電子帳簿保存法対応≒スキャナ保存制度
電子帳簿保存法というフレーズはよく聞きますが、
「スキャナ保存制度」というフレーズは、
電子帳簿保存法よりは聞く頻度が少ない気がします。
私も最初は、あまり内容も詳しくなかったのですが、
いろいろと勉強をしていくうちに
「電子帳簿保存とスキャナ保存という異なる概念があるの?」
「実務で、より必要なのはスキャナ保存の方ではないのか?」
といったようなことを思うようになってきました。
実際に、上場会社クライアントとかで
少しずつ「電子帳簿保存法」が話題になり始めて、
この1~2年で取り組みがスタートしてきたのですが、
対応内容は基本的に「スキャナ保存制度」のケースでした。
ということで、極論すると
「電子帳簿保存法対応≒スキャナ保存対応」
と言っても過言ではない気もしております。
(とくに最初のうちは)
ということで今回は、
スキャナ保存制度について確認をしてみたいと思います。
スキャナ保存制度とは?
デジタル化を目指す経営者であれば、
是非、この「スキャナ保存制度」については、
おおざっぱなイメージだけでもまずは良いので
把握しておいていただきたいテーマになります。
まず、税法で規定している「スキャナ保存制度」とは、
———————————–
紙で受け取った証憑類を
電子データとして保存をするための方法
———————————–
といった感じで覚えていただければと思います。
紙でもらった領収書は、
原則として、紙として保管をしておく必要があります。
これを捨ててしまうと、
税務上、いろいろと問題が出てきます。
会計帳簿を作る基礎であり、
取引内容の証明にもなる証憑類は、
紙できちんと保管しておくことが求められているのです。
但し、あらゆる業務がデジタル化していくなかで、
紙書類も徐々に減ってきているのが現場実務だと思いますが、
そのようななかで領収書等は継続して紙保管が必要という状況は、
経営者としてもなんとかしたいところではないでしょうか?
そのような場合に活用できるのが、
「スキャナ保存制度」
になります。
スキャナ保存制度を適用するには?
スキャナ保存制度を適用しようと思うと、
今の税制では、最初に税務署へ申請をしておく必要がありますので、
勝手に、会社が独自の判断で始める制度にはなっていません。
まず、この時点で高いハードルがあります。
スキャナ保存制度をどのように適用する予定なのか、
適用するための環境や体制が整備されているか、
といったあたり明確にしたうえで、それを事前に届出する必要があるのです。
そのため、まずは申請が受け付けられるために、
スキャナ保存制度の細かな規定に沿った環境・ルールを
社内で整備をする必要があります。
この整備をしていくにあたっては、
前回お伝えした
「電子データ保存のための5要件」
を具体的にしたルールが電子帳簿保存法で定められていますので、
この定めに留意をして社内整備をしていく感じになります。
このスキャナ保存制度で求められる具体的なルールですが、
いくつかのパータンによって要件が分かれてくるので、かなり複雑なのですが、
たとえば「領収書受領者がスキャンして電子保存する場合」には、
具体的には以下のような要件があります。
●一定上の解像度のあるスキャナを使用する必要がある
●領収書を受け取ったら1週間程度でスキャンをする必要がある
●スキャンをする前に、領収書に自分の名前を署名する必要がある
●スキャンをした領収書にタイムスタンプを押す必要がある
●別の第三者が、サンプルベースで原本とスキャンデータを照合して検証する
●上記のルールを定め、社内で周知・徹底したうえで、規程を作成する
●スキャンデータをきちんと検索できるようなシステムを整える必要がある
——————————————————–
これらをすべて満たすことで、
やっと領収書の原本を破棄できるようになるのです。
いかがでしょうか?
これを見ると、
「こんなことするなら、今まで通りの方が楽なのでは?」
「デジタル化することで効率性が逆に落ちるのでは?」
「こんなことを全社員に徹底できない・・・」
といった声が、どの会社でも上がってきます。
ちなみに、上記はあくまで1つのパターンにおける要件なので、
他ののパターンの場合には、また別の要件も出てきます。
正直、分かりづらくて仕方ないです・・・。
そのため、ほぼすべての税理士は、
この制度を理解できていませんし(≒現実的でないので理解する気もない)、
クライアントに適用するのも不可能だと感じていて、
そもそも制度導入の検討すらしていない、
というのが実情になります。
その結果、
コンサルを入れながら、専用のシステムを入れて、
ルールを作って、運用するためにコストをかけられる
一部の大企業だけが取り組み始めているという状況になっています。
私自身も、これまで、
いくつかのクライアントに提案をしたことがありますが、
中小規模のクライアントでは、
「電子化したいけど、ここまではできないし、
電子化する方が手間とコストがかかるから導入しません」
という回答が100%でした。
上場企業の一部のクライアントのみ、
会社主導で少しずつ取り組み始めている程度です。
個人的は、マネーフォワードもフル活用しながら、
業務フローを整備し、かつ、業務全体のデジタル化をすすめるなかで、
紙の証憑類も削減したいという理想は強いものの、
やはり運用する側のクライアントがついてこれないような法制度だったので、
本当に電子帳簿保存法は残念な制度だと思っていました。
2022年1月からは変わる!
但し、時代がやっと追いついてきました!
今年(2021年)の税制改正で、
この電子帳簿保存法の緩和改正が公表され、
今回の「スキャナ保存制度」の適用ルールも大幅に緩和が見込まれます。
今後の緩和の内容については、次の次くらいの記事でお伝えしたいと思いますが、
今回はまずは、今の制度がとてもハードルが高かったという現状をお伝えするとともに、
今後はこのハードルが下がるので、経営者としては、
逆に積極的にスキャナ保存制度も適用して経営の効率化を目指していただきたい、
ということがお伝えしたかった内容になります。
緩和された新しい「スキャナ保存制度」の適用は、
2022年1月からです。
もう1年を切っていますので、
是非、2021年中に新しい法制度を確認したうえで、
来年から新「スキャナ保存制度」を適用できる体制を
構築しておいていただきたいと思います。