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Vol.87【IPO事例】株式会社東京通信

  • 2021.1.6

新規IPO

2020年12月24日に株式会社東京通信(サービス業)
東京証券取引所マザーズに上場いたしました。

今回は同社から公表されている資料にもとづき、
IPOの状況を確認してみたいと思います。

 

上場時資料

■成長可能性に関する説明資料

https://contents.xj-storage.jp/xcontents/AS04741/3de6c4ab/d5fd/470f/a246/eabf60338fed/140120201221437432.pdf

■東京証券取引所マザーズへの上場に伴う当社決算情報等のお知らせ

https://contents.xj-storage.jp/xcontents/AS04741/32ebeae2/e380/4968/8c83/e88b7385e89a/140120201221437431.pdf

■新規上場申請のための有価証券報告書(Ⅰの部)

https://www.jpx.co.jp/listing/stocks/new/nlsgeu00000542zq-att/12TokyoTsushin-1s.pdf

 

成長可能性に関する説明資料

■corporate profile

まず最初に、会社の全体像についての説明を、
「corporate profile」としてまとめています。

具体的には、以下の資料を用いて説明をされています。
「当社について」
「経営理念等」
「沿革」
「東京通信グループ」
「アプリ事業」
「アプリ事業/事業領域」
「アプリ事業/当社グループが運用するゲームアプリについて」
「広告代理事業」
「その他」
「業績推移」
「セグメント別業績推移/売上高」
「セグメント別業績推移/セグメント利益」

 

社名を聞くと、私の勝手なイメージで、
古い会社のように思っていましたが、
確認をしてみると、比較的最近に設立した会社とのことで、
この短期間で上場を果たしたことも含め、驚きました。

事業としては、
・アプリ事業
・広告代理事業
の2つがメインのようで、
それぞれの売上高と営業利益について資料では示しており、
事業構成がわかりやすくなっています。

 

■investment highlights

次に「インベストメント・ハイライト」として、
以下の5つの項目を記載しています。

———————————————–
①ITマーケティングを知りつくした人材
②カジュアルゲームアプリの圧倒的な製造数と運営実績
③大手顧客の信頼を得るアフィリエイト広告のオペレーション
④高い成長ポテンシャルを秘めたハイパーカジュアルゲームアプリ
⑤ITマーケティングの戦略特化で更なる拡大へ
———————————————–

それぞれの項目について、
数枚ずつ資料を用いて説明をされていますので、
以下に1つずつ確認をしてみたいと思います。

 

■①ITマーケティングを知りつくした人材

まずは人材に関する項目です。

具体的には、
「ヒトの判断」
「経営メンバー」
という2つの資料を用意しています。

 

ITというキーワードでも、
実際に判断をしていくのは「ヒト」であり、
この人材が重要である点を伝えています。

そして、経営メンバーのほとんどが、
サイバーエージェント出身であることを表現していています。

 

■②カジュアルゲームアプリの圧倒的な製造数と運営実績

次に、実績についての説明となります。

具体的には、
「アプリ事業の主な実績」
「競合について」
「アプリ事業:トップラインKPI」
といった資料をもとに実績を示しています。

 

私自身、あまり専門領域ではありませんが、
具体的な数値をもとに実績を表現されている点で、
イメージがわきやすい資料といえます。

 

■③大手顧客の信頼を得るアフィリエイト広告のオペレーション

そして「アフィリエイト広告」に関しては、
大手顧客の信頼を得ている背景にある
オペレーションについて説明をしています。

 

■④高い成長ポテンシャルを秘めたハイパーカジュアルゲームアプリ

次に今後の成長可能性が高い領域として、
ハイパーカジュアルゲームアプリについて、
その説明と市場規模についての説明をしています。

具体的な市場規模の金額を示しながら、
ハイパーカジュアルゲームがモバイルゲーム市場全体で
一定の存在感があることを説明しています。

 

■⑤ITマーケティングの戦略特化で更なる拡大へ

ハイライトの最後として、
同社のITマーケティングに対するスタンスを表現しています。

具体的には、
「当社はアプリ企業ではない ITマーケティング企業である」
というフレーズとともに、
既存事業のビジネスモデルの転換や
競争力のある新規事業の創出・育成に
臆せず挑戦し続けていく方針であることを説明しています。

そして「全社成長戦略」として、
・グローバル戦略の強化
・AIを用いた予測分析の強化
・事業ポートフォリオの拡充
・人材の確保及び育成
を掲げ、成長していく方針とのことです。

 

■appendix

最後に補足として、以下の資料を用意しています。
内容としては「財務情報」「市場分析」といった感じです。

具体的には、財務情報としては、
「損益計算書の概要」
「連結貸借対照表の概要」
「連結キャッシュ・フロー計算書の概要」
の3枚の資料でB/S、P/L、C/Fを説明しています。

 

そして、市場分析としては、
「市場データ/国内スマートフォン普及率」
「市場データ/世界のスマホアプリダウンロード総数」
「市場データ/世界・日本のゲームアプリ市場」
「市場データ/世界・日本のゲームアプリ市場」
「市場データ/日本の広告費(インターネット広告費全体)」
「市場データ/日本の広告費(モバイル広告費)」
「市場データ/日本のアフィリエイト市場規模の動向」
「市場データ/世界の定額制動画配信市場規模」
といった資料で説明をしています。

最後に、以下の2つの資料で終わりとなっております。
「従業員の状況」
「事業等のリスク」

 

財務数値の特徴

まずはB/Sについては以下のような感じです。

 

資産については、それほど重いものはなく、
預金と売掛金で総資産の8割程度を占めていて、
流動性の高い構成と言えます。

また、負債の方もそれほど特徴的なものはなく、
自己資本比率が70%近くあり、
上場前の時点で健全な財務状態を保っている印象です。

 

次にP/Lの方はどうでしょうか。

 

売上は順調に拡大しており、
粗利率も非常に高いビジネスのようです。

但し、売上の拡大とともに、
販管費も拡大しており、
営業利益は伸びていない点が気になります。

 

販管費の内訳をみると、
広告宣伝費の金額が大きく、
売上伸びと同じくらい広告宣伝費が伸びていることから、
営業利益が横ばいになっていることがわかりました。

今後は、この広告宣伝費を
どれくらい効率的に投資できるかが重要な印象です。

 

但し、上場前で、営業利益率20%近く確保していて、
きちんと営業利益を出している点は、
素直に評価できると思います。

 

資本政策

■特別利害関係者等の株式等の移動状況

<有価証券上場規程施行規則第253条の規定>
東京証券取引所マザーズへの上場にあたり、
特別利害関係者等が、新規上場申請日の直前事業年度の末日から起算して
2年前の日(2018年1月1日)から上場日の前日までの期間において、
発行する株式又は新株予約権の譲受け又は譲渡を行っている場合には、
「新規上場申請のための有価証券報告書(Ⅰの部)」に記載することとされています。

2018年6月
・代表取締役個人⇒資産管理会社(理由:資産管理会社への移動
・86,476円×430株(割合:9.75%)
・株式分割後ベースだと「86円×430,000株」
・株価は純資産に基づき税理士の意見を斟酌し決定した価格
・約2年半後には上場を果たし、株価(公募価格)は1,250円(約15倍)となっている

2018年6月
・取締役個人⇒資産管理会社(理由:資産管理会社への移動
・86,476円×100株(割合:2.27%)
・株式分割後ベースだと「86円×100,000株」
・株価は純資産に基づき税理士の意見を斟酌し決定した価格
・約2年半後には上場を果たし、株価(公募価格)は1,250円(約15倍)となっている

2019年2月
・代表取締役個人⇒個人(理由:所有者の事情による
・3,488円×12,900株(割合:0.1%)
・株式分割後ベースだと「697円×64,500株」
・株価は第三者算定機関算定(類似会社比準方式)を基礎として当事者間で協議決定
・約2年後には上場を果たし、株価(公募価格)は1,250円(約2倍)となっている

2019年7月
・代表取締役個人⇒法人(理由:所有者の事情による
・4,000円×16,000株(割合:0.2%)
・株式分割後ベースだと「800円×80,000株」
・株価は第三者算定機関算定(類似会社比準方式)を基礎として当事者間で協議決定
・約1年半後には上場を果たし、株価(公募価格)は1,250円(約1.5倍)となっている

2019年11月
・代表取締役個人⇒VC(理由:所有者の事情による
・4,000円×12,500株(割合:0.1%)
・株式分割後ベースだと「800円×62,500株」
・株価は第三者算定機関算定(DCF方式及び類似会社比準方式)を基礎として当事者間で協議決定
・約1年後には上場を果たし、株価(公募価格)は1,250円(約1.5倍)となっている

 

■第三者割当等の概況

2018年11月
・第2回新株予約権
・発行数 :8,600株(分割後ベース:43,000株)
・発行価格:1,750円(分割後ベース:350円)
 ※第三者算定機関による算定(DCF方式及び類似会社比準方式)を総合的に勘案決定
・発行方法:2018年11月15日開催の臨時株主総会において決議
・対象者:従業員、社外協力者、子会社の従業員

2019年11月
・第3回新株予約権
・発行数 :8,557株(分割後ベース:42,785株)
・発行価格:4,000円(分割後ベース:800円)
 ※第三者算定機関による算定(DCF方式及び類似会社比準方式)を総合的に勘案決定
・発行方法:2019年11月29日開催の臨時株主総会において決議
・対象者:取締役、監査役、従業員、子会社の取締役

2020年3月
・普通株式
・発行数 :5,500株(分割後ベース:27,500株)
・発行価格:9,100円(分割後ベース:1,820円)
 ※第三者算定機関による算定(DCF方式及び類似会社比準方式)を総合的に勘案決定
・発行方法:2019年11月29日開催の臨時株主総会において決議
・対象者:みずほ成長支援第3号投資事業有限責任組合無限責任組合員みずほキャピタル株式会社
結果的に発行価格はIPO時の公募価格より高い価格になっている

 

■株主の状況

・第1位:代表取締役会長の資産管理会社 2,740,000株(62.15%)
・第2位:代表取締役社長の資産管理会社 430,000株(9.75%)
・第3位:代表取締役会長個人 413,000株(9.37%)

 

■新株予約権の状況

・80,910株
・1.84%

 

■資産管理会社

取締役は資産管理会社を保有し、株式の移動を事前に実施している

 

■総括

取締役が中心にほとんどの株式を保有したまま上場
資産管理会社が保有している割合も多く、節税条件も満たしている
・ストックオプションの発行割合も少ない
・基本的にVC等に頼ることなく、自社内でほぼ完結しているきれいな資本政策といえる
 ※詳細は、以下の「新規上場申請のための有価証券報告書(Ⅰの部)」参照
 https://www.jpx.co.jp/listing/stocks/new/nlsgeu00000542zq-att/12TokyoTsushin-1s.pdf

 

監査報酬

上場直前の監査報酬の状況は以下のような感じです。

直前期の監査報酬で1,900万円程度となっており、
他社と比べると若干高めといった印象です。
(おそらく連結決算があるからだと思われます)

 

新規上場株価情報

●事業内容
・アプリ事業、広告代理事業、その他
●業種別分類
・サービス業
●株主名簿管理人
・みずほ信託銀行㈱
●監査人
・有限責任監査法人トーマツ
●幹事取引参加者
・野村證券㈱
●発行済株式総数
・4,327,500 株(2020 年 11 月 19 日現在)
●上場時発行済株式総数
・4,937,500 株
(注1)公募分を含む
(注2)新株予約権の権利行使により増加する可能性がある。
●公募・売出しの別
・公募:610,000株
・売出し(引受人の買取引受による売出し)390,000株
・売出し(オーバーアロットメントによる売出し)150,000株
●売出株放出元
・代表者含む取締役3名
●公募・売出価格
・1,250円
●初値
・2,484円 (公募価格比+1,234円 +98.7%)

 

 

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