人手不足が常態化するなか、オーダーメイドの設備導入やシステム構築まで支援するのが「中小企業省力化投資補助金(一般型)」。生産・業務プロセスの省力化を通じて付加価値向上と賃上げを後押しする制度です。
本記事では、一般型のポイントと活用手順をやさしく整理します。
参考:中小企業省力化投資補助金
目次
一般型の概要と“できること”
- 目的
IoT・ロボット等のデジタル技術を活用した省力化投資を支援し、付加価値・生産性の向上→賃上げにつなげる。 - 対象
中小企業者・小規模事業者、特定事業者の一部、NPO・社会福祉法人 など。 - 導入できるもの
個社の現場や事業内容に合わせた機械装置+ソフトウェア+周辺機器+システム構築を一体で支援(ハードとソフトの組み合わせ可)。
補助上限額(従業員数に応じて)
従業員数 | 通常上限 | 大幅賃上げ特例* 適用時 |
---|---|---|
5人以下 | 750万円 | 1,000万円 |
6〜20人 | 1,500万円 | 2,000万円 |
21〜50人 | 3,000万円 | 4,000万円 |
51〜100人 | 5,000万円 | 6,500万円 |
101人以上 | 8,000万円 | 1億円 |
* 大幅賃上げ特例の目安:給与支給総額の年平均+6%以上、かつ事業場内最低賃金が地域最低賃金+50円以上 など。
公募要領:中小企業省力化投資補助金
補助率
- 中小企業:1,500万円まで 1/2(※条件満たせば2/3)、超過分は1/3
- 小規模事業者・再生事業者:1,500万円まで 2/3、超過分は1/3
(※「最低賃金引上げ特例」等の適用条件あり)
基本要件(抜粋)
- 労働生産性の年平均成長率 +4.0%以上
- 1人当たり給与支給総額の年平均成長率が所定基準以上 または +2.0%以上
- 事業場内最低賃金が 地域最低賃金+30円以上
- 一般事業主行動計画の公表等(従業員21名以上)
未達の場合は返還規定あり(一定の免除要件あり)。
補助対象経費(代表例)
- 機械装置・システム構築費(必須)
- 技術導入費、専門家経費、運搬費、クラウドサービス利用費、外注費、知的財産権等関連経費 など。
実務上のポイント
- Sler等を活用する場合は、3〜5年の保守・メンテ契約を含めて体制を整備するのが原則。
- 事業実施期間は「交付決定から18か月以内(採択発表から20か月以内)」で導入完了〜実績報告までを済ませる。
- 交付決定前の契約・発注・支出はNG(いかなる理由でも対象外)。必ず交付決定後に契約・支払いへ。
- ファイナンス・リースは対象になり得るが、セール&リースバックや転リースは対象外。契約時期や処分制限に注意。
申請〜交付の流れ(一般型)
- GビズIDの取得(プライム)
- 事業計画の作成(省力化の数値根拠・賃上げ計画を明確化)
- 設備・システムの選定(相見積)
- 応募申請
- 審査 → 補助金交付候補者決定
- 交付申請 → 交付決定
- 導入・実績報告 → 補助金受領(以後、効果報告)
※ 公式フローの要点を要約。
活用アイデア(業種別ミニ事例)
- 製造:協働ロボット+AI外観検査+MES連携でライン自動化/段取り短縮。
- 物流:AMR(自律搬送ロボット)+WMS連携でピッキング省人化。
- 飲食・小売:セルフオーダー・券売機+在庫/発注自動化でピーク対応。
- バックオフィス:AI-OCR+ワークフロー+仕訳自動化で経理の月次締め短縮。
(上記はいずれも「機械装置+ソフト+クラウド」を一体設計する一般型の想定)
採択に近づく“3つのコツ”
- “省力化の見える化”
- 導入前後の作業時間・人員・処理量を動画やタイムスタディで定量化。
- “付加価値・賃上げのロジック”
- 省力化→歩留まり改善/残業削減/売上増→付加価値増→賃上げ原資の因果を数式で明示(生産性+給与支給総額の目標も)。
- “一体設計”
- ハード・ソフト・保守を一体で。3〜5年の体制と費用計画まで盛り込む。
申請前チェックリスト(抜粋)
- GビズIDプライムは取得済み(時間がかかるため最優先)
- 相見積・要件定義・導入スケジュールを確定
- 省力化効果の算定(作業時間・人件費・処理量の前後比較)
- 賃上げ計画(最低賃金+30円/大幅賃上げ特例の可否)
- 交付決定前に契約しない運用フローの徹底(社内ルール化)
まとめ
一般型は、個社の課題に合わせたオーダーメイドの省力化を狙えるのが最大の魅力。上限は最大1億円、補助率は最大2/3(条件あり)。労働生産性+賃上げの両立を数字で語れる計画づくりがカギです。
GビズIDと相見積→交付決定後契約の順序を守り、18か月の実施期間内で確実に完了させましょう。
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