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Vol.41 目的によって異なる5つの事業計画

  • 2020.9.13

事業計画の目的

「事業計画を作りたいと思っているんですが、
 手伝ってもらうことはできますか?」

このようなご要望は、ちょこちょこいただきます。

 

ただ、一口に「事業計画」といっても
いろいろな場面で使用されるため、
その目的によっては作り方が変わるのものです。

そこで今回は、目的に応じた
事業計画の使い分けについてお伝えしたいと思います。

 

経営者としても、
どの目的で事業計画を作ろうとしているかを
きちんと明確にしたうえで、
関係者へ伝えていく必要があると思いますので、
ご確認いただければと思います。

 

5つの事業計画

まず事業計画を作成する目的として、
私なりに分類すると、
大きく5つに分けられると思います。

5つの目的

①出資による資金調達(投資家)
②金融機関借入
③補助金・助成金
④社内共有
⑤社長個人目的

 

上記①~⑤の目的の
すべてを満たすような事業計画を作成できれば、
理想的なのだとは思います。

ただ、目的が異なれば、
少しずつ見せ方というか、アグレッシブさというか、
作る際のさじ加減等が変わってくるものです。

そこで、上記の目的別に、
どのような傾向があるのか考えてみたいと思います。

 

 

①出資による資金調達(投資家)

まず最初は「出資」によって
投資家から資金を調達する場合における
事業計画についてです。

いわゆる「エクイティ」による調達ですが、
通常、エクイティで調達する際に事業計画が必要になるケースは、
成長企業で、将来的にIPOを目指すとか、
状況によって事業売却をするといったようなケースでしょう。

このような前提における事業計画は、

・市場分析と成長可能性
・事業成長による利益拡大

がストーリーとして描かれている事業計画である必要があります。

 

 

また、具体的にいつの時期に上場を目指すとか、
その際の株価や資本構成がどのようなっているのか、
といった「資本政策」とセットで事業計画は語られると思います。

そう考えると、結構広い視野で、
かつ、中長期のスパンで作成されるものになりますし、
投資家の期待と厳しい目に耐えうる内容である必要があります。

そのうえで、絵に描いた餅にならないように、
計画の実現可能性についても、
客観的事実や具体的な根拠で示していく必要があります。

 

そのためには、
・定性的な情報
・定量的な情報
の両方を織り込みながら説得力を上げていく必要があるため、
状況によっては外部の専門家にも入ってもらい、
事業計画を作成することも多いと思います。

 

②金融機関借入

次に2つ目の目的として、
「金融機関からの融資」のために、
作成される事業計画です。

いわゆる「デット」による資金調達です。

 

こちらは、融資の目的にもよる部分はあると思いますが、
エクイティによる資金調達と比べると、
どちらかというと、より現実的、かつ、短期的な感じでの
事業計画になると思います。

投資家からの出資してもらうための資金調達の場合には、
中長期に渡って事業拡大していくような計画でないと、
そもそもニーズとマッチしません。

投資家にとってはキャピタルゲインが一番の目的ですので。

 

一方で、金融機関からの融資は、
当然、事業拡大があればより説得力もありますが、
どちらかというと、日々の運転資金や、
もう少し現実的な短期投資のための資金を目的としていて、
何より、重要視されるのは、

貸したお金を、きちんと返してもらえるか

といった点です。

 

そのため、無理のある事業計画ではなく、
堅実で、かつ、信用されるような計画となります。

 

投資家がキャピタルゲインを目的として
お金を出資する際にとるリスクと比べると、
金融機関が融資する際にとるリスクは極めて低いといえます。

その前提として
金融機関は「返してもらう」という前提があるので、
返してもらえそうな相手に、適度な利息をつけてお金を貸して、
予定通りにお金を返してもらうのが第一なので、
そのために必要とする事業計画は、
より現実的かつ堅実なものになるでしょう。

 

③補助金・助成金

そして3つ目の目的ですが、
「補助金や助成金」を申請する際に
求められる事業計画ということもあると思います。

 

補助金や助成金に申請する際にも
事業計画が求められるものなのですが、
これは、これで、また少し違ったポイントがあります。

というのも、補助金や助成金は、
補助する目的があり、そのために国の予算が設けられ、
その予算の中で、審査を行って採択していくものですので、
そこでは何よりも、

補助金・助成金の事業目的に沿った内容の事業計画を作成すること

が求められます。

 

 

そのため、どれだけ素晴らしい事業計画を作成しても、
補助金や助成金の目的事業に合わない事業計画であれば、
審査要件すら満たさず、採択されることはありません。

 

そう考えると、
補助金等の公募が開始された際に
「公募要領」という申請に関する説明書が公表されますので、
ひたすらこちらを意識した事業計画を作成することが必要となります。

その公募要領には、
・事業目的
・審査ポイント
といった内容も記載されていますので、
ここを外さないように事業計画を作ることになります。

 

④社内共有

4つ目ですが、
「社内共有」を目的として作成される
事業計画についてです。

 

今まで見てきた目的のうち、
③の補助金・助成金を目的とした事業計画は、
少し毛色が異なる面はありますが、
①の出資目的や、②の借入目的の事業計画を、
そのまま社内共有目的に使用することは理論上は可能ではあります。

というよりは、本来は
①の出資目的や、②の借入目的の事業計画と
社内共有目的の事業計画は一致すべきだとは思います。

 

但し、現実的には、
目的が異なれば、やはり事業計画も
少しずつ異なってしまうものです。

大きく異なるポイントとしては、
この社内共有目的の事業計画は、
あくまで「社内向け」の目的であるのに対して、
①の出資目的や、②の借入目的の事業計画は、
「外部関係者向け」の目的です。

 

社内向けと、外部向けでは、
少なからず変わってしまうのは仕方ないところでしょうか。

上場企業でも、
外部公表数値と、社内での目標数値は
分けて数値を持っていることはよくある状況ですし、
それぞれの目的に応じて使い分けること自体は、
間違っていることではないと思いますので。

 

但し、事業計画の本質的なところは、
外部向けであれ、内部向けであれ、
基本的には共通しているべきだと思います。

そのうえで、目的に応じて、
それをどこまで強調して表現するかが変わってくる、
といった感じでしょうか。

 

社内共有目的の事業計画の方を、
かなりアグレッシブにしている会社もあると思いますし、
一方で、外部からの資金調達をアグレッシブに行っている会社は、
社内共有目的の事業計画の方が、
少し保守的になっていることもあると思います。

 

いずれにしても、
日々の経営という意味では、
この「社内共有」目的の事業計画が一番身近なものになりますので、
本当に意味で地に足の着いた形で
きちんと作りこむ必要がある事業計画と言えるでしょう。

うまく事業計画を社内経営管理のなかで活用できれば、
社内の目線合わせ目標管理をするうえで、
とても有効な手段になると思いますので。

 

⑤社長個人目的

最後の5つ目として、
「社長個人目的」
という事業計画もあえて入れております。

これは、社長個人の人生設計とも
密接に関わるものだと思います。

というのも、通常は、

社長個人の人生≒会社の成長

というケースが多いと思いますので、
社長個人が人生設計を考えるうえで、
会社の事業計画と合わせて考えることは必然かと思います。

 

但し、この場合の目的としては、
社長個人の人生の目的に左右される面もありますし、
人生という長いスパンの話と連動するため、
この目的の事業計画もより長いスパンの事業計画になると思います。

また、社内全体で共有するまでの状況になっていなくても、
社長個人の夢として描いている世界はあると思いますので、
それはそれで、別途、計画として管理することは
あっても良いことだと思います。

 

ということで、より自由度が高く、
かつ、長期的な視野での事業計画として、
あえて最後の目的に入れさせていただきました。

 

まとめ

ということで、今回は、
事業計画を作成する際の目的を
5つに分けて説明をさせていただきました。

 

全てが全く異なるものではないと思いますが、
完全に一致するものでもないと思います。

きちんと目的にあった形で事業計画を作成しないと、
意味のないものになってしまいますので、
是非、事業計画作成の目的を意識しながら、
事業計画について考えてみていただきたいと思います。

 

 

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