目次
新規IPO
2020年12月15日に株式会社スタメン(情報・通信業)が
東京証券取引所マザーズに上場いたしました。
今回は同社から公表されている資料にもとづき、
IPOの状況を確認してみたいと思います。
上場時資料
■成長可能性に関する説明資料
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120201215434902.pdf
■東京証券取引所マザーズへの上場に伴う当社決算情報等のお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120201215434887.pdf
■新規上場申請のための有価証券報告書(Ⅰの部)
https://www.jpx.co.jp/listing/stocks/new/nlsgeu00000538zq-att/12Stamen-1s.pdf
成長可能性に関する説明資料
■経営理念
まず、同社の経営理念である
「一人でも多くの人に、 感動を届け、幸せを広める。」
というフレーズから資料は始まっています。
■事業概要
次に事業概要を説明するパートですが、
「従業員エンゲージメントとは」
「従業員満足度との違い」
「エンゲージメント向上がもたらす効果」
「世界各国のエンゲージメントスコア」
という4枚の資料が用意されています。
この資料をもとに、
同社の事業の根幹にある「従業員エンゲージメント」の
必要性や重要性を説明するところから入っています。
その次に、
「サービスの概要」
「TUNAGで実現できる世界」
「エンゲージメント向上に必要な要素」
という3枚の資料で、同社のサービス概要の説明がされています。
さらに続けて、
「TUNAGのソリューション(Step.1) エンゲージメントサーベイ」
「TUNAGのソリューション(Step.2) 組織改善コンサルティング」
「TUNAGのソリューション(Step.3) 社内制度運用クラウド」
とう3枚の資料で、
具体的な同社のサービスの特徴の説明という構成になっています
■財務ハイライト
同社のサービス概要の説明が一通り終わった後に、
財務数値の概要について説明があります。
具体的には、
「財務ハイライト:売上高の推移」
「財務ハイライト:営業損益の推移」
の2枚の資料で、直近3年程度の推移を
グラフ等を利用して説明をされています。
■事業の特徴と強み
事業概要や具体的なサービスの説明に続いて、
同社の事業の強み(競争優位)について補足説明がされています。
3C分析でいうところの、
自社(Company)と競合他社(Competitor)についての
説明に該当するパートといえます。
具体的には、
「市場黎明期からハイグロースカンパニーとして安定成長を継続」
「安定性と成長性を両立するサブスクリプション型ビジネス」
「多様な顧客群からストック収益を蓄積し成長中」
「競合に対して優位性を持つ一気通貫したソリューション」
「HR Tech領域における優位なポジショニング」
といった項目を上げ、それぞれ説明をしています。
とくにサブスクリプション型ストックビジネスである点は、
強調をされている印象です。
■業界動向
さらに、同社のサービスが求められる背景や
業界の動向について説明がされています。
3C分析でいうところの
顧客・市場(Customer)に該当するパートといえます。
具体的には、
「労働人口の減少によって、一層深刻化する人手不足」
「人材獲得競争の激化と、加速する雇用の流動化」
「B2B SaaSの市場動向」
「人事領域における従業員エンゲージメントへの関心の高まり」
ということで、説明が加えられています。
■成長戦略
以上の事業概要等をふまえ、
最後に「成長戦略」について説明がされています。
成長戦略の概要としては、
「拡大余地が大きく広がっている国内企業向けのエンゲージメント市場で
着実に事業規模を拡大しつつ、
海外企業や企業以外のエンゲージメント領域にも、
データとノウハウを生かして事業拡張を行っていく」
とされています。
具体的には、
「成長余地の多い国内市場に向けた、顧客基盤のさらなる拡大」
「国内市場における契約企業数の拡大戦略」
「国内市場における受注単価の向上戦略」
「東南アジア諸国を中心とした海外展開」
「企業以外のエンゲージメント市場へのサービス展開」
「AIの技術開発やビッグデータの活用」
という切り口で説明が加えられています。
売上高は「単価」×「客数」と表現できると思いますが、
とくに「客数」拡大の戦略についての説明が多い印象です。
財務数値の特徴
経営数値の過去の推移は以下の通りです。
設立から短期間での上場ということで、これはすごいですね。
売上は順調に拡大していますが、
利益の方はまだ黒字までは至っていないというのが上場直近の状況ですね。
但し、推移の状況や、ビジネスモデルを考えると、
売上がこのペースで拡大していき、
いったん黒字転換をして損益分岐点を超えると、
かなりの利益を出していくビジネスモデルと思われます。
ちなみに、財務諸表は以下のような感じです。
最近の、WEBサービス系の会社の特徴ですが、
B/Sにほとんど資産の計上がなく、身軽で、かつ、
損益の方は、売上総利益率が比較的高い、という感じです。
資本政策
■特別利害関係者等の株式等の移動状況
2019年7月
・取締役⇒取締役が代表の会社(理由:所有者の売却意向による)
・10,413円×200株(割合:約2.5%)
・その後の株式分割を考慮すると「約10円×200,000株」となる
・株価は純資産価額方式により算出した価格を総合的に勘案し、協議のうえ決定
・1年半後には上場を果たし、株価(公募価格)は880円であるため、
上記の譲渡時時価と比べると、1年半で約80倍の株価になっている
2020年7月
・代表者個人⇒取締役4名(理由:役員に対するインセンティブ付与のため)
・4名合計で107株を贈与(割合:約1.4%)
・その後の株式分割を考慮すると107,000株となる
・5ヵ月後の上場時の公募価格が880円であることを考えると、
総額で94,160,000円を贈与したことになる
2020年7月
・代表者個人⇒社員4名(理由:経営参画への意識向上のため)
・4名合計で26株を贈与(割合:約0.3%)
・その後の株式分割を考慮すると26,000株となる
・5ヵ月後の上場時の公募価格が880円であることを考えると、
総額で22,880,000円を贈与したことになる
2020年7月
・代表者個人⇒監査役1名(理由:企業統治向上のため)
・3株を贈与(割合:約0.0%)
・その後の株式分割を考慮すると3,000株となる
・5ヵ月後の上場時の公募価格が880円であることを考えると、
総額で2,640,000円を贈与したことになる
■第三者割当等の概況
以下の日程で、取締役、従業員へ新株予約権を発行されており、
発行価格はすべて「200,000円(分割後ベース:200円)」となっている
・2018年3月26日:190株(分割後ベース:190,000株)
・2018年8月6日:45株(分割後ベース:45,000株)
・2018年12月17日:55株(分割後ベース:55,000株)
・2019年4月22日:50株(分割後ベース:50,000株)
・2019年8月13日:50株(分割後ベース:50,000株)
・2020年7月13日:50株(分割後ベース:50,000株)
■株主の状況
・第1位:代表者個人 4,265,000株(54.39%)
・第2位:ジャフコSV5共有投資事業有限責 任組合 960,000株(12.24%)
・第3位:役員が所有する会社 600,000株(7.65%)
■新株予約権
・417,000株
・5.32%
■資産管理会社
・おそらく株主順位第3位の会社が代表者の資産管理会社になる
■総括
・VCが入っているものの、上場時まで代表者が約2/3を確保している
・上場直前に、役員や社員へ、代表者個人の株式を贈与している点は特徴的
・代表者の出身会社であるエイチームも大株主に名を連ねている
・監査役へも少額ながら贈与で代表者が株式を渡している
※詳細は、以下の「新規上場申請のための有価証券報告書(Ⅰの部)」参照
https://www.jpx.co.jp/listing/stocks/new/nlsgeu00000538zq-att/12Stamen-1s.pdf
監査報酬
上場直前の監査報酬の状況は以下のような感じです。
直前期の監査報酬で1300万円とのことなので、
IPO時点では、もう少し高くなっていると思われます。
新規上場株価情報
●事業内容
・エンゲージメント経営プラットフォーム「TUNAG」の開発及び提供等
●業種別分類
・情報・通信業
●株主名簿管理人
・三菱UFJ信託銀行㈱
●監査人
・有限責任 あずさ監査法人
●幹事取引参加者
・大和証券㈱
●発行済株式総数
・7,425,000 株(2020 年 11 月 11 日現在)
●上場時発行済株式総数
・8,425,000 株
(注1)公募分を含む
(注2)新株予約権の権利行使により増加する可能性がある。
●公募・売出しの別
・公募:1,000,000株
・売出し(引受人の買取引受による売出し)600,000株
・売出し(オーバーアロットメントによる売出し) 240,000株
●売出株放出元
・代表者個人
・中京テレビ放送㈱
●公募・売出価格
・880円
●初値
・2,051円(公募価格比+1,171円 +133.1%)