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Vol.64【IPO事例】プレミアアンチエイジング株式会社

  • 2020.11.4

新規IPO

2020年10月28日にプレミアアンチエイジング株式会社(化学)
東京証券取引所マザーズに上場いたしました。

今回は同社から公表されている資料にもとづき、
IPOの状況を確認してみたいと思います。

 

成長可能性に関する説明資料

説明資料:https://www.release.tdnet.info/inbs/140120201029412155.pdf

1. 会社概要
・会社概要
・企業プロフィール
・アンチエイジングと通販の可能性に着目し創業
・DUOを主力とし、新ブランドを育成中
・創業11年目へ、そしてクレンジングカテゴリシェアNo.1へ
・DUOはクレンジングバームの周辺ラインナップを拡充中
・マーケティングと開発に注力し、製造は委託するファブレス経営
・コアバリューに特化し、高い生産性と機動性を実現
・通販のお客様拡大や経営改善により利益水準が大幅伸長

2. 市場環境
・スキンケアを主戦場とし、多様な製品を展開中
・化粧品市場を牽引するスキンケア市場
・毛穴・角質ケアの高まりによりクレンジング市場伸長
・コロナ禍によりEC志向が高まり、通販は第二の市場として存在感を増す

3. 特徴・強み
・安定した売上を確保することができるストック型のビジネスモデル
・約90%が定期販売(サブスクリプション方式)のストック型ビジネス
・ストック型ビジネス成立に必要な要因
・口コミサイトや女性誌においても高評価
・体制強化により新製品を逐次投入
・DtoCモデルによるお客様の声を反映した製品リリース
・デジタルマーケティングを活用して、成果報酬型の販促を展開
・“Uniqueness”とチャネルミックスによりブームを創出
・各種メディアにおいて大きな反響を獲得

4. 成長戦略
・通販では新規獲得のみならず、既存顧客へもアプローチ
・クロスセル促進による売上高・利益の改善を目指す
・卸への更なる注力により、拡販と収益性の大幅改善を狙う
・卸販売は通販と異なり、投資・回収期間がゼロ
・CMによる認知度向上が配荷先の急増に寄与してきた
・結果的に、卸の売上高は堅調に推移
・「時短需要」を捕捉し、CANADELは順調な滑り出し
・新CMでは米倉涼子を起用し、DUO成功の再来を狙う
・今期も新たに2ブランドを投入
・各種施策により広告宣伝費を圧縮し、CPOを低減する中でも獲得顧客数は増加中
・徹底した合理化による利益体質の改善
・香港、台湾、中国を中心に販路を拡大中

 

(総括)
・説明資料のなかで、この1~2年で、
 売上及び利益が急拡大していることが読み取れます
・コロナの影響もあり、通販市場が拡大していることも追い風のなか、
 広告宣伝効果も出てきたタイミングで、今後も成長が見込まれます
・また、同社が強みとして表現している内容で
 「約90%が定期販売(サブスクリプション方式)のストック型ビジネス」
 という点がありますが、このモデルが継続的に確立されていけば、
 健全かつ成長率、利益率も向上していくと思われます
・通販以外に、卸売りにも力を入れることで、効率的に
 事業拡大も目指していくという点も期待が持てます

 

経営指標の推移

直近5年間の経営指標の推移は以下の通りなっています。

とくにこの2年くらいの売上や利益の伸びが
驚異的な感じですね。

また、自己資本利益率が100%を超える状況は、
自己資本が少ない状況から、急激な事業拡大をして、
利益が出てきたことを表しています。

この勢いはどこまで続くのか、興味深いところです。

 

B/Sの特徴

まずは、B/Sの特徴を見てみましょう。

■資産

(資産の概要)
資産のほとんど流動資産になっています
・流動資産の比率が高いことは健全な状況ともいえますが、
 在庫や売掛金の増加率が高い状況のため、
 とくに在庫をきちんと売り切っていけるかが今後のポイントになりそうです
ファブレス経営ということで、固定資産を多くもたず、
 身軽な経営状況は望ましい状況と考えられます

■負債

(負債・純資産の概要)
・少し前までは自己資本が少なく、健全性という点では気になる水準でした
・但し、直近の1年で業績が急拡大したことにより、
 自己資本が大きく増加しており、この勢いだと、
 自己資本比率も順調に高まっていくのではないかと予測されます
・その点で、安定成長期に入ったといえます

 

P/Lの特徴

次にP/Lの特徴を見てみましょう。

(売上の概要)
・直近の決算による売上高は、
 前期の約2倍になっており、この規模での倍増は、
 驚異的な伸びと言えるでしょう
・ちなみに翌期の売上予想をみると、
 さすがに2倍増といはいきませんが、
 23%増加ということで予測を出されており、
 引き続き増加傾向です

(売上総利益の概要)
・直近の2期間の決算の売上総利益率を確認すると、
 約80%で推移しており、とても高粗利率ビジネスといえます
・ちなみに、売上原価の1/3が材料費、2/3が外注加工費とのことです
・材料費は変動費用要素が高いと思いますが、
 外注費は準固定費的な要素もあると思いますので、
 売上が拡大すればするほど、粗利率はより高くなると予想されます

(営業利益の概要)
・売上の拡大とあわせて営業利益も大きく増加しています
粗利率が高いビジネスモデルなので、営業利益も出やすい構造と思われます
・販管費の内訳として、販売費の割合が約95%と、
 とても高い構成割合になっているので、
 このあたりの販売効率を上げていけるかどうかが、
 営業利益率にも大きく影響を与えそうです

(総括)
・ビジネスモデルとしては、とても「強い」印象です
・利益体質になった現状においては、売上の拡大とともに
 一気に利益拡大していけるフェーズとも言えます
サブスクリプション型の販売モデルも採用しているとのことで、
 安定感という点でも望ましい状況と言えます
・あとは、どこまで商品力や販売力をあげて、売上拡大していけるか、
 とても興味深いビジネスだと思います

 

資本政策

■特別利害関係者等の株式等の移動状況

2018年10月2日
・代表取締役個人⇒代表取締役の資産管理会社(理由:資産管理会社への株式譲渡
・100円×200,000株(全株式数に占める割合:約50%)
代表者個人でほぼ100%保有している状況で、
 半分の50%を資産管理会社へ株式譲渡をしたと思われる
・その後の株式分割を考慮すると「5円×4,000,000株」の譲渡となる
・ちなみに、2018年7月期の1株当たり純資産が16.5円であった
・なお上場時の公募価格(2020年10月)が4,140円のため、
 2年830倍ほどの株価になっている計算になる
・株価は、DCF方式修正純資産方式の平均により算出された価格

2020年5月29日
・代表取締役の資産管理会社⇒従業員持株会(理由:従業員の福利厚生充実のため
・15,000円×900株(全株式数に占める割合:0.2%)
・その後の株式分割を考慮すると「750円×18,000株」の譲渡となる
・なお、この5か月後の上場時の公募価格(2020年10月)が4,140円のため、
 5か月で5.5倍の株価になっている計算になる

2020年5月29日
・代表取締役の資産管理会社⇒取締役2名(理由:経営参画意識向上のため
・15,000円×100株×2名(全株式数に占める割合:0.2%)
・その後の株式分割を考慮すると「750円×2,000株×2名」の譲渡となる
・なお、この5か月後の上場時の公募価格(2020年10月)が4,140円のため、
 5か月で5.5倍の株価になっている計算になる

■第三者割当等の概況

2018年10月2日
第1回新株予約権
・発行数:普通株式 1,930株(株式分割後:38,600株)
・発行価格:100円(株式分割後価格:5円)
・発行価額の総額:193,000円
・発行方法:2018年9月13日開催の臨時株主総会決議
・取得者:従業員、役員(合計5名)
・発行価格計算:純資産方式により算出した評価額を参考に当事者間で協議したうえ決定
・発行価格は、この直後に実施した代表者から資産管理会社への株式譲渡価格と同額

2020年6月1日
第2回新株予約権
・発行数:普通株式 700株(株式分割後:14,000株)
・発行価格:15,000円(株式分割後価格:750円)
・発行価額の総額:10,500,000円
・発行方法:2020年5月29日開催の臨時株主総会決議
・取得者:従業員、役員(合計5名)
・発行価格計算:純資産方式により算出した評価額を参考に当事者間で協議したうえ決定
・発行価格は、同時期に実施した役員との間の株式譲渡価格と同価格

■株主の状況

・第1位:代表者の資産管理会社 3,978,000株(49.51%
・第2位:代表者 3,700,000株(46.05%
・第3位:代表者の親族 180,000株(2.24%)

■資産管理会社

上場の2年前のタイミングで代表者個人から資産管理会社へ半分の割合の株式を譲渡
・資産管理会社と取締役個人で概ね半々ずつくらいの割合に分けて株式保有

■新株予約権の割合

・上場時の発行済株式数に対して0.42%

■総括

外部資本はなく、代表者がほとんどの株式を保有したまま上場を実現している
・上場時に代表者及び親族で約20%程度の売り出しをしている
 (70億円近いキャピタルゲイン
・上場時の公募による希薄化を考慮しても、
 上場後においても、代表者だけで約70%を保有している状態である
・上場日の約2年前と5カ月前に新株予約権を従業員へ付与しているが、
 10名程度へ1名あたり50株~600株の付与をしている
・その後の株式分割を加味すると1名あたり1,000株~12,000株となる
・株式分割後ベースで2年前付与分が5円、5か月前付与分が750円の行使価格となる
・上場時の初値が4,140円であるため、2年前に付与されたストックオプションは、
 2年で830倍近くの資産価値になっている
社員1名当たりのストックオプションによる値上がり益(キャピタルゲイン)は、
 一番値上がり益が高い役員・社員で5,000万円程度,
 一番値上がり益が少ない役員・社員で700万円程度

 

監査報酬

上場直前の監査報酬の状況は以下のような感じです。

上場に向けて徐々に監査報酬が高くなっていますね。
直近では、3,140万円/年間とのことです。

 

会社の対処すべき課題

以下の項目を事業上の課題として説明しています。

①お客様目線に立った商品開発
②通信販売における新規顧客の獲得並びに既存及び休眠顧客へのアプローチ
③新規販売チャネルの開拓
④人材の確保・育成
⑤内部管理体制の構築

 

事業等のリスク

有価証券報告書のなかで、リスクとして考えている項目について、
以下の通り説明があります。
既に起きているものというよりは、今後の可能性としてのリスクとして、
記載がされている部分が多いのですが、
経営を行う上で、経営者としてはリスク認識における参考になるかと思います。

■事業環境に関するリスク

①通販化粧品市場について
②原材料市況について
③海外市場について
④新型コロナウイルス感染症拡大の影響について

■法的規制に関するリスク

①医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律
②特定商取引に関する法律
③不当景品類及び不当表示防止法

■事業に関するリスク

①他社との競合について
②製品の製造委託について
③新製品の開発について
④売上構成比について
⑤特定仕入先への依存によるリスクについて
⑥新規販売チャネルについて
⑦業績の下期偏重について
⑧財務体質の脆弱性について
⑨資金調達について
⑩有利子負債への依存について
⑪システムの安定的な稼働について
⑫著作権、商標権、知的財産権等について
⑬個人情報等について

■事業体制に関するリスク

①代表取締役について
②人材採用と育成について
③小規模組織における管理体制について

■その他

①大株主について
②配当政策について

 

新規上場株価情報

●事業内容
・基礎化粧品の製造及び販売

●業種別分類
・化学

●株主名簿管理人
・三井住友信託銀行㈱

●監査人
・EY 新日本有限責任監査法人

●幹事取引参加者
・野村證券㈱

●発行済株式総数
・8,000,000 株(2020 年 9 月 24 日現在)

●上場時発行済株式総数
・8,700,000 株
(注1)公募分を含む
(注2)新株予約権の権利行使により増加する可能性がある。

●公募・売出しの別
・公募:700,000株
・売出し(引受人の買取引受による売出し) 1,650,000株
・売出し(オーバーアロットメントによる売出し) 352,500株

●売出株放出元
・代表取締役含む2名の個人

●公募・売出価格
・4,140円

●初値
・5,670円 (公募価格比+1,530円 +37.0%)

 

 

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