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Vol.45 月次決算の前提としての社長の「手放す勇気」

  • 2020.10.4

起業直後は社長と税理士

どのような経営者であっても、
最初の起業直後は会計社経営に関して分からないことも多く、
最初に頼るのは税理士であることがほとんどです。

 

どれだけ優秀な経営者であっても、
営業をしたり、売上を作ることはできても、
帳簿をつけたり、税務署やその他公的機関への手続き、
提出資料の作成、税務申告といったあたりは、
最初は知識が不足しているものです。

最初は、顧問税理士へ領主書等の資料をそのまま渡し、
帳簿入力をしてもらう形が多いのではないかと思いますが、
当初は税理士から入力結果を報告してもらって、
月次とかで打ち合わせすることはあっても、
徐々に本業が忙しく、数字のことは後回しになるものです。

 

経営者としても、会社規模が小さいうちは、
預金口座の動きをだいたい把握できているので、
月次決算数値を見たりしなくても、
感覚的に経営は進めていけることが多い印象です。

経営者が会計税務周りで気にすることをあげるとしたら、
納税額がいくらくらいになりそうか、いつくらいに納税が必要か、
といったあたりについて、顧問税理士と連携を図るくらいでしょうか。

 

社員数が5名を超えだしたころに2つの道

但し、社員数が5名を超えだしたころから、
経営者によって大きく2つのパターンに分かれます。

 

1つ目のパターンとしては、
管理的な人材を採用して、社内の総務庶務的なことも含め、
会計帳簿に関する部分や人事面のことを
きちんと社内対応できるように進めるパターンです。

管理面にあまりコストをかけたくないというのは、
ほとんどすべての経営者に共通する思いだと思いますが、
そのようななかでも、管理面の必要性は理解し、
きちんと管理に社内コストをかけるような決断をする社長は、
一般的に、組織拡大・企業成長を実現していく傾向にあります。

 

そして、もう1つのパターンは、
管理をしてくれる人材を採用することは選ばず、
顧問税理士への依存度が高くなるようなケースです。

このような社長の場合、
証憑類の整理や、給与計算といったものを、
社長自ら実施したり、多くの部分を税理士に依存したりしています。

このサイトでも度々お伝えしていますが、
個人的には、企業成長を目指すのであれば、
顧問税理士への業務外注範囲は徐々に減らすべきだと思っています。

※参考記事

 「STEP3【IPO】税理士依存からの脱却

 

過度に税理士への依存度が高くなると、
顧問税理士の言いなりになってしまうことも増えますし、
顧問料や業務内容についてのコントロールもききづらくなる、
といった弊害もあります。

ただ、過度な税理士依存で何より気になるのは、
会社経営の重要な経営管理という点が、
社内ノウハウとして蓄積されず、企業成長を阻害する点です。

 

ちなみに、きちんと社内で管理する方針とノウハウを持ち、
戦略的に税理士へ業務アウトソースするのは、
1つの選択肢として「あり」だと思います。

重要なのは、
会社側に主体性や主導権があるかどうか、
といった点になります。

 

実は管理人材コストではない?

私の事務所の場合でいうと、
基本的に、クライアント自身が自立して経営していくことが
とても重要だと考えていますので、
税務業務をする場合でも自立支援のスタンスで臨みます。

税理士変更を希望されて私のところに業務依頼があった場合にも、
このスタンスをきちんとご説明をし、納得してもらったうえで、
マネーフォワードも導入してもらう前提で引き受けを行っています。

 

税理士変更の場面では、結構な割合で、
「これまで税理士さんに丸投げしていました」
「社内に経理的な人はいませんし、どうしたらよいですか?」
といった感じでスタートすることも多いのも事実です。

このような場合でも「マネーフォワード」を活用して、
月次決算数値を自立的に作成できるように支援していくなかで、
税理士への業務丸投げスタンスから少しずつ脱却されて、
経営管理を頑張られている社長も多いです。

 

一方で、なかには、
組織規模が10名を超えても、20名を超えても、
なかなか社内に管理的な人材を置かないクライアントもあります。

そのような社長との会話のなかでは、
「管理的な人材を置いて、いろいろ整理をしてもらいたい、
 と思っているんですよ。誰か良い人いませんか?」
「人数があともう少し増えたら、是非、管理的な人材を採用して、
 資料整理とかもお願いする予定です」
といった感じのコメントをされる場合が多いです。

 

結局、いつまでも従来のスタンスが変わらず、
社長が社内の資料の整理や給与計算といった業務を抱え込んだ状態が続くのですが、
組織規模も大きくなるにつれて、社長も専門外のことも多くミスが増えたり、
本業の忙しさの中でスピード感が落ちたり、といった感じで、
それをリカバーするための結構後ろ向きな対応が増えていきます。

当然、月次決算の精度もスピードも上がりませんし、
結果として戦略的な経営もできていません。
(それでも業績がついてきている間は良いのですが・・・)

 

そのようなクライアントの特性をいろいろと見続けていくなかで、
なぜ社長によって、このような違いが出るのか、
その違いの大きな要因はどこにあるのか、
について考え続けたのですが、私なりに1つの結論に行き着きました。

 

社長の手放す勇気

社長が資料整理や雑務的な業務から解放されない大きな理由ですが、
私の結論は以下の通りです。

会社規模が大きくなっても、
社長が、本来、管理的な人材に任せるべきところを任せられないのは、
社長自身の「後ろめたさ」から来ているのではないか

と思うようになりました。

 

誰しもが、何らかのことで後ろめたい気持ちは持っています。

経営者で言うと、
多くの場合には、公私混同したお金の使い方や
脱税に近いマインドの節税思考といったあたりでしょうか。

私自身も、1人の人間として、
そのような思いが出てくること自体は否定できません。

 

ただ、会社のトップとして、社員の見本となり、
かつ、企業成長させて社会的責任の高い会社になるためには、
自己の欲望を極力抑える自律心や、
ルールを守っていく姿勢は必要だと考えています。

企業成長を実現させ、
社会的責任を果たしている経営者は
そのような「人間の弱さ」を乗り越えて今があるのだと思います。

 

社内に経理的な人材を置くことで、
社長の行動が社員に見える化されますが、
この状況を受け入れ、逆に、企業成長には必要なこととして、
前向きに考えられる社長は、きっと着実に成長していけると思います。

一方で、いつまでも「手放す勇気」を持てない社長は、
やはり中長期的な視点で考えると、
企業成長は難しいのではないかと思っています。

 

みんな誰しも1人では弱いものです。
それを補うために、あえて社長には「手放す勇気」をもってもらい、
そのステージを乗り越えてもらうことで初めて
スピード感のある月次決算体制も構築でき、
社内の情報共有が進み、PDCAサイクルも回る強い組織に
チャレンジしていけると考えています。

 

 

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