【独立したての税理士は狙い目?】税理士1名の個人事務所と契約するメリット・デメリットを徹底解説!

【独立したての税理士は狙い目?】税理士1名の個人事務所と契約するメリット・デメリットを徹底解説!

会社経営において、税務・会計の専門家である税理士は非常に重要なパートナーです。しかし、税理士事務所と一口に言っても、その規模は様々。大手から中堅、そして税理士1名で運営される個人事務所まで、多種多様な形態が存在します。

特に、これから事業を始める起業家の方や、コストを抑えたい小規模事業者の方にとって、「税理士1名の事務所ってどうなんだろう?」と疑問に思うこともあるのではないでしょうか。

この記事では、主に独立して間もない税理士が運営することの多い「税理士1名のみの事務所」に焦点を当て、その特徴、メリット、そしてデメリットについて分かりやすく解説していきます。

税理士1名事務所のリアルな特徴とは?

まず、税理士1名で運営されている事務所の一般的な特徴を見ていきましょう。

  • 独立直後の税理士が多い傾向: 多くのケースで、このタイプの事務所は税理士資格を取得し、独立を果たしたばかりの先生が運営しています。そのため、業界経験が比較的浅い可能性は否定できません。また、1人で対応できる業務範囲には物理的な限界があることも考慮すべき点です。
  • 若さと情熱、フットワークの軽さ: 一方で、独立したばかりの税理士は、事業を軌道に乗せようという強い情熱と意欲を持っています。顧問先獲得にも積極的で、フットワーク軽く、迅速に対応してくれる可能性が高いでしょう。メールや電話へのレスポンスが早い、急な相談にも柔軟に対応してくれる、といった期待が持てます。
  • 税理士本人が直接担当:「顔が見える」安心感: スタッフを雇用せず、税理士本人がすべての業務を担当するケースがほとんどです。これは、「担当者がコロコロ変わる」「資格のないスタッフに任せきり」といった大手事務所で聞かれるような不満とは無縁であることを意味します。税理士自身のこだわりや信念に基づき、責任感を持って丁寧に業務に取り組んでくれることが期待できます。クライアントとしては、常に資格を持った専門家本人と直接コミュニケーションが取れるという安心感があります。
  • 密なコミュニケーションと関係構築: クライアント数がまだ少ない段階では、必然的に一社一社との関わりが深くなります。経営者の悩みや事業の状況を深く理解し、単なる税務処理にとどまらない、親身なアドバイスを提供してくれる可能性があります。信頼関係を築きやすい環境と言えるでしょう。

メリット:「顧問料以上」の価値が手に入る可能性

税理士1名の事務所と契約することには、特に起業初期や小規模事業者にとって、見逃せないメリットが存在します。

驚きのコストパフォーマンス「お得」な契約の可能性

これが最大の魅力かもしれません。独立当初は、実績作りや顧客獲得のために、戦略的に顧問料を低めに設定している税理士が多くいます。さらに、前述の通り、情熱を持って丁寧に対応してくれるため、結果的に「顧問料以上のサービス」を受けられる可能性が非常に高いのです。

(私自身の体験談に基づく考察)

私自身の経験からも言えることですが、私自身が会計事務所として独立した当初はクライアントが少なく、時間的な余裕がありました。そのため、例えば本来であれば月額10万円程度のサービス内容を、月額1万円で提供するような、今思えば「やりすぎ」とも言えるサポートをしていた時期があります。これは、単に「安売り」をしていたわけではなく、クライアントの成功を心から願い、持てる時間とエネルギーを最大限に投入していた結果です。多くの独立したての税理士が、同様の経験を持っているのではないでしょうか。

親身で柔軟な対応

税理士本人との距離が近いため、気軽に相談しやすい雰囲気があります。「こんなこと聞いてもいいのかな?」と思うような些細な疑問でも、親身になって耳を傾け、丁寧に説明してくれるでしょう。相性が良ければ、経営上の悩み全般について相談できる、心強い右腕のような存在になることもあります。

起業直後の会社に最適なパートナー

会社を設立したばかりの時期は、分からないことだらけです。本業に集中したい一方で、税務や会計、資金繰りなど、専門的な知識が必要な場面も多く訪れます。しかし、設立当初は潤沢な資金があるわけではなく、顧問料はできるだけ抑えたいというのが本音でしょう。 このような状況において、「顧問料は抑えたいけれど、専門家にはしっかり頼りたい」というニーズに、独立したての税理士1名の事務所は非常にマッチしやすいのです。適切な税務処理を行わないと、後々大きな不利益を被るリスクもあります。起業直後こそ、信頼できる専門家を見つけることが重要であり、その有力な選択肢として、1名体制の事務所を検討する価値は大いにあります。まさしく「お値段以上」の価値を実感できる可能性が高いフェーズと言えるでしょう。

注意点:永遠ではない?サービスの変化とその理由

魅力的なメリットがある一方で、注意しておきたい点もあります。それは、当初の「お得」な状況が永続するわけではない可能性があるということです。

  • クライアント増加に伴う変化: 優秀で熱意のある税理士であれば、当然、徐々にクライアントを獲得し、事務所は成長していきます。クライアント数が増えるにつれて、必然的に一社あたりにかけられる時間やエネルギーには限界が生じます。
  • サービスの「適正化」: 独立当初の、ある意味「採算度外視」とも言えるサービス提供は、事業が軌道に乗るにつれて、徐々に「報酬額に見合ったサービス」へと調整されていくのが自然な流れです。これは「サービスの質が落ちた」というよりは、むしろ「異常な低価格状態から、持続可能な適正価格・適正サービスへとバランスが取れていく過程」と捉えるべきでしょう。 月額1万円のクライアントには1万円に見合うサービス、月額10万円のクライアントには10万円に見合うサービス、というように、報酬額に応じた対応へと変化していくのは、ビジネスとして当然のことなのです。
  • 顧客側の心構え:初期のメリットを享受できたと考える: もし当初の「お得感」が薄れたと感じたとしても、それは契約当初に特別なメリットを享受できていた証拠です。その数年間の「ラッキーな期間」があったことに感謝し、今後は適正な料金で適正なサービスを受ける、という本来の関係性に戻ったと前向きに捉えることが大切です。もちろん、サービス内容に明確な不満がある場合は、しっかりと税理士と話し合う必要があります。

デメリット:契約前に必ず確認すべきリスク

メリットだけでなく、税理士1名事務所ならではの潜在的なリスク(デメリット)も理解しておく必要があります。

マンパワー不足による業務遅延・連絡難

税理士が1人しかいないため、繁忙期(確定申告時期など)や、急な依頼が重なった場合、あるいは税理士自身の体調不良などによって、業務が滞ってしまうリスクがあります。連絡がつきにくくなったり、レスポンスが極端に遅くなったりする可能性もゼロではありません。特に、スピード感を重視する経営者にとっては、ストレスの原因となる可能性があります。

バックアップ体制の欠如:万が一の事態への備えがない

最大の懸念点とも言えるのが、バックアップ体制の不在です。もし税理士が病気や事故などで長期的に業務を行えなくなったり、最悪の場合、急に廃業してしまったりした場合、代わりに対応してくれる人がいません。会社の決算や申告といった重要な業務が完全にストップしてしまうリスクを孕んでいます。これは事業継続において非常に大きな問題となり得ます。

相性の重要性:ミスマッチの場合の影響が大きい

税理士本人と直接やり取りするため、その税理士との相性がすべてと言っても過言ではありません。能力面はもちろん、性格や価値観、コミュニケーションスタイルが合わない場合、ストレスを感じたり、十分なサポートが得られないと感じたりする可能性があります。スタッフがいる事務所であれば、担当者変更という選択肢もありますが、1名事務所ではそれができません。契約前の面談などで、じっくりと相性を見極めることが極めて重要になります。

経験・知識の限界の可能性

独立して間もない場合、経験不足から、特殊な税務問題や複雑な案件、特定の業種に関する専門知識が十分でない可能性があります。自社の事業内容や将来的な展望によっては、より経験豊富な税理士や、特定の分野に強みを持つ事務所の方が適している場合もあります。

専門知識のアップデートへの懸念:

税法は毎年のように改正されます。大規模な事務所であれば、研修制度が充実していたり、複数人で情報を共有したりできますが、1名事務所の場合は、税理士自身が主体的に学び続ける必要があります。多忙な業務の中で、最新情報のキャッチアップや研修参加の時間が十分に取れていない可能性も考慮に入れるべきかもしれません。

税理士1名事務所を選ぶ際のポイントと比較検討

では、実際に税理士1名事務所を検討する際には、どのような点に注意すれば良いのでしょうか。

  • 自社の状況とニーズを明確にする: まずは自社の規模、業種、成長ステージ、そして税理士に何を求めるのか(コスト重視か、専門性重視か、コミュニケーション重視かなど)を明確にしましょう。
  • 事前の面談・相談を重視する: 契約前に必ず複数の税理士と面談し、直接話をすることが重要です。以下の点を確認しましょう。
    • コミュニケーション: 話しやすいか、説明は分かりやすいか、質問に丁寧に答えてくれるか。レスポンスの速さなども確認できると良いでしょう。
    • 経験・実績: これまでの経験や得意分野、自社の業種への理解度などを確認します。
    • 人柄・価値観: 長期的なパートナーとして信頼できるか、経営に対する考え方などに共感できるかを見極めます。
    • 将来のビジョン: 事務所を今後どのようにしていきたいか、といった将来的な展望を聞いてみるのも参考になります。
  • デメリットへの対策を確認する: バックアップ体制の欠如などのデメリットについて、税理士自身がどのように考えているか、何か対策(他の税理士との連携など)を講じているかを確認してみるのも良いでしょう。
  • 他の選択肢(中規模・大規模事務所)と比較する: 1名事務所だけでなく、中規模・大規模事務所のメリット・デメリットも理解した上で比較検討することが、最適な選択につながります。例えば、大規模事務所は料金が高めな傾向がありますが、専門分野が細分化されており、バックアップ体制も整っているという安心感があります。

会社の成長と税理士変更のタイミング

起業当初は税理士1名事務所が最適だったとしても、会社の成長とともに状況が変わることもあります。

初期フェーズの強力な味方

前述の通り、起業初期においては、コストパフォーマンスや親身な対応といった面で、1名事務所は非常に頼りになる存在です。

成長に伴うミスマッチの発生

しかし、会社が順調に成長し、事業規模が拡大していく一方で、税理士事務所が依然として1名体制のままだと、徐々にズレが生じてくる可能性があります。会社の求めるサービスレベルに対して、税理士側のリソース(時間、知識、対応力)が追いつかなくなるのです。一番の理想的な関係としては、会社規模の拡大とともに、税理士事務所の規模も拡大して、お互いの成長フェーズが一致している状況がもっともうまくいくといえます。

もし会社規模が成長しているのに、税理士さんの方は昔のまま、といった感じだときっといろいろな場面でミスマッチが起きてくる状況だと思いますので、このフェーズになってくると、今後について検討していく時期かもしれません。

見直しのサイン

以下のような状況が見られるようになったら、税理士の変更を検討するタイミングかもしれません。

  • 連絡が頻繁に滞る、レスポンスが著しく遅くなった。
  • 依頼した業務の遅延が目立つようになった。
  • 会社の成長に必要な、より高度な税務アドバイスや経営コンサルティングに対応できなくなってきた。
  • バックアップ体制の不在に対する不安が大きくなった。
  • (先に挙げたデメリットが顕在化してきたと感じる場合)

円満な関係解消と次のステップへ

もし税理士変更を決断した場合でも、これまでの感謝の気持ちを伝え、円満に関係を解消することが望ましいです。そして、会社の新たなフェーズに合った税理士を探し、次のステップへと進みましょう。

まとめ:自社に最適な税理士選びのために

税理士1名のみで運営される個人事務所は、特に独立したての税理士が多く、フットワークの軽さ税理士本人による丁寧な対応が期待できます。

最大のメリットは、独立当初のクライアント獲得期において、顧問料以上の高品質なサービスを受けられる「お得」な契約になる可能性が高いことです。特に、顧問料を抑えたい起業直後の会社にとっては、非常に魅力的な選択となり得ます。

しかし、その「お得」な状況は、事務所の成長に伴って変化する可能性があることを理解しておく必要があります。また、マンパワー不足による業務遅延リスク病気や事故の際のバックアップ体制の欠如、そして税理士との相性がすべてといったデメリットも存在します。

最終的に重要なのは、これらのメリット・デメリットを十分に理解した上で、自社の現在の状況、将来の展望、そして税理士に求めるものを明確にし、最適なパートナーを見つけることです。

会社の規模が小さい間は1名事務所にお願いし、会社の成長に合わせて、そのフェーズに適した税理士を改めて検討するという考え方も有効でしょう。理想的なのは、会社の成長速度と税理士事務所の成長速度が歩調を合わせられる関係ですが、ズレが生じた際には、柔軟に見直しを検討することも大切です。

この記事が、あなたの会社にとって最適な税理士選びの一助となれば幸いです。