中小企業成長加速化補助金は、将来的に売上高100億円超を目指す成長志向の中小企業を支援する大型の補助金制度です。最大5億円という破格の補助上限額に加え、幅広い経費が対象となるため、多くの企業の注目を集めています。
しかし、上場企業やその子会社でも申請できるのか、必須要件である「100億円宣言」とは具体的にどのようなものなのか、といった疑問を抱く方も少なくありません。
本記事では、中小企業成長加速化補助金の詳細から、上場企業が申請するための条件、そして採択を勝ち取るためのポイントまで徹底解説します。
中小企業成長加速化補助金の基本情報を知りたい
中小企業成長加速化補助金とは?目的と概要
中小企業成長加速化補助金は、日本経済全体の賃上げと投資を底上げする目的で2025年度に新設された補助金制度です。特に、地域経済への大きな波及効果が見込まれる企業の、大胆な設備投資を後押しすることを目的としています。
この補助金は、将来的に売上高100億円超を目指す成長志向の中小企業を主なターゲットとしており、これまでの補助金にはなかった独自の要件が設定されています。
補助金の対象となる経費と補助上限額
中小企業成長加速化補助金の補助上限額は最大5億円、補助率は1/2以内と非常に大規模な点が特徴です。
補助対象となる経費も幅広く、建物の新設・増改築費、機械装置や専用ソフトウェアの導入費、外注費、専門家への謝金などが含まれます。補助事業期間は交付決定日から最長24か月以内と定められています。



上場企業でも中小企業成長加速化補助金は利用できる?
中小企業成長加速化補助金の対象企業要件
中小企業成長加速化補助金の対象となるのは、中小企業等経営強化法で定める「中小企業者」に該当する事業者です。
具体的には、業種ごとに資本金または常時使用する従業員数が一定規模以下の企業が該当します。例えば、製造業であれば資本金3億円以下または従業員300人以下、卸売業であれば資本金1億円以下または従業員100人以下といった基準が設けられています。

上場企業が中小企業の定義に該当するケースとは
上場企業であっても、上記の中小企業の定義に収まる規模であれば、形式上は応募が可能です。
ただし、成長加速化補助金の要件として「売上高10億~100億円未満」が設定されているため、大企業並みの規模の上場企業は実質的に対象外となります。
この補助金は、主に年商10億円以上100億円未満の中堅的な中小企業を念頭に置いた制度です。
大企業の子会社やみなし大企業は対象になるのか
大企業の子会社や、いわゆる「みなし大企業」も原則として応募は可能です。
ただし、企業グループでの共同申請(コンソーシアム)を行う場合、全ての参画企業が中小企業要件を満たし、各社が個別に100億円宣言を行う必要があります。また、売上高が100億円を超える企業は対象外となるため、グループ全体の売上高や資本金が基準を超える場合は注意が必要です。

申請の必須条件「100億円宣言」とは何か?
100億円宣言とは?その目的と内容
100億円宣言とは、申請企業の経営者が「売上高100億円を目指す」という野心的な目標を公式ポータルサイトで公表する制度です。
この宣言は、単なる意思表明にとどまらず、成長に向けた経営者のコミットメントと具体的な実現可能性を示すことが目的です。宣言には、企業の現状、100億円実現のための目標と課題、そして具体的な措置や実施体制などを記載する必要があります。
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上場企業が100億円宣言を行うメリット
上場企業が100億円宣言を行うメリットは多岐にわたります。
最も大きなメリットは、この宣言が中小企業成長加速化補助金や、今後開始される経営強化税制の拡充措置といった支援制度の活用に不可欠な要件となっている点です。
また、宣言を行うことで、成長を目指す経営者同士が地域や業種を超えてつながるネットワークに参加できるほか、公式ロゴマークを活用して自社の成長意欲を外部にアピールするブランディング効果も期待できます。
宣言の要件「売上高10億円〜100億円未満」は一時的な変動でも大丈夫?
100億円宣言ができるのは、売上高が10億円以上100億円未満の企業に限定されます。
一時的に売上が変動した場合、例えば過去3期分の決算に基づいて判断される場合があります。直近の売上高が10億円を下回っていても、過去の平均で基準を満たしているケースでは申請が可能になる場合がありますので、公募要領のQ&Aなどで詳細な確認が必要です。

成長加速化補助金に申請するための具体的な要件を知りたい
必須となる3つの要件(100億円宣言、投資額、賃上げ)の詳細
成長加速化補助金に申請するには、主に3つの重要な要件を満たす必要があります。
第一に、前述の100億円宣言を行い公表していることです。
第二に、外注費や専門家経費を除く設備投資額が最低1億円(税抜)以上であること。
そして第三に、賃上げ目標を設定することです。
具体的には、補助事業終了後3年間にわたり、従業員等の給与総額または一人当たり給与総額の年平均上昇率が、事業実施地域の直近5年間の最低賃金上昇率以上となる目標を掲げ、これを達成できない場合は補助金の一部返還が義務付けられます。


グループ会社でのコンソーシアム申請は可能か?
グループ会社や異なる会社同士で「コンソーシアム」を組んで共同申請することも認められています。
この場合、全ての参画企業が中小企業の要件を満たす必要があります。コンソーシアム申請は、互いの強みを活かして相乗効果を狙うことができ、より大規模な事業計画を立てられるというメリットがあります。
金融機関による確認書の要件と準備方法
申請にあたっては、事業計画の実現可能性を担保するため、金融機関による事業計画の確認を受けることが求められます。
これは、単に融資を受けることだけを指すのではなく、事業計画そのものに金融機関が「お墨付き」を与えることを意味します。この要件があるため、申請準備の段階から金融機関と密に連携し、事業計画について十分に協議しておくことが重要です。
事業計画書で重視される審査項目とポイント
審査では、経営者のビジョンや成長戦略の明確さを示す経営力、地域経済や産業競争力への波及効果を説明する波及効果、そして投資実行の財務・組織体制の実現可能性を示す実現可能性という3つの軸が重視されます。
事業計画書では、これらの審査項目に沿って、論理的かつ説得力のある記述を行うことが採択への鍵となります。
成長加速化補助金の公募スケジュールと採択状況は?
2025年度の公募スケジュール(第1回、第2回)
2025年度はすでに第1回公募が実施されました。
第1回公募では、2025年3月17日に公募要領が公表され、5月8日に申請受付開始、6月9日に申請が締め切られています。採択発表は2025年9月中旬以降が予定されています。
なお、第2回公募は2025年中に実施される見通しで、年度内に合計2〜3回の公募が行われると予想されています。
第1回公募の申請件数と今後の採択見込み
第1回公募では、締切までに1,270件もの有効な申請がありました。
この制度は一件あたりの補助金額が大きいため、ものづくり補助金などに比べて採択件数そのものは少数になる可能性があります。採択結果の公表は9月中旬以降とされているため、現時点での採択率は不明ですが、限られた予算枠の中で相応に競争が生じると考えられます。
過去の採択事例や採択率は公開されている?
中小企業成長加速化補助金は2025年度に新設された制度のため、過去の採択率や採択事例はありません。
しかし、類似する大型補助金である「大規模成長投資補助金」などの採択傾向を参考にすると、高い目標値を掲げ、過剰投資になっていないか、財務状況や組織体制が十分に整っているか、といった点が厳しく審査される傾向にあります。
二次審査(プレゼン審査)はどのように行われる?
中小企業成長加速化補助金の審査は、一次の書面審査を通過した後に、二次審査としてプレゼンテーションが行われます。
二次審査では、事業計画書の内容を経営者自身が審査員に直接説明する形式が想定されており、代表者の出席が必須です。このプレゼン審査を突破するには、事業計画に対する深い理解と熱意を伝えることが不可欠となります。
他の補助金との違いを比較して知りたい
「ものづくり補助金」との違い:対象規模、目的、補助要件
中小企業成長加速化補助金が年商10〜100億円規模の中堅中小企業による大規模投資に焦点を当てているのに対し、ものづくり補助金は幅広い中小企業・小規模事業者が対象です。
ものづくり補助金の目的は革新的な新製品・新サービスの開発や海外市場開拓を伴う設備投資であり、補助上限額も最大で数千万円規模と、成長加速化補助金よりも小規模です。
「新事業進出補助金」との違い:対象事業、経費、目的
新事業進出補助金は、既存事業とは異なる新分野への進出(新規事業開拓)がテーマです。このため、対象となる事業内容が明確に定められています。
一方、成長加速化補助金は、新規事業に限らず既存事業の拡大を含むあらゆる大規模投資が対象となります。また、新事業進出補助金は広告宣伝費なども補助対象となる点が特徴ですが、成長加速化補助金は主に設備投資に特化しています。
上場企業が補助金を選ぶ際のポイント
上場企業が補助金を選ぶ際は、自社の事業計画の規模と目的に最も合致する制度を選ぶことが重要です。
大胆な大規模投資で飛躍的な成長を目指すのであれば、成長加速化補助金が第一の選択肢となります。しかし、より小規模なイノベーションを目的とする場合はものづくり補助金、全く新しい分野への事業転換を目指す場合は新事業進出補助金といったように、各補助金の特性を理解して使い分けることが求められます。
中小企業成長加速化補助金の申請を成功させるには
申請で失敗しないための準備と注意点
申請を成功させるには、まず早期の準備が不可欠です。
特に、100億円宣言や金融機関からの確認書など、申請までにリードタイムを要する準備があるため、公募が始まってからでは間に合わない可能性があります。
また、事業計画書はすべての審査項目に対して明確でポジティブな回答を準備し、論理的かつ説得力のある内容に仕上げることが重要です。
専門家(コンサルタント・認定支援機関)活用のメリット
中小企業成長加速化補助金のような難易度の高い大型補助金では、専門家(コンサルタントや認定経営革新等支援機関)の活用が非常に有効です。
専門家は、過去の採択傾向を分析したノウハウに基づき、事業計画書の作成支援や二次審査のプレゼン対策など、多角的なサポートを提供してくれます。これにより、自社だけでは気づきにくい弱点の改善や、採択率を高めるための戦略的なアドバイスを得ることができます。
公募要領やQ&Aをどこで確認できるか
中小企業成長加速化補助金に関する最新の情報は、中小企業庁や中小機構の公式サイトで確認できます。
公募要領やQ&A、説明会資料などが随時公開されますので、常に最新情報をフォローすることが重要です。また、GビズIDプライムアカウントの取得も必須要件であり、申請手続きに時間がかかるため、早めに取得しておくことを推奨します。
お問い合わせ
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