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Vol.62【IPO事例】株式会社カラダノート

  • 2020.10.31

新規IPO

2020年10月27日に株式会社カラダノート(情報・通信業)
東京証券取引所マザーズに上場いたしました。

今回は同社から公表されている資料にもとづき、
IPOの状況を確認してみたいと思います。

 

成長可能性に関する説明資料

■説明資料:https://www.release.tdnet.info/inbs/140120201026408772.pdf

1. 会社概要・ビジョン
・会社概要
・ビジョン
・コンセプト
・背景:日本が抱える様々な社会課題
・背景:出産~未就学の主要市場規模

2. 事業概要・当社の強み
・事業系統図
・既存事業の現収益モデル
・当社の強みサマリー
・強み①:世代を問わないコンテンツ開発力(3ページ分)
・強み②:膨大で良質なファミリーデータを保有(2ページ分)
・強み③:事業領域拡大のコアとなる送客力

3. 成長戦略
・ファミリーデータ数の拡大余地
・子の誕生データを生かしたマーケティング最適化
・リピートユーザー数の成長可能性
・ファミリーLTV向上のアップサイド
・短期的な打ち手と見通し
・中長期での領域別成長イメージ

4. 財務ハイライト
・業績推移

(ビジネスの概要)
「サービスの提供先」「お金をもらう先」が異なる形のビジネスモデルのようです
・収益の源泉になるのは「サービス提供顧客データ」ということになります
・成長戦略で記載されているように「データ」の活用をどれだけ拡大していけるかが、
 企業成長のポイントになりそうです

 

経営指標の推移

直近5年間の経営指標の推移は以下の通りなっています。

安定して成長している中で、
利益もしっかり計上している印象です。

今後、継続的に成長・拡大がしていけるかがカギになりそうです。

 

B/Sの特徴

まずはB/Sの特徴を見てみましょう。

■資産

(資産の概要)
流動資産の比率がとても高く、かなり健全な資産状況です
・直近の決算(2020年7月期)においては、
 流動資産の比率が約97%となっており信じられない水準です
・固定資産はかなり小さいです
・ソフト開発等でソフトウェア計上があると思いましたが、
 ほとんど計上がありません(≒今後費用化されるものも少ない)

 

■負債・純資産

(負債の概要)
・とくに気になる負債はありません
借入もなく、負債の比率も高くありません

(純資産の概要)
・直近の決算(2020年7月期)における純資産比率は、
 約72%となっており、この点でも健全です

 

P/Lの特徴

次にP/Lの特徴を見てみましょう。

(売上の概要)
・直近の決算(2020年7月期)の売上高は732百万円と
 まだまだ上場会社としては大きくない状況です
・直近の売上高の増加率が前期比で15%程度にとどまっている点が
 少しだけ寂しい状況ですが、過去の推移は以下のような感じです

 2018年7月期:479百万円
 2019年7月期:637百万円(前年比:約33%増加)
 2020年7月期:732百万円(前年比:約15%増加)
 2021年7月期(予測):856百万円(前年比:約17%増加)

(売上総利益の概要)
・直近の決算(2020年7月期)の売上総利益率が73%程度と、とても高水準です
・売上原価の内訳として、1/3程度は人件費です
・売上の増加比率ほどは、売上原価の増加比率は高くないので、
 今後の売上増加とともに売上総利益率は高まる可能性が高いです

(営業利益の概要)
・直近の決算(2020年7月期)の営業利益率が約17%であり、
 素晴らしい比率といえます
・販売費と管理費の割合は約50%ずつです
・売上の増加比率ほどは、販管費の増加比率は高くないので、
 今後の売上増加とともに営業利益率は高まる可能性が高いです

(P/L全体総括)
・利益率の高いビジネス構造を作り上げていると思います
課題は売上の成長率といえます
・売上が伸びるほど、利益率も改善する事業構造のため、
 今の事業構造のまま売上を伸ばすことができれば、
 利益成長率もかなり高いビジネスになると思われます

 

資本政策

■特別利害関係者等の株式等の移動状況

(2019年4月)
・社長⇒取締役(理由:経営参画意識向上のため)
・300円×4,000株×3名(割合:約0.1%×3名)
・株価はDCF法(ディスカウンテッド・キャッシュフロー法)により算出した価格

(2020年5月)
・役員⇒会社(理由:役員退任に伴う株式買取
・575円×4,000株(割合:約0.1%)
・株価はDCF法(ディスカウンテッド・キャッシュフロー法)により算出した価格

■第三者割当等の概況

(2019年4月1日)
・第1回新株予約権
・発行数:普通株式 281,100株
・発行価格:300円
・発行価額の総額:84,330,000円
・発行方法:2019年3月19日開催の臨時株主総会決議
・取得者:主に従業員、役員

(2020年6月1日)
・第2回新株予約権
・発行数:普通株式 67,500株
・発行価格:575円
・発行価額の総額:38,812,500円
・発行方法:2020年5月19日開催の臨時株主総会決議
・取得者:主に従業員、役員

■株主の状況

・第1位:代表者個人 3,848,000株(73.15%)
・第2位:個人 1,000,000株(19.01%)
・第3位:取締役 140,000株(2.66%)

■資産管理会社

・なし

■総括

・代表者個人が多くを保有したままの上場となります
・上場準備の過程で役員や社員へ株式譲渡やストックオプション付与をしていますが、
 それほど多くの割合ではありません
・上場時の公募価格が450円なのに対して、2020年5月や6月に株式移動、
 ストックオプション付与した価格が575円となっています

 

従業員の状況

従業員の状況は以下のようになっています。

まだまだ小規模ですが、均年齢も若く、平均給与も悪くない印象です。

 

監査報酬

上場直前の監査報酬の状況は以下のような感じです。

上場に向けて徐々に監査報酬が高くなっていますね。
直近では1,700万円/年間とのことです。

 

事業上及び財務上の対処すべき課題

以下の項目を事業上の課題として説明しています。

①認知度の向上とユーザー数の拡大
②継続的な事業の創出
③プロダクトやサービスの拡大
④ユーザーのアクセスログの蓄積、解析体制の強化
⑤優秀な人材の確保と育成
⑥M&Aの活用
⑦内部管理体制の強化
⑧システムのセキュリティ管理体制と安定化
⑨技術革新や事業環境の変化への対応

 

事業等のリスク

有価証券報告書のなかで、リスクとして考えている項目について、
以下の通り説明があります。

既に起きているものというよりは、今後の可能性としてのリスクとして、
記載がされている部分が多いのですが、
経営を行う上で、経営者としてはリスク認識における参考になるかと思います。

 

■事業環境に関するリスクについて

①インターネット関連市場について
②競合について
③技術革新等について
④検索エンジンへの対応について
⑤新型コロナウィルス感染症の拡大について

■事業内容に関するリスクについて

①事業領域の拡大について
②広告宣伝活動によるユーザー獲得について
③特定のクライアントへの依存について

■事業運営に関するリスクについて

①人材の確保及び育成について
②代表取締役への依存について

■コンプライアンスに関するリスクについて

①法的規制について
②個人情報保護について
③知的財産権について
④内部管理体制について
⑤情報セキュリティについて
⑥訴訟等について
⑦コンテンツの信頼性について
⑧風評被害について

■その他リスクについて

①配当政策について
②ストック・オプションによる株式価値希薄化について
③M&Aについて
④システムの安定性について
⑤災害紛争事故に関するリスク

 

新規上場株価情報

●事業内容
・妊娠育児ママ層向けのアプリ提供及び家族向けサービスを展開する企業へのプロモーション支援事業

●業種別分類
・情報・通信業

●株主名簿管理人
・三菱UFJ信託銀行㈱

●監査人
・有限責任監査法人トーマツ

●幹事取引参加者
・みずほ証券㈱

●発行済株式総数
・4,996,000 株(2020 年 9 月 23 日現在)

●上場時発行済株式総数
・5,996,000 株
 (注1)公募分を含む

●公募・売出しの別
・公募:1,000,000 株
・売出し(引受人の買取引受による売出し) 499,000 株
・売出し(オーバーアロットメントによる売出し) 224,800 株

●売出株放出元
・代表取締役

●公募・売出価格
・450円

●初値
・1,890円 (公募価格比+1,440円 +320.0%)

 

 

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