目次
新規IPO
2020年12月17日にかっこ株式会社(情報・通信業)が
東京証券取引所マザーズに上場いたしました。
今回は同社から公表されている資料にもとづき、
IPOの状況を確認してみたいと思います。
上場時資料
■成長可能性に関する説明資料
https://ssl4.eir-parts.net/doc/4166/tdnet/1913863/00.pdf
■東京証券取引所マザーズへの上場に伴う当社決算情報等のお知らせ
https://ssl4.eir-parts.net/doc/4166/tdnet/1913864/00.pdf
■新規上場申請のための有価証券報告書(Ⅰの部)
https://www.jpx.co.jp/listing/stocks/new/nlsgeu0000053g80-att/12Cacco-1s.pdf
成長可能性に関する説明資料
■エグゼクティブサマリー(ビジネスモデルとサービス概要説明)
まず資料の最初に、
「エグゼクティブサマリー」
というパートを設けて、
会社のビジネスモデルやサービス概要の説明から入っています。
ビジュアル的に説明をされていますが、
サービスとしては、
「SaaS型 アルゴリズム提供」
という形でまとめる形で表現されています。
さらに次の資料として、
具体的に「SaaS型アルゴリズム提供事業」における
3つのサービスについて簡単にまとめています。
そのなかでも主力製品である1つのサービスに絞って、
より具体的な説明と収益推移の説明を
追加で1枚の資料を使って説明がされています。
そして、同社の強みについても
3つポイントにまとめて説明する形で、
導入部分を締めくくっています。
■会社概要
上記の「エグゼクティブサマリー」のパートの次からは、
いわゆる全体的に説明に入っていく形になっています。
まずは、会社概要として、
以下の資料を用意して一通りの説明をしている感じです。
「会社基礎情報」
「会社沿革」
「経営ビジョン」
「SaaS型アルゴリズム提供事業の3つのサービス」
「当社ビジネスの商流」
「当社の強み」
「循環成長モデル型のビジネス構造」
「売上高・営業利益の推移」
「中核の不正検知サービスが堅調に推移」
「P Lサマリー」
このうち、
「SaaS型アルゴリズム提供事業の3つのサービス」
「当社の強み」
の2枚の資料は、
上記①の「エグゼクティブサマリー」のパートで
用いられていた資料と同じものです。
■事業内容
次に事業内容の詳細説明のパートになります。
目に見えづらいサービスということもあり、
上手く伝える必要がある部分かと思いますが、
わかりやすいイラストを用いて丁寧に説明をしている印象です。
「ターゲットとなる主な業界」
「解決するE C領域の課題」
「仕組みと主な機能」
「提供シーン」
「主なクライアント」
「差別化要因と競争優位性が生まれる好循環」
「収益が伸びるメカニズム」
「ストック収益の推移」
顧客となるマーケットや
そこで生じている社会的な課題を説明したうえで、
同社サービスの提供シーンの説明につなげており、
目に見えづらいサービスでも身近に感じることができます。
そのうえで、収益が伸びるメカニズムとして、
収益構造の説明も「顧客数」「単価」「クロスセル」という項目に
因数分解したえうで説明をしていますので、
同社の財務数値へのつながりもわかりやすくなっている印象です。
■事業が属する市場の成長
そしてマーケット分析について、
改めて説明をするパートが用意されています。
具体的には、
「持続的な成長を続けるE C市場」
「後払い決済市場の急成長」
「増えるクレジットカード不正利用による被害額」
といった項目で説明がされています。
マーケット規模・状況と
同社サービスのつながりがあることは理解ができますが、
個人的には、より具体的な同社への数値インパクトを
上手く表現できていると、より今後の成長性について
理解が深まる気がしました。
■中長期の成長戦略
そして、最後に中長期の成長性について、
戦略が説明されています。
具体的には、
「既存領域の成長戦略」
「既存領域の成長戦略 | 概要」
「既存領域の成長戦略 | API連携によるクライアント層の拡大」
「将来のビジネス展開 | SaaS型アルゴリズム開発領域の拡大」
「将来のビジネス展開 | 東南アジアを起点にグローバル展開」
「エクイティ・ストーリー」
「主な事業リスクと対応策」
といった資料が用意されています。
まずは既存領域における成長戦略について説明がされています。
同社の事業規模を考えると、
既存領域でもまだまだ狙える市場が大きいことを
説明している感じです。
次に、将来的なビジネス展開として、
グローバル展開を意識しながら、
具体的に3つのマーケットへ参入意欲があることが
説明されています。
財務数値の特徴
まずはB/Sについては以下のような感じです。
最近の情報通信系のIPO会社の
特徴的なB/Sといった感じです。
重い資産はなく、多くは預金といった感じです。
そのうえで、今後増加が見込まれるとすると、
ソフトウェア(無形固定資産)といった感じでしょうか。
この無形の資産が、どこまで、
事業成長に寄与するかが重要な点になります。
また、負債もとくに目立ったものも無く、
借入も預金より少ないですので、
実質無借金経営といった感じです。
上場前には利益剰余金もプラスになっていますし、
自己資本比率も50%を軽く超えていますので、
健全なB/Sといった感じです。
次にP/Lの方はどうでしょうか。
粗利率が65%を超えており、
かつ営業利益率も10%を超えており、
この点では良い数値とも言えます。
但し、新規IPO企業としては、
売上の伸びが直近2年でほぼ無い点は、
寂しいところです。
B/Sで計上している新規のソフトウェアが
稼働してくると思われる今後において、
IPOで調達した資金も追加投資しながら、
どこまで事業スケールの大きくしていけるかどうか、
この点がポイントといった印象です。
資本政策
■特別利害関係者等の株式等の移動状況
2020年3月
・代表者個人⇒代表者個人の資産管理会社(理由:資産管理会社への譲渡)
・3,800円×155,000株(割合:約17.48%)
・その後の株式分割を考慮すると「1,266円×465,000株」となる
・移動価格は、DCF法により算出した価格に基づき、譲渡人と譲受人が協議のうえ決定
・約9ヵ月後には上場を果たし、株価(公募価格)2,020円であるため、
上記の譲渡時時価と比べると、9ヵ月で約1.5倍の株価になっている
■第三者割当等の概況
2018年3月
・第6回新株予約権
・発行数:13,863株
・発行価格:3,800円(分割後ベース:1,267円)
・発行価格算定方法:DCF法により算出した価格に基づき決定
・発行価額の総額:52,679,400円
・発行方法:2018年3月28日開催の定時株主総会決議
・発行対象者:取締役、従業員
2018年3月
・第7回新株予約権
・発行数:30,000株
・発行価格:3,910円(分割後ベース:1,377円)
・発行価格算定方法:DCF法により算出した価格に基づき決定
・発行価額の総額:114,000,000円
・発行方法:2018年3月28日開催の定時株主総会決議
・発行対象者:取締役
2020年7月
・第8回新株予約権
・発行数:10,652株
・発行価格:3,800円(分割後ベース:1,267円)
・発行価格算定方法:DCF法により算出した価格に基づき決定
・発行価額の総額:40,477,600円
・発行方法:2020年3月25日開催の定時株主総会決議
・発行対象者:取締役、従業員、社外協力者
■株主の状況
・第1位:代表者個人 523,176株(19.66%)
・第2位:代表者個人の資産管理会社 465,000株(17.48%)
・第3位:社員個人 247,803株(9.31%)
■新株予約権の状況
・323,484株
・12.16%
■資産管理会社
・株主順位第2位(17.48%)
・申請期に代表者個人から資産管理会社へ株式移動がある
■総括
・代表者が資産管理会社含め1/3以上を保有した状態で上場
・VCが30%弱保有している状況
※詳細は、以下の「新規上場申請のための有価証券報告書(Ⅰの部)」参照
https://www.jpx.co.jp/listing/stocks/new/nlsgeu0000053g80-att/12Cacco-1s.pdf
監査報酬
上場直前の監査報酬の状況は以下のような感じです。
直前期の監査報酬で1,200万円程度となっており、
他社と比べても平均的な水準とえいます。
新規上場株価情報
●事業内容
・データサイエンスの技術とノウハウをもとに、アルゴリズム及びソフトウェアを開発・提供する
ことで、企業の課題解決やチャレンジを支援する「SaaS型アルゴリズム提供事業」
●業種別分類
・情報・通信業
●株主名簿管理人
・三菱UFJ信託銀行㈱
●監査人
・仰星監査法人
●幹事取引参加者
・㈱SBI証券
●発行済株式総数
・2,337,081 株(2020 年 11 月 13 日現在)
●上場時発行済株式総数
・2,582,081 株
(注1)公募分を含む
(注2)新株予約権の権利行使により増加する可能性がある。
●公募・売出しの別
・公募:245,000株
・売出し(引受人の買取引受による売出し)5,000株
・売出し(オーバーアロットメントによる売出し)37,500株
●売出株放出元
・代表者個人
●公募・売出価格
・2,020
●初値
・7,890円 (公募価格比+5,870円 +290.6%)