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Vol.80【IPO事例】株式会社ココペリ

  • 2020.12.30

新規IPO

2020年12月18日に株式会社ココペリ(情報・通信業)
東京証券取引所マザーズに上場いたしました。

今回は同社から公表されている資料にもとづき、
IPOの状況を確認してみたいと思います。

 

上場時資料

■成長可能性に関する説明資料

https://contents.xj-storage.jp/xcontents/AS09509/a80faa75/696f/4bbe/8bfa/424ab1f37af0/140120201217436108.pdf

■東京証券取引所マザーズへの上場に伴う当社決算情報等のお知らせ

https://contents.xj-storage.jp/xcontents/AS09509/c1f24250/e4c4/43f3/830e/b072d8d90855/140120201217436093.pdf

■新規上場申請のための有価証券報告書(Ⅰの部)

https://www.jpx.co.jp/listing/stocks/new/nlsgeu0000053fhm-att/12Kokopelli-1s.pdf

 

成長可能性に関する説明資料

■会社概要

まずは、会社概要についての全体説明のパートになります。

具体的には、
「会社概要」
「経営理念」
「経営チーム」
「沿革」
といった資料で会社の概要を説明する
オーソドックスな始まりとなっています。

設立してから一貫して
中小企業向けの成長支援サービスの展開を
実施してきていることを伝えています。

 

確かに私自身も、
「SHARES」
という専門家相談プラットフォームのサイトは、
過去に見たことがありましたので、
ここで会社とサービスがつながりました。

 

■サービス概要

次にサービス概要の説明に移っていきます。

具体的には、
「サービス概要」
「背景:中小企業の現状と課題」
「背景:地域金融機関の現状と課題」
「「Big Advance」の概要」
「「Big Advance」の仕組み」
「導入金融機関の推移」
「会員企業数の四半期コホート推移」
「金融庁、財務局、第二地方銀行協会等からの認知」
といった資料で説明をされています。

 

サービスとしては、
全国の地域金融機関と協業する
中小企業向け経営支援プラットフォームである「Big Advance」と、
中小企業向けに特化したAモジュール開発の「FAI」という
2つのサービスが主に大きく紹介されています。

中小企業の成長と地方創生を支援する
BtoB SaaSモデルのサービスとのことです。

 

当該サービス提供の背景にある
中小企業と地域金融機関の現状と課題を整理したうえで、
それを解決するサービスとして提供していることが、
資料説明の流れで理解ができました。

金融機関を通じて、
取引先にサービス提供をされているとのことで、
提携先の金融機関についても掲載されていて、
イメージがわきやすいです。

 

■コーポレートハイライト

次にコーポレートハイライトとして、
4つの切り口で整理及び説明がされています。

この4つの切り口としては具体的に、
①地域金融機関と協業したユニークで強固なビジネスモデル
②現場で練り上げた 「中小企業にも地域金融機関にも最適化したサービス」
③高い安定性を誇るBtoB SaaSモデル
④成長ポテンシャルと成長戦略
といった内容になります。

 

それぞれについて、
少しずつ深堀りをしながら説明をされています。

 

たとえば、については、
「地域金融機関から中小企業へ提供するサービスとして最適」
「ネットワーク効果を発揮」
という資料をもとにビジネスモデルの強さを強調しています。

 

次に、については、
「改善を繰り返す開発体制」
「中小企業のDXを支援」
といった資料を用いながら、
現場で蓄積したノウハウ・経験をもとにした体制を強調することで、
同社の内部的な競争優位性を説明している印象です。

 

そしてについては、
「迅速な機能改善によるユーザーの安定化」
「売上高及び営業利益」
「コスト構造」
といった資料をもとに、
サービスと業績を紐づけながら、
同社のビジネスの実績を説明をしています。

 

最後ににおいては、
「今後の成長戦略」
「ユーザー基盤の更なる強化」
「データ活用による高付加価値化」
「AI(人工知能)モジュール「FAI」」
「収益力向上とオープン戦略」
といった資料を用いながら、
今後の成長戦略について説明をされています。

 

■財務ハイライト・リスク情報

そして財務ハイライトとして、
直近3年程度の損益と資産・負債の状況について、
1枚の資料を利用して説明をしています。

会社全体として業績が拡大し、
黒字化していることが見てとれます。

 

また最後に、リスク情報についても触れています。

 

財務数値の特徴

まずはB/Sについては以下のような感じです。

 

資産のほとんどは預金と売掛金になります。
その点で、大きく気になる点は見受けられません。
(ちなみに、ソフトウェアの計上もありません)

最近のIPO会社は、
どの会社も同じような感じですね。
とても身軽な印象です。

 

また、負債もとくに目立ったものも無く、
借入も預金より少ないですので実質無借金経営です。

自己資本比率も非常に高く、
財務健全性について気になる点もありません。

 

次にP/Lの方はどうでしょうか。

 

粗利率が直近では55%程度であり、
過去と比べて利益率が上がってきています。

営業利益は、直前期までは赤字でしたが、
直近においても黒字化しているようで、
売上拡大とともに、損益分岐点を超えてきたことがわかります。

 

今後としては、
利益拡大のステージに突入していくことが予想されます。

 

資本政策

■特別利害関係者等の株式等の移動状況

有価証券上場規程施行規則第253条の規定

東京証券取引所マザーズへの上場にあたり、
特別利害関係者等が、新規上場申請日の直前事業年度の末日から起算して
2年前の日(2018年4月1日)から上場日の前日までの期間において、
発行する株式又は新株予約権の譲受け又は譲渡を行っている場合には、
「新規上場申請のための有価証券報告書(Ⅰの部)」に記載することとされています

 

2018年7月
・個人株主⇒取締役(理由:移動前所有者の売却希望による
・1,250円×2,000株(割合:約0.2%)
・その後の株式分割を考慮すると譲渡価格は18円程度
・株価は、譲渡人の簿価を基礎として当事者間で協議のうえ決定
・約2年半後には上場を果たし、株価(公募価格)は1,600円と100倍近くになっている

2020年4月
・取締役⇒取締役が代表を務める会社(理由:移動前所有者の売却希望による
・76,144円×2,500株(割合:約0.2%)
・その後の株式分割を考慮すると譲渡価格は1,087円程度
・株価は、DCF法により算出した価格を基礎として当事者間で協議のうえ決定
・半年後には上場を果たし、株価(公募価格)は1,600円と1.5倍になっている

2020年8月
・2020年7月20日開催の取締役会において、
 A種優先株式、B種優先株式、C種優先株式及びD種優先株式のすべてにつき、
 定款に定める取得条項に基づき取得することを決議し、
 2020年8月13日付で自己株式として取得し、
 対価として各種優先株式1株につきそれぞれ普通株式1株を交付
・なお、当該優先株式の発行時の価格はDCF法により算出した価格を基礎として算定
・優先株式1株の発行価格は、普通株式1株との権利の違いを考慮した価格となっている

2020年9月
・ファンド⇒法人(理由:ファンドの解散による
・2,765円×6,500株(割合:約0.2%)
・その後の株式分割を考慮すると譲渡価格は40円程度
・株価は、簿価純資産法により算出した価格を基礎として当事者間で協議のうえ決定

 

■第三者割当等の概況

情報が多いため、以下の通り
開示資料より掲載引用させていただきます。

 

種類株式については、
投資ファンド、金融機関、リース事業者、ソフト開発会社、コンサル会社、
といっVCから一般会社まで幅広く発行されています。

当該種類株式は、
定款に定める取得条項に基づき取得することを決議し、
2020年8月13日付で自己株式として取得し、
対価として普通株式を交付する形になっています。

 

一方で、新株予約権は、従業員や役員へ割当がされています。

 

■株主の状況

・第1位:代表者個人 2,450,000株(32.15%)
・第2位:AT-Ⅱ投資事業有限責任組合  714,000株(9.37%)
・第3位:取締役個人 546,000株(7.17%)

 

■新株予約権の状況

・643,720株
・8.53%

 

■資産管理会社

・該当なし

 

■総括

・VCから一般会社まで幅広く株式をもってもらっている

※詳細は、以下の「新規上場申請のための有価証券報告書(Ⅰの部)」参照
 https://www.jpx.co.jp/listing/stocks/new/nlsgeu0000053fhm-att/12Kokopelli-1s.pdf

 

監査報酬

上場直前の監査報酬の状況は以下のような感じです。

直前期の監査報酬で1,650万円程度となっており、
最近の平均的な水準と言えるでしょう。

 

新規上場株価情報

●事業内容
・中小企業向け経営支援プラットフォーム「Big Advance」及び AI モジ ュール「FAI」の開発・提供等
●業種別分類
・情報・通信業
●株主名簿管理人
・三菱UFJ信託銀行㈱
●監査人
・EY 新日本有限責任監査法人
●幹事取引参加者
・大和証券㈱
●発行済株式総数
・6,967,380 株(2020 年 11 月 13 日現在)
●上場時発行済株式総数
・7,243,380 株
(注1)公募分を含む
(注2)新株予約権の権利行使により増加する可能性がある。
●公募・売出しの別
・公募:276,000株
・売出し(引受人の買取引受による売出し)806,400株
・売出し(オーバーアロットメントによる売出し)162,300株
●売出株放出元
・AT-Ⅱ投資事業有限責任組合
・㈱東広
・FinTech ビジネスイノベーション投資事業有限責任組合
・代表者個人
・取締役個人
・かながわ成長企業支援投資事業組合
・㈱アドウェイズ
・SV-FINTECH1号投資事業有限責任組合
・㈱エンライブ
●公募・売出価格
・1,600円
●初値
・3,610円 (公募価格比+2,010円 +125.6%)

 

 

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