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Vol.69 なぜIPOには月次決算早期化が必要なのか?

  • 2020.11.21

IPOの条件としての月次決算早期化

IPO準備にあたって1つの鬼門となるのが、
「月次決算の早期化」
というテーマだと思います。

この点は、IPOを目指して初めて
月次決算の必要性について知る経営者も多いと思います。

上場会社レベルの会計基準をベースにしたうえで、
正確性とスピードを求められるため、
多くの会社が苦労をされる印象です。

 

そこで、今回は改めてになりますが、
「なぜIPOのために月次決算早期化が必要なのか?」
について考えてみたいと思います。

 

なぜIPOのために月次決算早期化が必要なのか?

まず、一般論としてですが、
IPOにあたって月次決算の早期化が必要な理由としては、

①実績把握と予算管理を迅速に行い予算達成できる会社にするため
②投資家に決算発表を適時に実施できる会社にするため

といったあたりが言えると思います。

 

上場会社になれば、
正確な決算数値を素早くまとめて、
投資家に公表をする必要があります。

また、事前に予算を公表し、
その予算を達成するための経営管理も求められますので、
その際には、素早く月次決算数値をまとめ、
PDCAサイクルを回しながら、経営をしていく必要があります。

 

そう考えると、その前提として、
「月次決算の早期化」
はIPOをする会社にとっての必須スキルになるため、
上場準備の過程でこのスキルを要求されることになります。

 

ただ、個人的には、
IPOに向けた月次決算の早期化には、
以下のような裏テーマもあると思っています。

③上場会社に相応しい規律のある企業風土づくり
④社員全員が決算に対する理解をもつ企業風土づくり

 

 

上場会社に相応しい規律のある企業風土づくり

まず、
「上場会社に相応しい規律のある企業風土づくり」
というテーマについて考えてみたいと思います。

 

私の事務所のクライアントうち
IPOを目指していない会社であっても、
月次決算の仕組み作りや、早期化に向けた取り組みに
チャレンジをする会社はちょこちょこあります。

但し、IPOを目指していない会社の場合には、
IPOを目指している会社と異なり、
取組みが継続しない傾向があったりするのも事実です。

仕方ないことかもしれませんが、
月次決算の早期化に対するコミットメントが高くない面もあり、
少しスケジュールが遅れても問題になることがないため、
どうしても優先順位を下げてしまうケースが出てきます。

ある月は素早く月次決算が固まったけど、
その翌月には、他の優先順位の高い業務や、
出張等で忙しい、といった様々な理由(言い訳?)のもと、
月次決算がずるずると遅れてしまうことがあります。

 

上場会社と非上場会社の大きな違いは、
上場会社は外部株主もいてルールを守るのが必須であり、
これを破ることは許容されない環境にあるのに対して、
非上場会社はそのような制約がありません。

そのため、非上場会社で規律性が低い会社や、
決めたことを守る、といった力が弱い会社は、
月次決算の早期化が習慣として根付きません。

上場会社になると、そのような状況は許されませんので、
上場する準備段階で、このような「規律性」「約束を守る」といった
会社としての基礎力を見極められているということです。

 

逆に考えると、
IPOというプロセスを上手く活用して、
規律性があり、約束を守れる強い会社に変えていく機会にする、
といったプラス思考で考えてみるとよいのではないでしょうか。

 

社員全員が決算に対する理解をもつ企業風土づくり

もう1つの裏テーマとして、
「社員全員が決算に対する理解をもつ企業風土づくり」
という点も考えてみました。

 

月次決算の早期化を実現しようと思うと、
経理だけが頑張っても難しい状況があります。

このあたりについて
経営者の理解が不足している会社も多いのですが、
月次決算は、全社一丸となって解決すべきテーマです。

営業やその他の部署の現場社員が
月次決算についての理解がなければ、
月次決算の早期化は実現できません。

 

たとえば、
現場社員が経理にあげてくる資料が遅れるだけで、
月次決算のすべてのスケジュールが後ろ倒しになってしまうものです。

また、仮に、現場社員が不正やその他操作をしたりしようとすると、
内容が複雑になったり、会計の方で辻褄が合わなくなったりして、
決算が遅れたりします。

 

当然ですが、上場会社では、
不正やコンプライアンス違反は厳禁です。

このような前提を
きちんとクリアしている会社かどうかを見極めるにあたって、
月次決算が迅速にできているかどうかという点で、
会社をふるいにかけるという考え方もあると思います。

 

つまり、
月次決算の早期化が実現できる会社は、
経営者含め、会社全体で会計に対する認識があり、
会計不正や粉飾決算を行いづらい環境が整備されている可能性が高い、
というように考えることができるということです。

 

まとめ

IPOを目指すかどうかをまだ決めていなくても、
月次決算の早期化に取り組むプロセスは、
会社を強くするうえで、とても良い機会になると思っています。

少なくとも、上場している会社は、
月次決算早期化のプロセスを経て、強い会社になっているので、
このような上場会社に負けないレベルの強い会社にしたければ、
月次決算の早期化に取り組むことは、
経営者としても、重要な経営判断だと思っています。

 

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