記事一覧

Vol.78【IPO事例】ビートレンド株式会社

  • 2020.12.26

新規IPO

2020年12月17日にビートレンド株式会社(情報・通信業)
東京証券取引所マザーズに上場いたしました。

今回は同社から公表されている資料にもとづき、
IPOの状況を確認してみたいと思います。

 

●上場時資料

■成長可能性に関する説明資料

 https://ssl4.eir-parts.net/doc/4020/tdnet/1913853/00.pdf

■東京証券取引所マザーズへの上場に伴う当社決算情報等のお知らせ

 https://ssl4.eir-parts.net/doc/4020/tdnet/1913852/00.pdf

■新規上場申請のための有価証券報告書(Ⅰの部)

 https://www.jpx.co.jp/listing/stocks/new/nlsgeu0000053byb-att/12BBETREND-1s.pdf

 

成長可能性に関する説明資料

■会社概要

まずは、会社概要についてです。

会社の基本情報の次に
「マネジメントチーム」
「経営理念」
について資料を用意して説明しています。

 

■事業概況

次に事業・サービスの紹介のパートになります。

具体対的は、
「時代と共に“進化し続ける” 顧客管理サービス『betrend』」
「事業の紹介」
「『betrend』のスマートCRMサービス 導入事例」
「スマートCRMサービスの特⾧」
「顧客管理サービス 『betrend』の2つのプラン」
「スマートCRMサービスの強み(会員行動履歴情報)」
「『betrend』の対象業種」
「『betrend』のスマートCRMサービス ご利用イメージ」
という資料をもとに説明がされています。

 

導入事例やサービス提供料金、
サービスの対象となる業種といった情報を
ビジュアルとともに紹介することで、
利用されるイメージを見える化しています。

 

■事業の強み

そして、次に事業の強みを説明するパートですが、
財務数値やKPIのような定量的な情報で伝えていることから、
実際の業績とのつながりがわかりやすくなっています。

具体的には、
「売上高/純利益の推移」
「サービス別売上高の推移」
「コスト構造に関する分析」
「『betrend』のSaaSモデル : カスタマイズサービス」
「リカーリング比率 (解約されない限り翌期も継続的に売上高となる性質の売上高)」
「スマートCRMサービス │ 契約企業数、利用会員数とARRの推移」
「メールマーケティングサービス │ 契約企業数、利用会員数とARRの推移」
「チャーンレート (金額ベースの解約率)」
「『betrend』の強固なセキュリティ」
といった資料で説明をしています。

 

単純な売上や利益の推移だけでなく、
コスト構造や、売上の構造が見える化されたうえで、
重要指標(たとえば、リカーリング比率、チャーンレート)について
きちんと示されているので、とてもわかりやすい印象です。

 

■成⾧戦略と展望

そして最後は成長戦略です。

具体的には、
「積み上げ型の収益モデル」
「スマートCRMサービスの売り上げ成⾧計算式」
「スマートCRMのビジネスモデルと他サービスの比較」
「売上高・ARRの最大化に向けた取り組み : 販売社数の最大化」
「売上高・ARRの最大化に向けた取り組み : 会員数の最大化」
「売上高・ARRの最大化に向けた取り組み : その他サービス収益の最大化」
「コロナ対策:コロナ禍での営業戦略の積極的な変化対応」
「顧客管理サービス 『betrend』のターゲット業界と市場規模」
といった資料を用いて説明をしています。

 

売上高を構成する要素である
販売者数・会員数を最大化する戦略や
ターゲット業界や市場規模についての説明をしていて、
全体の方向性はイメージできますが、
一方で、定量的な説明が少ない気はしました。

 

財務数値の特徴

まずはB/Sについては以下のような感じです。

 

とくに特徴的な点はありませんが、
資産についてソフトウェアが少し大きいくらいでしょうか。

また、負債もとくに目立ったものも無く、
借入も預金より少ないですので実質無借金経営です。

 

自己資本比率も70%近くになっており、
堅調に事業を実施してきたことが推測されます。

 

次にP/Lの方はどうでしょうか。

粗利率が60%弱、営業利益率が10%弱、といった感じです。
利益も計上されており堅調な業績だと思いますが、
やはり、今後の売上拡大ペースが気になるところです。

 

資本政策

■特別利害関係者等の株式等の移動状況

有価証券上場規程施行規則第253条の規定

東京証券取引所マザーズへの上場にあたり、
特別利害関係者等が、新規上場申請日の直前事業年度の末日から起算して
2年前の日(2018年1月1日)から上場日の前日までの期間において、
発行する株式又は新株予約権の譲受け又は譲渡を行っている場合には、
「新規上場申請のための有価証券報告書(Ⅰの部)」に記載することとされています

2018年1月
・取締役⇒代表者個人(理由:代表取締役からの申し出による
・35,000円×300株(割合:約2.9%)
・その後の株式分割を考慮すると「350円×30,000株」となる
・株価は純資産方式により算出した価格を総合的に勘案して協議のうえ決定
・約2年後には上場を果たし、株価(公募価格)は2,800円となっている

2018年2月
・元従業員⇒代表者個人(理由:所有者の事情による
・50,000円×20株(割合:約0.2%)
・その後の株式分割を考慮すると「500円×2,000株」となる
・株価は純資産方式により算出した価格を総合的に勘案して協議のうえ決定
・約2年後には上場を果たし、株価(公募価格)は2,800円となっている
・1ヵ月前の売買株価より高い金額での売買となっている

2018年3月
・取締役⇒取締役2名(理由:経営参画への意識向上
・35,000円×20株(割合:約0.2%)
・その後の株式分割を考慮すると「350円×2,000株」となる
・株価は純資産方式により算出した価格を総合的に勘案して協議のうえ決定
・約2年後には上場を果たし、株価(公募価格)は2,800円となっている。
・1ヵ月前の売買株価より安い金額での売買となっている

2020年10月
・取締役2名(理由:新株予約権の権利行使
・1,500株(割合:約0.1%)

 

■第三者割当等の概況

以下の日程で、取締役、従業員へ新株予約権を発行されており、
発行価格はすべて「35,000円(分割後ベース:350円)」となっている
・2018年4月23日:371株(分割後ベース:37,100株)
・2018年12月25日:29株(分割後ベース:2,900株)
・2019年4月18日:46株(分割後ベース:4,600株)
・2020年4月27日:1,300株

 

■株主の状況

・第1位:取締役個人 521,500株(51.25%)
・第2位:代表者個人  224,400株(22.05%)
・第3位:富士フイルム株式会社  92,400株(9.08%)

 

■新株予約権の状況

・68,700株
・6.75%

 

■資産管理会社

・該当なし

 

■総括

代表取締役ではなく、別の取締役の方が持株数が多く筆頭株主になっている
・筆頭株主である取締役より、代表取締役や他の取締役への株式譲渡が行われている
 ⇒おそらく設立時に代表者ではなく、当該取締役の方がお金を出して会社設立した背景があると推測

※詳細は、以下の「新規上場申請のための有価証券報告書(Ⅰの部)」参照
 https://www.jpx.co.jp/listing/stocks/new/nlsgeu0000053byb-att/12BBETREND-1s.pdf

 

監査報酬

上場直前の監査報酬の状況は以下のような感じです。

直前期の監査報酬で2,000万円程度となっており、
他社と比べて若干高めといった印象でしょうか。

 

新規上場株価情報

●事業内容
・飲食店・小売店等を展開する企業向け顧客情報管理ツールである
 CRM ソフトウェアプラットフォーム「betrend」の提供・運営
●業種別分類
・情報・通信業
●株主名簿管理人
・みずほ信託銀行㈱
●監査人
・EY 新日本有限責任監査法人
●幹事取引参加者
・みずほ証券㈱
●発行済株式総数
・948,800 株(2020 年 11 月 12 日現在)
●上場時発行済株式総数
・1,028,800 株
 (注1)公募分を含む
 (注2)新株予約権の権利行使により増加する可能性がある。
●公募・売出しの別
・公募:80,000株
・売出し(引受人の買取引受による売出し)84,500株
・売出し(オーバーアロットメントによる売出し)24,600 株
●売出株放出元
・代表者個人
・富士フイルム㈱
・㈱USEN-NEXT HOLDINGS
・取締役個人
・㈱エスネットワークス
●公募・売出価格
・2,800円
●初値
・10,010円 (公募価格比+7,210円 +257.5%)

 

 

関連記事

最近の投稿