【採択結果データ分析】第17回小規模事業者持続化補助金 (商工会地区)

第17回「小規模事業者持続化補助金」の採択結果を、都道府県別・業種別・キーワード(テキストマイニング)・DX/地域資源活用といった軸で可視化しました。単なる一覧の羅列では見えない“勝ち筋”――どの地域・どの業種が伸び、採択タイトルにどんな言葉が多く、どのような投資や打ち手が評価されやすいのか――を、データから読み解きます。

次回申請に向けて「何に投資し、どう訴求すべきか」のヒントを短時間で把握できる構成です。現場で使える要点を図表とともに整理し、申請戦略の意思決定に直結する示唆をお届けします。

目次

都道府県別の採択件数と地域分布

第17回公募では、全国各地から合計3,490件の小規模事業者の事業計画が採択されました(商工会地区分のみ集計)

2つの応募ルート

  • 商工会地区の採択一覧(⇒今回の分析はこちら)
    • 市町村に「商工会」が置かれているエリアの事業者向け。
    • 応募・伴走支援・事業支援計画書(推薦書)の発行主体:商工会
  • 商工会議所地区の採択一覧
    • 市に「商工会議所(○○商工会議所)」があるエリアの事業者向け。
    • 応募・伴走支援・事業支援計画書の発行主体:商工会議所

つまり、所在地の管轄(商工会か、商工会議所か)で応募ルートが分かれるため、採択発表もそれぞれ別ファイルで出ます。内容(補助率・上限・評価観点など)は同じ枠の中でほぼ共通ですが、申請窓口や書式の番号(例:事業支援計画書の様式)など実務の所作は異なることがあります。

都道府県別分析

都道府県別に見ると、群馬県が226件と最多で、茨城県(176件)、兵庫県(163件)、愛知県(157件)、福岡県(152件)などが上位に並びました。一方、採択件数が最も少なかったのは鳥取県(11件)で、次いで島根県(13件)、宮崎県(20件)、佐賀県(21件)など地方圏の県が下位となっています。

地域ブロックごとに採択件数を合計すると、関東地方が814件で全体の約23%を占め最も多く、次いで中部地方(約18%)、九州・沖縄地方(約18%)、近畿地方(約16%)が多い結果でした。東北・北海道地方は約11%とやや少なめで、中国・四国地方も各5~7%程度にとどまります。

これは、関東・中部など人口の多い地域では商工会議所地区に属する都市部案件が別途集計されている一方、商工会地区として集計された地域では群馬県や茨城県のように中小事業者が地方部に多い県で件数が伸びたことが要因と考えられます。以下のグラフは地域別の採択件数の分布を示したものです。

全体的に見ると、地域差はあるものの全国各地から幅広く採択者が出ており、特に地方部では小規模事業者が地域密着で工夫を凝らした計画を提案し、支援を獲得している様子がうかがえます(例:鳥取県の採択事業では地域の農産物や観光資源を活かした計画が見られます)。

業種別の採択傾向

サービス業

採択事業者を業種別に概観すると、サービス業に分類できる事業者の占める割合が高い傾向が見られました。

具体的には、美容院・理容店、エステサロン、整骨院といった美容・ヘルスケアサービスや、学習塾・教室、士業事務所などの専門サービス、さらには自動車整備工場やクリーニング店など生活関連サービスまで、多種多様なサービス業の小規模事業者が数多く採択されています。

こうしたサービス業では「新メニュー導入による顧客獲得」「店舗環境の快適性向上」といった取り組みが目立ち、地域の顧客ニーズに応えるサービス充実策が評価されたようです。

製造業

次に多いのが製造業・ものづくり系の事業者です。

地場の製造業者や職人(鉄工所、木工所、食品加工業者など)も多数採択されており、生産設備の導入による効率化や新商品の開発による販路開拓を図る計画が多く見られました。例えば製造ノウハウを活かした新製品開発や、最新機械の導入による生産性向上など、「設備投資」と「技術開発」をキーワードにした計画が製造業では顕著です。

その他業種

小売業(商店・販売業)に属する事業者も一定数存在しますが、上記のサービス・製造と比べると割合はやや低めです。

小売業では老舗の○○商店や専門店が店舗改装や看板設置、EC活用による販路拡大に取り組むケースが多く見られました。また、食品小売や土産物店では地元特産品を活かした新商品の開発・PRにより付加価値向上を狙う動きもあります。

さらに、飲食店や宿泊業など飲食・宿泊業も注目すべき採択分野です。カフェ、レストラン、居酒屋、旅館といった事業者が、新メニュー開発やキッチンカー導入、店舗のバリアフリー改装等で新規顧客を掴もうとする計画が多数見られました光需要や地域住民のニーズに応える取り組みが評価されています。

まとめ

以上のように、第17回公募ではサービス業が最多、次いで製造業、小売業、飲食業の順で採択件数が多い傾向にありました(PDF記載の事業者名・内容から推定)。業種横断的に共通するのは「顧客ニーズへの対応」であり、業態に合わせた創意工夫(例えば製造業なら設備投資、サービス業なら新サービス導入など)によって売上拡大や顧客獲得を目指す計画が多かった点が特徴的です。

補助事業名のキーワード頻度分析

採択事業のタイトル(補助事業名)に含まれるキーワードを頻度分析すると、事業者が目指す方向性が浮かび上がります。頻出した上位キーワードを挙げると以下の通りです。

  • 「販路拡大」 … 最も多くの事業タイトルに登場しました。新たな販売先や市場を開拓しようとする狙いを示すもので、採択案件の約4割以上にこの言葉が含まれています。例えば「販路拡大を目指した設備投資」や「○○の販路拡大事業」といった具合です。
  • 「新規顧客獲得」顧客開拓に関するキーワードも頻出しています。「新規顧客の獲得」「新規客の発掘」等の表現で、多くの事業者が新しい顧客層を呼び込むことを重視していることが分かります。既存商圏の外にアプローチしたいという意欲がうかがえます。
  • 「売上向上」「収益増加」 … 売上・利益の向上を直接的に掲げるタイトルも多数ありました。補助事業を通じて経営数値を底上げすることが明確な目標になっています。
  • 「付加価値」 … 「付加価値向上」「高付加価値化」など、自社商品の価値を高めるというキーワードも散見されました。単に安売りや量の拡大ではなく、価値アップによる競争力強化を狙う姿勢が表れています。
  • 「生産性向上」 … 主に製造業や生産現場を抱える事業者のタイトルで見られ、機械導入や工程改善によって生産効率を高める意図を示しています。人手不足への対応やコスト削減のニーズを反映したキーワードと言えます。
  • このほか「DX」「デジタル化」、「PR・広告」、「ブランド力」、「顧客満足度向上」なども複数の事業タイトルに登場しました。例えば「DXによる販路拡大・業務革新事業」や「顧客満足度向上事業」といった具合で、デジタル技術の活用や顧客サービスの充実も重要なテーマであることがわかります。

以上の頻出キーワードから、販路開拓・顧客獲得が全体のキーテーマであり、それを実現する手段として売上アップ、生産性向上、付加価値創出、デジタル化など各社が工夫を凝らしている状況が読み取れます。

言い換えれば、「新たな市場に売り込みたい」「新しいお客様を掴みたい」という共通の目的に向け、補助金を活用して設備投資や商品開発、サービス改善に取り組む小規模事業者が多数であったと言えるでしょう。

地域資源活用・デジタル化に関連する事業の割合と特徴

採択事業の中には、地域資源の活用ビジネスのデジタル化に焦点を当てたものも一定数存在します。地域資源の活用とは、地域ならではの特産品や文化・観光資源を事業に活かす取り組みです。

第17回では、事業名に「地域資源」という言葉が含まれるものは約20件ほどでしたが、広く「地域○○」「地元○○」といった表現まで含めると約300件に上ります(採択事業名のテキストマイニングより集計)。

例えば、「地域の○○(農産物・伝統素材等)を使った新商品開発」や「地元○○産品のブランド化」といった計画が該当します。実際、北海道ではエゾシカ肉を商品化する事業や、鹿児島県で未利用魚をペットフードにする事業など、各地域ならではの資源を活かして付加価値を生み出そうとする事例が各地で見られました。これら地域資源活用型の事業では、「○○の魅力発信」「○○のブランド構築」といったキーワードが含まれることが多く、地域おこし的な意義も持ったビジネスが展開されています。

一方、デジタル化(DX)の推進に関連する事業は約100件強(全体の3%程度)確認できます(事業名に「DX」「IT」「デジタル」「オンライン」等の語を含む件数)。具体例としては、「ホームページ開設による販路拡大」「オンラインショップ強化」「ICT機器導入による業務効率化」などです。

例えば、宮城県の酒造店が体験型酒蔵の魅力発信と DXによる販路拡大・業務革新事業 を掲げていたり、広島県の建築業者が空き家活用のワンストップサービス化を図る中でITを活用しているケースもあります。デジタル化関連の事業の特徴として、「業務効率化」「オンライン活用で集客」「SNS・ECの活用」といった切り口で、小規模事業者が自社の弱点を補い競争力を高めようとしている点が挙げられます。補助金をテコに、これまでアナログだった業務をデジタルツールで改善したり、新たなデジタルサービスを展開したりする姿勢が評価されたと言えるでしょう。

地域資源の活用デジタル化はいずれも今後の中小企業支援のキーワードです。本公募でもその両面を意識した案件は少なくなく、例えば「地域×デジタル」のように地元の強みとITを組み合わせたビジネスモデルも見受けられました。全体として数の上では大多数ではないものの、地域密着型かつ先端技術志向の意欲的な取り組みが一定数存在していることが分かります。

初採択事業者とリピーターの可能性に関する考察

最後に、今回採択された事業者が初めて補助金に採択されたのか、過去にも採択実績がある“リピーター”なのかについて考察します。

一つの目安として法人番号の有無があります。採択リストでは、法人格を持つ企業には13桁の法人番号が記載されており、個人事業主など法人登録のない事業者には番号がありません。

集計すると、法人番号が記載されている採択者は全体の約49%(1,703件)、番号なし(=法人格なしと思われる)は約51%(1,787件)とほぼ半数ずつでした。一般に、法人化している企業は事業規模や経営体制がやや整っている傾向があり、こうした企業は以前から補助金制度を活用しているケースも考えられます。一方、法人番号のない個人事業主等は今回が初めての採択(初採択)である割合が高い可能性があります。もちろん絶対ではありませんが、企業規模の大きい法人は情報収集力もあり過去回から継続応募してきた“常連”が含まれていても不思議ではないでしょう。

また、社名の特徴から推測すると、「○○有限会社」といった法人組織の事業者は比較的歴史があったり計画的に事業展開しているケースが多く、過去の公募回でも採択経験があるリピーターの可能性があります。一方、屋号が個人名や一般名詞の事業者(例えば「○○商店」「○○農園」など)は地域の小規模事業者で今回初めて申請・採択に至ったケースも多いと考えられます。

しかし実際には、法人・個人を問わず経営意欲の高い事業者は複数回応募する傾向があり、本補助金も各回ごとにテーマを変えて再チャレンジすることが認められています。

以上を踏まえると、第17回公募の採択事業者のうち相当数は初採択組と思われる一方、一定割合で過去からのリピーターも存在すると考えられます。特に法人企業や継続投資が必要な製造業者などは計画段階から複数回にわたり補助金を活用しているケースもあり得ます(あくまで法人番号の有無や社名等からの推察にとどまる点は注意が必要です)。

いずれにせよ、小規模事業者持続化補助金は繰り返し活用できる制度であり、新規参加者もリピーターもそれぞれの成長ステージに応じてチャレンジしていることが、このデータから読み取れると言えるでしょう。

(注)上記分析結果は、第17回公募【商工会地区】採択者一覧(公開PDF)に記載された情報をもとに集計・推定したものです。

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