていない、ということになります。

 

ちなみに、
「うちは、全部データ化して保存しているよ」
と言われる経営者もいらっしゃいます。

 

ただそれが、
現場実務上そのように走っているだけで、
税法上で認められた形で電子化対応していない場合には、
税務調査等の場面では通用しないので、
この点の違いは留意しておく必要はあるかと思います。

つまり、電子データ保存の条件を満たしていなければ、
いくら電子データで実務の方が走っていても、
別途、紙で保存をする義務が出てくるということになります。

 

 

取引関係書類の電子データ保存

ということで、ポイントになるのは、

「領収書や請求書といった取引関係書類について、
 どのようにしたら税法でも容認される形で電子データ保存できるのか」

という点になってきます。

 

領収書や請求書は、
自社で発行する場合もあれば、
他社から受取る場合もあります。

とくに他社から受け取る側の証憑類については、
フォーマットも、受け取り方も様々です。

紙の請求書が郵送されてきたり、
お店で領収書を出してもらったり、
WEBで利用明細が発行されたり、
メールで請求書が添付されてきたり、
といった感じで様々なパターンがあります。

 

いろいろとあるパターンについて、
上記にご紹介した「電子データ保存の5要件」を満たす必要があるのですが、
各社が勝手に5要件を解釈・運用して良いというわけではありません。

5要件を満たすための電子データ保存の方法が
とても細かく法律で規定されているというのが実情です。

 

そして、
この具体的な要件の満たし方として、
以下の2つに分けて整理をしていることになります。

———————————————————-
・スキャナ保存(=紙のものをスキャンしてデータ化する方法)
・電子取引保存(=電子データを電子データとしてそのまま保存する方法)
———————————————————-

 

実務上は、
「スキャナ保存」
「電子取引データ保存」
をどのように整理して適用していくかを考える必要があります。

 

ということで、情報量も多くなってきましたので、
今回はこのあたりで終わりにしたいと思います。

まずは、イメージだけでも
押さえておいていただければと思います。

 

次回は続きの【後半】として

スキャナ保存
電子取引データ保存

についてもう少し具体的にご紹介させていただきます。

 

 

関連記事

最近の投稿