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Vol.90【IPO事例】株式会社オンデック

  • 2021.1.9

新規IPO

2020年12月29日に株式会社オンデック(サービス業)
東京証券取引所マザーズに上場いたしました。

今回は同社から公表されている資料にもとづき、
IPOの状況を確認してみたいと思います。

 

上場時資料

■成長可能性に関する説明資料

https://contents.xj-storage.jp/xcontents/AS04983/4d81552d/e528/48be/81b3/573e1d3a5b12/140120201224438765.pdf

■東京証券取引所マザーズへの上場に伴う当社決算情報等のお知らせ

https://contents.xj-storage.jp/xcontents/AS04983/4ad25c37/559a/40af/aac8/a51b8276f27c/140120201224438750.pdf

■新規上場申請のための有価証券報告書(Ⅰの部)

https://www.jpx.co.jp/listing/stocks/new/nlsgeu0000054osf-att/12ONDECK-1s.pdf

 

成長可能性に関する説明資料

■会社概要

まず会社概要についてです。

具体的には、
「会社紹介」
「会社概要」
「経営陣の紹介」
「ONDECK WAY」
「沿革」
「業績ハイライト」
「ビジネスフロー」
「M&A業務フロー」
「報酬体系」
「案件実績」
といった資料で、会社の全体像を説明しています。

会社の沿革や業績推移、
ビジネスフローといったあたりの説明をしたうえで、
具体的な報酬体系(=売上)についても記載があるので、
イメージがわきやすいです。

 

■インベストメントハイライト

次に「ハイライト」として、
以下の5つの項目をあげています。

——————————————
①国内中小企業向けM&A市場の拡大
②コンサルティング・クオリティの追求による好循環成長モデル
③対応エリアの拡大による成長
④独自性ある資本提携先との連携
⑤市場のパラダイムシフトを狙う独自のプラットフォーム戦略
——————————————

 

まず「①国内中小企業向けM&A市場の拡大」についてですが、
具体的には、
「拡大を続ける国内M&A市場」
「M&A市場の拡大を支える譲渡側の需要」
の2つの資料で市場分析を行っています。

国内中小企業におけるM&A市場は、
後継者不足という大きな課題もあり、
まだまだ市場拡大余地があるとのことです。

 

次に、
「②コンサルティング・クオリティの追求による好循環成長モデル」
についてですが、以下の3つの資料を用いて説明をしています。

「好循環成長モデル」
「専門性の高いコンサルタントチーム」
「クオリティを軸とした規模的成長のポテンシャル」

内容としては、
同社サービスを支える源泉(≒人材・ノウハウ・経験)について、
説明をしているパートになります。

 

そして「③対応エリアの拡大による成長」という点では、
全国展開をしていく中で、
エリア戦略的にもまだまだ成長余地がある点を説明しています。

 

また、「④独自性ある資本提携先との連携」という点では、
具体的に
・Anger Bridge
・帝国データバンク
といった提携先の名称を示すことで、独自性を説明しています。

 

最後に「⑤市場のパラダイムシフトを狙う独自のプラットフォーム戦略」という点では、
「既存のM&Aプラットフォームの課題」
「M&Aプラットフォームでの独自のポジション」
という2つの資料をもとに説明をしています。

既存のM&Aプラットフォームの課題を説明したうえで、
同社はそれを解決できる独自のポジショニングをとっている点を示し、
競合との差別化を説明している感じでしょうか。

 

■中長期成長イメージ

そして中長期の成長イメージとして、
1つの図を使用して説明をしています。

具体的には、
・東京オフィス・対応エリアの拡大
・資本提携先との連携深化
・プラットフォーム構築による潜在顧客の獲得
といったことで成長を目指していくとのことです。

ただ、このあたりはもう少し情報があると、
投資家にもイメージがしやすい気がしました。

 

■Appendix

最後に補足情報として、
「投資計画」
「事業等のリスク」
について説明をしています。

まず、IPOで調達した資金を
どのように使用していくかですが、
・M&Aプラットフォーム
・本社移転
に活用していくとのことです。

また、事業等のリスクについては、
・競合
・新型コロナウイルス感染症(COVID-19)感染拡大による経済的影響
について触れています。

 

財務数値の特徴

まずはB/Sについては以下のような感じです。

事業の特徴から、
資産については現預金以外はほとんどありません。

また、負債の方もそれほど特徴的なものはなく、
借入も実質的にはほとんど存在せず、
自己資本比率も75%近くあり、
上場前の時点で健全な財務状態を保っている印象です。

 

次にP/Lの方はどうでしょうか。

売上は順調に拡大しており、
原価や販管費についても人件費が多くを占めるものと思いますので、
比較的固定費化しやすいものといえます。

そのため、
案件獲得が順調に進み、売上が拡大すれば、
利益率が高くなるビジネスモデルだと想定されます。

 

資本政策

■特別利害関係者等の株式等の移動状況

<有価証券上場規程施行規則第253条の規定>
東京証券取引所マザーズへの上場にあたり、
特別利害関係者等が、新規上場申請日の直前事業年度の末日から起算して
2年前の日(2017年12月1日)から上場日の前日までの期間において、
発行する株式又は新株予約権の譲受け又は譲渡を行っている場合には、
「新規上場申請のための有価証券報告書(Ⅰの部)」に記載することとされています。

<コメント>
特別利害関係者等の株式等の移動がとても多いので、
移動理由のみ以下に掲載させていただきます。

————————————————–
移動後所有者の取得希望に移動前所有者が応じたため
資本業務提携に伴うもの
監査役監査の実効性向上に資すると判断したため
インセンティブ付与のため
従業員持株会への信託を行ったもの
————————————————–

全体的に、とても「意志」の感じる資本移動であり、
きちんと準備をしながら資本政策を進められたのではないかと感じました。

 

■第三者割当等の概況

2018年5月
・普通株式
・発行数:27株(分割後ベース:81,000株)
・発行価格:3,703,704円(分割後ベース:1,234円)
 ※DCF法、純資産方式及び類似会社比準方式により算出した価格を総合的に勘案決定
・目的:取引提携先との関係強化を目的としたもの
・発行方法:有償第三者割当
・対象者:株式会社タケオホールディングス

2020年5月
・第1回新株予約権
・発行数 :3,306株(分割後ベース:99,180株)
・発行価格:48,370円(分割後ベース:1,612円)
 ※DCF法、純資産方式及び類似会社比準方式により算出した価格を総合的に勘案決定
・目的:取締役及び従業員の中長期的な業績向上と企業価値の増大への貢献意欲を高めること
・発行方法:2020年5月28日開催の臨時株主総会において決議
・対象者:取締役、従業員

■株主の状況

・第1位:代表取締役会長の資産管理会社 903,900株(35.03%)
・第2位:代表取締役社長の資産管理会社 903,900株(35.03%)
・第3位:Angel Bridge Deal-by-Deal Fund 9号株式会社 366,000株(14.19%)

■新株予約権の状況

・99,180株
・3.84%

■資産管理会社

・一部の取締役の所有する会社が少し株式保有がある程度

■総括

2人の代表取締役で70%を保有したまま上場
ストックオプションの発行割合も少ない
・株主数も少なく、取引先、一部の従業員だけで構成されており、きれいな資本政策といった印象
※詳細は、以下の「新規上場申請のための有価証券報告書(Ⅰの部)」参照
 https://www.jpx.co.jp/listing/stocks/new/nlsgeu0000054osf-att/12ONDECK-1s.pdf

 

監査報酬

上場直前の監査報酬の状況は以下のような感じです。

直前期の監査報酬で900万円程度となっており、
他社と比べると低めといった印象です。

 

新規上場株価情報

●事業内容
・M&Aに関する仲介、アドバイザリー業務
●業種別分類
・サービス業
●株主名簿管理人
・みずほ信託銀行㈱
●監査人
・有限責任あずさ監査法人
●幹事取引参加者
・野村證券㈱
●発行済株式総数
・2,481,000 株(2020 年 11 月 25 日現在)
●上場時発行済株式総数
・2,781,000 株
(注1)公募分を含む
●公募・売出しの別
・公募:300,000株
・売出し(引受人の買取引受による売出し)250,000株
・売出し(オーバーアロットメントによる売出し)82,500株
●売出株放出元
・代表取締役2名
●公募・売出価格
・1,550円
●初値
・4,500円 (公募価格比+2,950円 +190.3%)

 

 

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