9月も終わり、来年度(令和8年度=2026年度)の税制改正に向けた材料が揃ってきました。
この記事では、経産省の税制改正要望、中小企業の研究開発投資を後押しする固定資産税の特例案、そして企業版ふるさと納税(地方創生応援税制)の最新実績を、実務で使える目線で一気に整理します。最後に、今週末(2025年10月4日)に投開票の自民党総裁選が税制議論へ与える影響もチェックします。
目次
経産省が「令和8年度 税制改正要望」を公表—目玉はR&D税制の拡充・延長
2025年8月29日、経済産業省が令和8年度の税制改正要望を公表。
主なポイントは以下のとおりです。
- 研究開発税制の拡充・延長(控除率見直し等で投資インセンティブを強化)経済産業省
- 中小企業の研究開発投資拡大特例(地方税)の新設(後述)経済産業省
- 30万円未満の少額減価償却資産の特例延長 ほか(要望書全体に記載)経済産業省
なお、赤字期でも将来の黒字化時に減税効果を繰り越せる仕組み(税額控除の繰越)についても、研究開発投資を下支えする文脈で検討が示されています。
実務の示唆
- 研究テーマや開発費の会計・税務トラッキングを今期から精緻化。要望が通った場合に即応できるよう、KPI(研究開発比率、テーマ別費用)を月次で見える化しておくのが吉。
中小企業のR&D投資を固定資産税で後押し—「試作は5年ゼロ」「量産/新製品は3年ゼロ」の要望
経産省要望の中でも中小企業向けに注目なのが、固定資産税の大胆な減免です。要望の要旨は次のとおり(2年間の時限措置として新設を要望)。経済産業省
対象資産 | 減免内容(固定資産税) |
---|---|
試作品開発用資産 | 5年間、全額免除 |
量産技術開発用資産 / 新製品開発用資産 | 3年間、全額免除 |
出所:経産省「令和8年度 税制改正要望(ポイント/概要)」および政策の事前評価書。地方税(固定資産税)の特例創設として、中小企業のR&D設備投資を直接的に後押しする設計が示されています。経済産業省
ここがポイント(中小企業)
- 赤字・低収益局面でも使える(地方税の固定資産税減免のため、法人税額控除と異なり損益状況に左右されにくい)。経済産業省
- 対象判定で重要なのは資産の用途(試作/量産技術/新製品開発)の明確化。稼働記録・設計書・試作検証報告などの証憑整備を今のうちから。経済産業省
今やるチェックリスト
- 来期の試作設備・検査装置・治具の投資計画を棚卸し
- 資産台帳に用途区分(試作/量産技術/新製品)欄を追加
- 自治体との事前相談の可否と手順を確認(条例対応・申告様式の想定)
- 補助金(ものづくり等)との重複適用の可否を確認(制度設計により取扱いが変わる可能性)
※本特例は要望段階です。制度化の有無・適用要件は年末〜年明けの与党大綱・関連法改正で確定します。最新版の一次情報で必ず最終確認を。経済産業省
企業版ふるさと納税、令和6年度の寄附実績は金額・件数とも約1.3倍に拡大
2025年9月19日、内閣府が令和6年度(2024年度)の寄附実績を公表。金額・件数とも前年から大幅増です。実績
- 金額: 約631.4億円(約1.3倍)
- 件数: 18,457件(約1.3倍)
- 寄附企業数: 8,464社(約1.1倍)
実務の示唆
- 地域連携PJや人材・研究拠点の地方展開を検討する企業にとって、広報・採用・ESGストーリーと結び付けやすい制度。専用ポータルで採択事例と受け皿自治体を確認し、財務・サステナビリティ部署横断で年度内の寄附枠をデザインするのが効果的です。関連情報
なお、個人版ふるさと納税では、仲介サイトの「ポイント付与」が2025年9月末で終了し、10月1日以降は禁止。9月は“駆け込み”が話題になりました(クレカ通常ポイントは対象外)。タイミングと家計影響の説明時に注意。毎日新聞
今後の論点|総裁選後の与野党協議:給付付き税額控除/ガソリン暫定税率
- 2025年10月4日(土)に自民党総裁選。石破首相の後任を選出し、少数与党下での政策運営・税制調整が続きます。総裁選の行方は、年末の税制大綱にも影響し得ます。
- 給付付き税額控除(所得に応じた税額控除+現金給付)は、自民・公明・立憲の3党で制度設計の協議が始動。総裁選の公約論点にも上がっており、設計論が前進しています。
- ガソリン税の暫定税率は年内の早期廃止に向け協議が続く一方、恒久財源の詰めが焦点。法人優遇の見直しや金融所得課税など代替財源案も議論に上っています。最新の協議状況は逐次フォローを。