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Vol.74【IPO事例】株式会社Fast Fitness Japan

  • 2020.12.20

新規IPO

2020年12月15日に株式会社Fast Fitness Japan(サービス業)
東京証券取引所マザーズに上場いたしました。

今回は同社から公表されている資料にもとづき、
IPOの状況を確認してみたいと思います。

 

上場時資料

■成長可能性に関する説明資料

 https://www.release.tdnet.info/inbs/140120201214434537.pdf

■東京証券取引所マザーズへの上場に伴う当社決算情報等のお知らせ

 https://www.release.tdnet.info/inbs/140120201214434514.pdf

■新規上場申請のための有価証券報告書(Ⅰの部)

 https://www.jpx.co.jp/listing/stocks/new/nlsgeu000005399h-att/12FastFitnessJapan-1s.pdf

 

成長可能性に関する説明資料

■会社概要

まず会社の概要として、
「グループ概要・事業概要」
「店舗ネットワーク」
「業界における当社の立ち位置」
「エニタイムフィットネスの特徴」
「収益モデル」
という5枚の資料で、会社の事業の説明をしています。

 

この5枚の資料において、
同社の規模感ポジショニング収益構造といった
ポイントになることは基本的に把握ができます。

 

■成長の歩み

次に、同社の成長の歩みとして
「沿革と店舗数の推移」
「出店スピード」
「オーナーにとって魅力的な事業モデル」
「グローバルなAnytime Fitness」
「安心・安全を提供するサービス業」
「社会貢献を実践する事業運営」
という6枚の資料で、これまでの沿革等を説明しています。

 

このパートでは、
どのように今のポジションを築き上げられてきたのか、
そのプロセスと手法、及び時間軸について理解ができます。

企業を理解するためには、
上記①のパートにおける現状の把握と合わせて、
なぜ、現状を構築できたかのプロセスについても把握できた方が、
会社の強さ(競争優位)や参入障壁等も理解ができます。

 

その点で、
上記①のパートでは「現在」の会社の概要の説明、
この②のパートでは「これまで」の会社の概要の説明、
という形でストーリーがつながっています。

 

■コロナ禍における事業展開

そして、次には、直近の大きな課題である
「コロナ」とどのように向き合っているかについての説明を
もってきています。

どの企業もこの問題は重要なテーマだと思います、
同社のようなフィットネスジムは、
コロナが直撃した業種でもあることから、
ここについては、より優先的な順位でしっかりと説明をしている印象です。

具体的には、
「Withコロナ、我々の取り組み①」
「Withコロナ、我々の取り組み②」
「強み・特徴の顕在化」
という3枚の資料で説明をされています。

一般的なコロナに対する不安を
払しょくする形で実績を説明するとともに、
逆に、同社の強みを強調する形にもっていっている点は、
きれいな流れだと感じました。

 

■成長戦略

ここまでのパートで、
「これまで」「現在」
について説明をしてきましたが、続いて、
「これから」
の視点として「成長戦略」についての記載があります。

具体的には、
「マーケットの規模・成長性」
「世界のフィットネス人口の傾向」
「出店戦略」
「今後も積極的な出店を継続」
「中長期的な展望・見通し」
「今後の見通し」
「投資計画」
「成長に影響を与える可能性のあるリスク要因」
といった資料で、あらゆる角度から説明をしています。

 

まずは、マーケットの分析ととして、
国内の市場規模について、同社のシェアがわかるような形で、
グラフを用いて、時系列で表現しています。

次に、グローバルな視点で、
日本のマーケットの可能性について、
他国のフィットネス参加率といった指標も用いながら、
今後の潜在的な可能性について説明をしています。

さらに、成長のポイントとなる、
「出店」に関する戦略についての説明が加えられています。

 

また、このような成長戦略のなかで、
どこに、どれくらいのお金を使用するかの投資計画が記載されている点は、
計画の具体性を伝えるうえでわかりやすいと感じます。

あわせて「リスク要因」もきちんと説明している点も、
投資する側からすると親切な情報と言えるでしょう。

 

■業績ハイライト

そして最後に業績についての説明となります。

具体的には、
「売上高・経常利益推移」
「業績ハイライト」
という2枚の資料を用いて、
直近5年の売上高、利益の推移や、
直近2年の財務諸表数値を説明しています。

 

財務数値の特徴

まずはB/Sです。

 

B/Sの特徴としては、
やはり施設型のビジネスであることから、
固定資産の割合が大きいです。

それと見合いになると思いますが、
借入金も多額にあります

借入金で出店コストを賄い、
出店後の投資回収により借入を返済していく、
という流れになると思いますが、
成長過程においては、固定資産と借入が両膨らみするのは、
仕方ないところでしょうか。

 

自己資本比率は20%を超えていますし、
利益剰余金も成長とともに積み上がっていますので、
大きな問題はないかと思います。

 

次にP/Lです。

 

売上高については伸び率も高く、
順調に拡大していることが見てとれます。

また、注目したいところとしては営業利益率です。
直近では約25%と、とても高水準です。
(かつ、前年から5%も比率を上げている点はすばらしいです)

IT系のビジネスではないことを考えると、
とてもビジネスモデル自体が強く、
付加価値が高く、かつ、効率的な経営を行っている印象です。

 

但し、直近の業績については、
以下の通り見通しを公表しております。

 

コロナの影響さえなければ、
より成長が加速していたのではないかと推測できる
財務数値と言えるでしょう。

 

資本政策

■特別利害関係者等の株式等の移動状況

有価証券上場規程施行規則第253条の規定

東京証券取引所マザーズへの上場にあたり、
特別利害関係者等が、新規上場申請日の直前事業年度の末日から起算して
2年前の日(2018年4月1日)から上場日の前日までの期間において、
発行する株式又は新株予約権の譲受け又は譲渡を行っている場合には、
「新規上場申請のための有価証券報告書(Ⅰの部)」に記載することとされています

2020年7月
・会長個人⇒特定有価証券信託受託者 野村信託銀行株式会社(理由:財産管理のため
・会長親族⇒特定有価証券信託受託者 野村信託銀行株式会社(理由:財産管理のため
・450,000株×2名(割合:4.38%×2=8.76%)
有価証券の保管および管理を目的として信託されたものとなる

 

■第三者割当等の概況

 該当なし

 

■株主の状況

・第1位:会長の資産管理会社 4,877,500株(47.43%)
・第2位:会長個人 1,647,500株(16.02%)
・第3位:RM Japan, LLC  925,000株(9.00%)

 

■新株予約権の状況

・1,033,000株
・10.05%

 

■資産管理会社

・会長の資産管理会社が筆頭株主となっており47%を保有している

 

■総括

会長個人や、その資産管理会社等をあわせて2/3を保有した状態で上場
・直前の株式の移動やストックオプション発行といったことも行っておらずシンプル

※詳細は、以下の「新規上場申請のための有価証券報告書(Ⅰの部)」参照
 https://www.jpx.co.jp/listing/stocks/new/nlsgeu000005399h-att/12FastFitnessJapan-1s.pdf

 

監査報酬

上場直前の監査報酬の状況は以下のような感じです。

 

直前期の監査報酬で3,000万円近くになっています。
他のIPO案件と比べて2倍以上の金額といえますが、
施設型であることや、規模感が大きいこと等の要因は考えられます。

 

新規上場株価情報

●事業内容
・24 時間型フィットネスクラブ “エニタイムフィットネス”の日本における
 マスターフランチャイジーとしてフランチャイズシステムを運営
●業種別分類
・サービス業
●株主名簿管理人
・三菱UFJ信託銀行㈱
●監査人
・PwCあらた有限責任監査法人
●幹事取引参加者
・野村證券㈱
●発行済株式総数
・9,250,000 株(2020 年11 月11 日現在)
●上場時発行済株式総数
・10,850,000 株
(注1)公募分を含む
(注2)新株予約権の権利行使により増加する可能性がある。
●公募・売出しの別
・公募:1,600,000株
・売出し(引受人の買取引受による売出し)200,000株
・売出し(オーバーアロットメントによる売出し) 270,000株
●売出株放出元
・代表者個人
・個人
●公募・売出価格
・2,250
●初値
・3,000円 (公募価格比+750円 +33.3%)

 

 

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