【IPO成長戦略】トヨクモ株式会社

資料構成

2020年9月24日にトヨクモ株式会社
東京証券取引所マザーズに上場いたしました。

それとあわせて、同社から
「成長可能性に関する説明資料」
が公表されていますので、
今回は同内容について確認をしながら、
IPOの背景や状況をレビューしてみたいと思います。

まず「成長可能性に関する説明資料」の資料ですが、
以下のような資料構成になっていました。

1. 会社概要
(1) 企業理念・経営理念・社名の由来
(2) ミッション
(3) 会社概要
(4) 代表取締役社長プロフィール
(5) 沿革
(6) わたしたちのこだわり
(7) 成長サイクル

 

2. 業績、主要指標
(1) 売上高、有償契約数の成長推移
(2) 広告宣伝費の戦略的投資
(3) 低いチャーンレート

 

3. サービス内容
(1) 提供しているサービス
(2) ネットを主とする販売モデル
(3) ビジネスモデルの優位点
(4) 安否確認サービス
  ①BCPの必要性
  ②トヨクモ 安否確認サービス2とは
  ③トヨクモ 安否確認サービス2の特徴
  ④安否確認サービスの市場規模
(5) kintone連携サービス
  ①kintoneとは
  ②kintone連携サービスとは
  ③最近の活用例〜大阪府様
  ④ソフトウェアの市場規模

 

4. 当社の強み
(1) サブスクリプション型のビジネスモデル
(2) 効率的な経営体制

 

5. 今後の成長戦略
(1) 持続的なMRRの成長に関して
(2) MRR増加の戦略

ということで、
同説明資料の内容について、
以下でもう少し細かく見ていきたいと思います。

 

会社概要

まずは、同社の基本情報である
会社概要についての記載があります。

(1) 企業理念・経営理念・社名の由来

最初の「会社概要」のパートでは、
企業理念、経営理念・社名の由来についての
記載から始まっています。

社名の由来について
記載しているところは面白いですね。

 

最近テレビCMで「トヨクモ」の社名を
連呼しているのを見たのですが、
そのCMを見て「何の会社なのだろうか?」と思ったのですが、
会社名だけは頭に残っていました。

そして、タイムリーに
同社が上場をしたことを知り、
会社名と事業内容がつながりました。

 

ちなみに、社名の由来は、

天地開闢(てんちかいびゃく)のタイミングで、雲を創り出し、

農業ができるように大地に雨をもたらしたと言われる

豊雲野神(とよくもののかみ)のように、

全世界にクラウド(雲)を広げる希望をこめて

『トヨクモ株式会社』と命名しました。

 

と記載がありました。

(同社がクラウドの会社でることも意味がかけられているのですね)

 

私の中では、同社のことがインプットされましたし、
このような社名の由来から始めるスタイルも
興味をもってもらうという意味では良い感じですね。

 

(2) ミッション

次にミッションについて記載がされています。

内容としては「クラウド」を活用して、
IT初心者にも簡単に使ってもらえるような
「あったらいいな」と思えるサービスを提供していく、
といった感じのことが記載されています。

 

(3) 会社概要

次に会社概要として、
以下のような情報の記載があります。

・設立時期
・事業内容
・役員数
・社員数

社員数は33名と記載がありますので、
上場企業としては小規模な部類になると思います。

 

(4) 代表取締役社長プロフィール

そして代表者のプロフィールが記載されていますが、
ここでやっと「サイボウズ社」に関わりのある会社である、
ということがわかりました。

代表者は、サイボウズ出身で、
同社の取締役もされていたようです。

そのうえで、
サイボウズ社のスタートアップ子会社として、
独立する形で代表者がトヨクモ社を成長拡大させていった、
という流れのようです。

 

(5) 沿革

代表者のプロフィールに続けて
同社の沿革についても記載がありますが、
ここでも「サイボウズ社」とのつながりが強いことが、
とても伝わってきます。

 

サイボウズ社の100%子会社としてスタートしたトヨクモ社ですが、
最初のサービスとして「安否確認サービス」を
2011年12月に提供開始しています。

時期的には、東日本大震災の直後の時期ですので、
震災を受けてのサービス開発だったのかもしれません。

 

そして、2014年に、
「マネジメントバイアウトにより、独立した経営体制へ移行」
とありますので、このあたりからは、
上場を視野に入れていたのかもしれません。

たた、その後、kintone連携サービスを
次々とリリースしていることが沿革には記載があるので、
サイボウズ社とは良い形の連携が続いているのだと思います。

 

(6) わたしたちのこだわり

次に「わたしたちのこだわり」というタイトルで、
1ページを割いています。

そのこだわりとは、

・簡単便利なクラウドサービス
・トライアルモデルで低価格にサービスを提供
・効率性を重視
・少数精鋭

の4つのことです。

先に「ミッション」として説明はありましたが、
それよりは、こちらの「こだわり」の方がコンパクトにまとめられていて、
同社の思いが理解しやすい気がしました。

 

(7) 成長サイクル

そして会社概要の最後のパートとして、
「成長サイクル」というタイトルで、
同社の成長のサイクルが図示されています。

ここで示されている成長サイクルの図は、
上記の「わたしたちのこだわり」であげられていた項目と
連動しているような感じでまとめられています。

 

 

以上、ここまでが最初の「会社概要」のパートになります。

社名からでは何をしている会社かわりませんでしたが、
この「会社概要」のパートを確認するだけでも、
社名の由来からサービス内容まで、とてもよく理解ができました。

 

業績、主要指標

次に、業績や手票指標といった
定量的な情報の説明パートになっています。

どちらかというと、資料の前半は、
定性的な情報で会社概要やサービス概要を説明して、
資料の後半で定量情報を持ってくるパターンが一般的には多い気がしますが、
トヨクモ社の場合には、早速、定量情報のパートが出てきました。

 

(1) 売上高、有償契約数の成長推移

まずは、
「売上高」
「営業利益」
「有償契約数」
といった項目ついて、
5年程度の時系列がわかるような
シンプルな棒グラフで図での説明があります。

 

このページでは、
棒グラフによるビジュアル的な表現がほとんどで、
補足コメントもありません。

図だけでも状況はよくわかりますので、
あえて文言を入れていないパターンも
シンプルでわかりやすいですね。

当然ではありますが、
右肩上がりの棒グラフが表現されています。

 

(2) 広告宣伝費の戦略的投資

次に「広告宣伝にかけたコスト」と、
その同時時期の「営業利益」金額について、
過去5年程度の状況が図で示されています。

このパートも、ビジュアル的な表現がほとんどで、
言葉はあまり挿入されていませんので、
とてもシンプルですね。

 

(3) 低いチャーンレート

業績、主要指標といった
定量情報のパートの最後の資料として、
「チャーンレート」に関する説明ページが
1つ設けられています。

ちなみに、
チャーンレート(Churn Rate)とは、
「サービスにおける件数ベースの月次解約率を表す指標」
のことを指します。

 

クラウド、Saasサービスでは、
この「解約率」はとても重要な指標として、
よく注目されます。

やはりサブスク型で続くビジネスの場合、
解約率が高いか低いかによって、
売上だけでなく、利益率等も大きく変わってくると思います。

 

トヨクモ社の場合には、
売上や利益は拡大していることはすでに説明されていますが、
一方で、解約率は0.8%程度で安定しているとのことです。

 

 

以上までが「業績、主要な指標」についてのパートになりますが、
売上の拡大とあわせて解約率は安定していることを
シンプルに説明している流れになっていました。

また、広告宣伝費についても触れらていたことから、
同社にとって注目すべき指標は、
・売上と広告宣伝費
・売上とチャーンレート
といった感じになることが伝わってきました。

 

サービス内容

定量的な大まかな情報を説明した次のパートとして、
同社のサービス内容についての記載になります。

 

(1) 提供しているサービス

トヨクモ社のサービスについて、
大きく2つに分けて記載がされています。

その2つのサービスとは、

・安否確認サービス
・Kintone連携サービス

です。

どちらも初期費用が発生することなく
安価な定額サブスクリプションで提供されるサービスとして、
同社のサービスをコンパクトに紹介しています。

同社のサービスがシンプルに伝わってきますね。

 

(2) ネットを主とする販売モデル

次の、同社のサービスを
どのように販売していくかについての説明として
1ページを割いています。

マーケティング視点で、
「認知」「興味・関心」「行動」「契約」
の流れを説明していますが、
同社のサービスの販売方法について、
すぐに理解ができる資料となっています。

 

(3) ビジネスモデルの優位点

そして次に、
同社のサービスの優位性についての説明がされています。

同社の競争優位性、差別化要因として、
具体的には以下が挙げられています。

・サブスクリプション型のビジネスモデル
・平均月額単価15,000円の低価格サービス(全サービス平均)
・継続率99.2%程度の高い継続利用率
・50%を超える高い試用購入率(安否確認サービス)
・世界最大のクラウドサービス(Amazon Web Service)を利用し、
 利用状況に合わせた柔軟なシステム拡張が可能な可用性とコスト競争力の高さを実現

やはり、はやりの
「サブスクリプション」
という表現は使われていますが、
そのうえで、競争優位性としては「低価格」という
価格優位性を挙げています。

結果的に、ほぼ100%に近い継続率を
実現できている状況のようですので、
これは優位性があることの証拠といえるでしょう。

 

(4) 安否確認サービス

次に2つのサービスのうちの1つである
「安否確認サービス」
に絞った形で、その特徴について
5ページにわたって説明がされています。

ここでやっとサービス内容を
深堀していくような内容をもってきていますね。

 

①BCPの必要性

まず同社の安否確認サービスの前提にある
BCPの必要性についての説明があります。

ちなみに、BCPとは、
・自然災害、大火災、テロ攻撃などの緊急事態に遭遇した場合において
・事業資産の損害を最小限にとどめつつ
・中核となる事業の継続あるいは早期復旧を可能とするために
・平常時に行うべき活動や緊急時の事業継続のための方法・手段を取り決めておく計画
のことです。

 

②トヨクモ 安否確認サービス2とは

BCPの必要性を説明した次として、
トヨクモ社のサービスである「安否確認サービス」の
説明がされています。

ここのページでは、サービスの概要とともに、
価格面の優位性をアピールしているような印象です。

初期費用や追加費用といったものがかからず、
手軽に利用できることが説明されています。

 

③トヨクモ 安否確認サービス2の特徴

次に、同社の安否家訓んサービスの特徴として、
2ページにわたって説明がされていますが、
説明の軸としては、

・機能面の説明
・実績面の説明

が、1ページずつされています。

 

具体的には、
・1800社、90万ユーザーが利用
・5万ユーザー規模のエンタープライズ企業にも対応
・実際に導入している有名企業の名称
といった定量的・具体的な説明がされています。

サービスの特徴を説明するうえで、
機能面でのアピールと、実績面でのアピールという2軸は、
やはりどの会社でも用いている印象ですね。

 

④安否確認サービスの市場規模

最後に、同社のサービスについての
市場規模について説明をもってきています。

ここでは、現在の市場規模より
潜在的な市場規模はより大きいことを
研究機関等の資料を参考に定量的に示しています。

市場規模に対して、
トヨクモ社のサービスを普及していける余地が
大きく残っていることを示すことで、
成長可能性を表現している感じでしょうか。

 

(5) kintone連携サービス

次に、トヨクモ社の2大サービスのうちの
もう1つのサービスである
「kintone連携サービス」
についての説明がされています。

内容は以下の通りです。

①kintoneとは

まず最初に「kintone」の説明からです。

ちなみに、kintoneについて以下のような説明があります。

サイボウズ株式会社が提供するクラウドサービスで、
顧客管理や帳票 管理、交通費申請、社内FAQといった
業務アプリをプログラミングスキルがなくても開発できるプラットフォーム

最近は、多くのところで
「kintone」
という単語は聞くようになってきました。

おそらく、今後、「kintone」自体の利用が増えていくと思われますので、
それに応じてトヨクモ社の「kintone連携サービス」も
拡大していくという感じでしょうか。

 

②kintone連携サービスとは

次に、同社のサービスである
「kintone連携サービス」について、
より詳細な説明をされています。

私自身が、まだ「kintone」に詳しくないので、
イメージが伝わってこない面があるのですが、
このパートでも、やはり「kintone」の良さを
説明しているという印象が強いです。

おそらく「kintone」のことを伝えることで、
その連携サービスの位置づけや可能性を
説明することにつながるということになるのだと思います。

 

③最近の活用例〜大阪府様

ここまでの資料では、
「kintone」に詳しくない人にとっては、
トヨクモ社の「kintone連携サービス」についても
少しわかりづらい状況だとも思われますが、
そこを補足する位置づけとして「最近の活用例」が紹介されています。

 

大阪府という公的な機関の
コロナウィルス対応に関する管理システムについての
活用事例が紹介されています。

意識的にタイムリーな事例をもってきていると思われます。

 

そういえば話はそれますが、
先日の「カンブリア宮殿」でサイボウズ社が取り上げられていた際に、
このコロナウィルス対応管理システムについて紹介されていた気がします。

クラウド環境が普及していく中で
今後もいろいろ活用の場面が増えていきそうですね。

 

④ソフトウェアの市場規模

そして、「kintone連携サービス」についても
最後に市場規模についての説明がありますが、
こちらは「ソフトウェア」の市場規模で説明をしています。

具体的には、
「パッケージ型 or Saas型」
という比較で市場規模について図を使って説明をしています。

 

当然ですが、
市場規模が拡大していくイメージとして説明はされていますが、
そのなかでも「Saas」の市場規模の方が、より拡大していくことが説明されていて、
こちらが、同社の「kintone連携サービス」に密接に関連する、
というストーリーとなります。

ただ、この「kintone連携サービス」の方は、
サイボウズ社のサービス展開・拡大に依存する面もあり、
トヨクモ社としての成長可能性をどう考えるかという点では、
少しインパクトが薄い印象を個人的には感じました。

 

当社の強み

次のパートとして、
「トヨクモ社の強み」
について説明がされています。

具体的には、
・サブスクリプション型のビジネスモデル
・効率的な経営体制
という2つの側面から説明をされています。

 

(1) サブスクリプション型のビジネスモデル

まず、強みとしては、
「サブスクリプション型のビジネスモデル」
を挙げています。

サブスクリプションは、最近のトレンドなので、
トヨクモ社特有というわけではないとは思いますが、
きちんと「サブスクリプション」が確立できていることは、
安定成長の基盤ができているという点で
強みの1つと言えるでしょう。

 

そのうえで、

・高い成長率(CAGR:55.8%)
・高い継続率(99.2%)

という状況ですので、きちんと実績が証明されています。

 

また、同社のサービスが
「BtoB型クラウドサービスの提供」
であることも強みの1つとして挙げられています。

企業向けのサービスを
継続的に提供できるサービスということで、
これは、安定成長の要素になりますね。

 

(2) 効率的な経営体制

次に「経営体制」についても
強みとして説明をされています。

挙げているのは、以下の3点です。

・お客様自身での設定・構築を可能にする、簡単便利なクラウドサービス
・クラウドサービスのみの製品開発、開発の内製化、AWSの利用
・有力な販売パートナーによる拡販戦略

 

説明内容を端的に解釈すると、
・効率的な営業
・効率的な製品開発
・シンプルなサービス
ということを実現できるビジネスモデルということだと思います。

このことが意味することは、
最低限のコストで、売上成長を実現させ、
かつ、利益率の高く保てる、
ということになのではないかと思います。

 

今後の成長戦略

最後のパートとして、
「今後の成長戦略」
についての説明があります。

効率的な経営基盤が確立されていることは
これまでのパートで伝わってきてたのですが、
今後の成長戦略をどのように見ているのでしょうか?

確認をしてみたいと思います。

(1) 持続的なMRRの成長に関して

まず、大前提として、

重要指標であるMRRを
成長させていくことを基本方針としている

と宣言しています。

 

このMRRとは、
「Monthly Recurring Revenue」
の略語で「月額計上収益」とのことです。

具体的には、
①新規MRRを伸長させる
②追加のMRRを伸長させる
③解約のMRRを下げていく
ということで、
持続的なMRRの成長を図っていくとのことです。

つまり、
「MRRの純増(①+②-③)=成長」
と整理をして、
この①②③を管理していくということですね。

 

Saas型ビジネスの基本的な考え方だとは思いますが、
同社のビジネスモデルを反映した目標設定といえるでしょう。

 

(2) MRR増加の戦略

そして、最後に
①新規MRRを伸長させる
②追加のMRRを伸長させる
③解約のMRRを下げていく
について、具体的にどのような活動をしていくかについて、
簡単にまとめられています。

 

資料の中では、この3つの方針について、
それぞれ具体的にどのような活動をしていくかが明確に記載しており、
シンプルでわかりやすい印象です。

このシンプルさというのはとても重要です。

 

外部の関係者にとってもわかりやすいというメリットもありますが、
何より、働いている社員にとって、
目指す方向がシンプルであるほど実行力が高まり、
目標達成の確立が上がると思いますので。

 

まとめ

ということで、今回は、
2020年9月24日に新規上場した「トヨクモ」の分析でした。

同社の特徴と思われる、
・少数精鋭
・効率的な経営体制
・Saas型ビジネスモデル
といった点がシンプルに伝わってくる資料でした。

このシンプルさや効率性を維持したまま、
どこまで拡大をしていけるのか、興味深いですね。

 

IPOを実現した会社ごとに、
それぞれのコーポレートストーリーがあり、
それに伴う業績数値があります。

IPOを意識している経営者は、
是非、資料の作り等も参考にしながら、
自社のストーリー作りの参考にしていただければと思います。

参考引用元
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120200917493816.pdf

 

新規上場株価情報

●株主名簿管理人
・三菱UFJ信託銀行㈱
●監査人
・PwCあらた有限責任監査法人
●幹事取引参加者
・いちよし証券㈱
●発行済株式総数
・4,702,000 株(2020 年 8 月 19 日現在)
●上場時発行済株式総数
・5,002,000 株
(注1)公募分を含む
(注2)新株予約権の権利行使により増加する可能性がある
●公募・売出しの別
・公募:300,000株
・売出し(引受人の買取引受による売出し):200,000株
・売出し(オーバーアロットメントによる売出し): 50,000株
●売出株放出元
・サイボウズ㈱:200,000株
●公募・売出価格
・2,000円
●初値
・9,020円 (公募価格比+7,020円 +351.0%)