目次
新規IPO
2020年12月23日に株式会社交換できるくん(小売業)が
東京証券取引所マザーズに上場いたしました。
今回は同社から公表されている資料にもとづき、
IPOの状況を確認してみたいと思います。
上場時資料
■成長可能性に関する説明資料
■東京証券取引所マザーズへの上場に伴う当社決算情報等のお知らせ
■新規上場申請のための有価証券報告書(Ⅰの部)
https://www.jpx.co.jp/listing/stocks/new/nlsgeu00000542p9-att/12Koukandekirukun-1s.pdf
成長可能性に関する説明資料
■会社概要
まずは会社の全体説明からになります。
具体的には、以下の資料を用いて説明をされています。
「企業理念」
「会社情報」
「6.5兆円※規模のマーケットでIT革命を!」
「市場規模」
「売上高の推移」
「工事件数の推移」
「直近の業績推移」
まずは、
リフォーム工事に関する大きな市場規模について数値で示すとともに、
比較的IT化が遅れていそうな市場に対して
「6.5兆円※規模のマーケットでIT革命を!」
というフレーズで同社の特長を表現している印象です。
そのうえで、
上手く事業集約を進められたことで
業績が順調に拡大しているという実績を
グラフと数値をもとに説明をしています。
■事業の特長
次に、同社の事業の特長についての
説明パートになります。
資料としては、以下の2枚のみになっていますが、
シンプルに整理をされている印象です。
「事業概要」
「見積りから施工までを一気通貫で提供」
eコーマースといったITを駆使しながら、
見積りから施工までを一気通貫でサービス提供できる点が、
同社の特長であり、かつ、アナログな業界において
競争優位になるということを示しているといえます。
■当社の強み
次に同社の強みについて、
以下の3点を説明しているパートになります。
——————
①媒体力
②ネット完結型
③工事を専門特化
——————
まず「①媒体力」については
「ビッグデータに基づく成長サイクル」
という資料をもとに説明をしています。
交換工事メディアの成長サイクルを構築できていることで、
高い集客性と広告コストの削減を実現でき、
経営効率を高められているとのことです。
次に「②ネット完結型」という特徴については、
「事業ドメイン」
「チェンジ領域のお客様ニーズ」
「ネット完結型の見積りで交換工事のDX」
という3つの資料をもとに説明をしています。
まずリフォーム市場を細分化したうえで、
そのなかでも、同社の事業ドメインが、
専業で収益化を実現させることが難しい領域に特化していることで、
これまで空白だったマーケットを対象にしている点を説明しています。
そのうえで、
工事費もシンプルにパッケージ価格で提供する形のネット完結型にしているため、
ビジネス効率も良く、かつ、顧客のニーズにも合う、
といった強みがあるとのことです。
そして、「③工事を専門特化」という強みについては、
「施工の専門特化で生産性を向上」
「まとめ」
という2枚の資料で説明をしています。
私は専門領域ではないので詳しくないのですが、
上記の2枚の資料を見るだけで、同社の収益構造や他社との違いがわかり、
とてもよくまとまっている資料だと感じました。
是非、参考にしたい資料ですね。
■成長イメージ
次に「成長戦略」についてです。
具体的には、
「利益・コスト構造の成長イメージ」
「CRM機能の拡充とAI活用」
「テクノロジー投資 – CRMシステム[売上UP施策]」
「テクノロジー投資 – AI導入[利益率改善施策]」
「投資計画」
「成長イメージの総括」
という資料で説明をされています。
このうち、
「利益・コスト構造の成長イメージ」の資料では、
現状の利益・コスト構造が将来的にどのように変わっていくのかのイメージが
わかりやすく示されています。
また、テクノロジー要素をさらに強くしていく中で、
顧客ニーズをつかみつつ、生産工場も目指していくとのことです。
さらに、IPOで調達した資金の使途についても、
3ヵ年計画として明示していることもわかりやすくて良いと思いました。
■市場環境
そして最後に市場分析をもってきています。
具体的には
「リフォーム市場の規模拡大」
「EC市場の規模拡大」
「コロナショックでデジタルシフトが加速」
「リスク情報」
という4つの資料で説明をされています。
政府方針による
リフォーム市場の拡大についての説明とデジタルシフトの流れが、
同社のビジネスとマッチしていることと結び付けて説明しています。
財務数値の特徴
まずはB/Sについては以下のような感じです。
資産についてはそれほど重いものはなく、
身軽な印象です。
預金と売掛金で資産の6割を占めていますし、
流動性の高い資産といえます。
但し、在庫も保有しているようなので、
注意するとしたら、この在庫の回転率といった感じでしょうか。
(とはいえ、それほど気になる水準ではありませんが)
結局、資産のほとんどはキャッシュになりますし、
借入金の額より預金の額の方が大きいので、
実質無借金経営となっています。
次にP/Lの方はどうでしょうか。
直近において営業黒字化をしている点が
注目ポイントといえます。
粗利率は20%程度ですが、
売上の拡大とともに損益分岐点を超えてきた印象です。
なお、気になるコロナの影響ですが、
IPO申請期における半期の損益を見る限り、
営業損益は依然黒字になっています。
そう考えると、
コロナ影響はそこまで深刻ではない様子です。
資本政策
■特別利害関係者等の株式等の移動状況
<有価証券上場規程施行規則第253条の規定>
東京証券取引所マザーズへの上場にあたり、
特別利害関係者等が、新規上場申請日の直前事業年度の末日から起算して
2年前の日(2018年4月1日)から上場日の前日までの期間において、
発行する株式又は新株予約権の譲受け又は譲渡を行っている場合には、
「新規上場申請のための有価証券報告書(Ⅰの部)」に記載することとされています。
2019年3月
・代表者個人&親族1名⇒取引先1社(理由:事業上の関係強化のため)
・99,000円×300株(割合:約1.4%)
・その後の株式分割を考慮すると「990円×30,000株」となる
・株価はDCF法により算出された価格を参考に決定した価格
・約1年半後には上場を果たし、株価(公募価格)は2,050円(約2倍)となっている
■第三者割当等の概況
2019年3月
・第2回新株予約権
・発行数 :369株(分割後ベース:36,900株)
・発行価格:99,000円(分割後ベース:990円)
※安定株主及び取引先との関係強化を目的としたもので、DCF法での算出価格を総合的に勘案決定
・発行方法:2019年3月28日開催の臨時株主総会において付与決議
・対象者:取締役、従業員
2019年3月
・第3回新株予約権
・発行数 :143株(分割後ベース:14,300株)
・発行価格:99,000円(分割後ベース:990円)
※安定株主及び取引先との関係強化を目的としたもので、DCF法での算出価格を総合的に勘案決定
・発行方法:2019年3月28日開催の臨時株主総会において付与決議
・対象者:監査役、社外協力者
■株主の状況
・第1位:代表者個人の資産管理会社 1,000,000株(46.11%)
・第2位:代表者個人 615,000株(28.36%)
・第3位:代表者親族 255,000株(11.76%)
■新株予約権の状況
・98,500株
・4.54%
■資産管理会社
・代表者個人の資産管理会社として50%近く株式保有をしている
■総括
・基本的に、代表者及び親族をベースに株式を7割以上保有している。
・取引先を株主として連ねていることも含め、安定株主対策は十分と言える
・資産管理会社についても節税条件を満たすレベルで株式保有をしている
・全体的にきれいな資本政策といえる
・従業員へは主にストックオプションで手当てをしている
※詳細は、以下の「新規上場申請のための有価証券報告書(Ⅰの部)」参照
https://www.jpx.co.jp/listing/stocks/new/nlsgeu00000542p9-att/12Koukandekirukun-1s.pdf
監査報酬
上場直前の監査報酬の状況は以下のような感じです。
直前期の監査報酬で1,900万円程度となっており、
他社と比べると若干高めといった印象です。
新規上場株価情報
●事業内容
・インターネットを利用した住宅設備機器の販売
●業種別分類
・小売業
●株主名簿管理人
・三菱UFJ信託銀行㈱
●監査人
・EY 新日本有限責任監査法人
●幹事取引参加者
・㈱SBI証券
●発行済株式総数
・2,070,000 株(2020 年 11 月 19 日現在)
●上場時発行済株式総数
・2,170,000 株
(注1)公募分を含む
(注2)新株予約権の権利行使により増加する可能性がある。
●公募・売出しの別
・公募:100,000株
・売出し(引受人の買取引受による売出し)250,000株
・売出し(オーバーアロットメントによる売出し)52,500株
●売出株放出元
・代表者個人及び親族
●公募・売出価格
・2,050円
●初値
・4,615円 (公募価格比+2,565円 +125.1%)