中小企業省力化投資補助金は、人手不足の解消や生産性向上を目指す中小企業にとって、非常に魅力的な制度です。特に、その採択率がどの程度なのかは、多くの事業者が気になる点でしょう。
ここでは、最新の採択結果を基に、この補助金の採択率と、他の補助金との比較について詳しく解説します。
第1回公募の採択結果レビュー
第1回公募の採択結果と採択率
中小企業省力化投資補助金の「一般型」第1回公募は、大きな注目を集めました。
その採択結果は、申請数1,809件に対し、採択数が1,240件でした。この結果、採択率は68.5%となり、申請した企業の約7割が採択されるという非常に高い水準でした。
これは、新しい補助金制度の初年度ということもあり、多くの事業者にチャンスがあったことを示唆しています。
他の補助金と比較して採択率は高い?
中小企業省力化投資補助金の採択率68.5%は、他の主要な補助金と比較して高い傾向にあります。
例えば、ものづくり補助金や事業再構築補助金は、一般的に採択率が30〜50%程度で推移することが多いです。この補助金は、人手不足という国の重要な課題解決を目的としているため、予算規模が大きく、採択されやすい傾向が見られます。
そのため、設備投資を検討している中小企業にとって、非常に狙い目だと言えるでしょう。
こちらの記事で詳細を分析しています!
中小企業省力化投資補助金
採択率から見る、制度のホントと攻略法
高い採択率に注目!補助金の全体像
第1回公募(一般型)の採択率は
申請した企業の約7割が採択される高い水準。人手不足という国の重要課題解決を目的としているため、予算規模が大きく採択されやすい傾向にあります。
なぜ「使いにくい」と言われるのか?3つの課題
カタログの製品数が少ない
当初、対象となる製品カタログの掲載数が少なく、企業が必要とする製品を見つけにくいという問題がありました。
製品の汎用性が低い
掲載製品が特定の業種に特化しすぎており、多くの企業にとって自社に適した製品がないと感じられていました。
カタログの更新頻度が低い
新しい技術や製品がなかなか追加されず、最新の設備を導入したい企業のニーズに応えられていない状況でした。
課題解決の切り札「一般型」の新設
これらの課題に対応するため、より柔軟な設備投資を可能にする「一般型」が新設されました。2つの類型の違いを見てみましょう。
カタログ注文型
- 対象: カタログ掲載の汎用製品
- 特徴: 申請が比較的簡単でスピーディー
- 補助上限: 最大1,500万円
- 向いている企業: すぐに導入できる既製品で省力化したい企業
一般型 (新設)
- 対象: オーダーメイド設備・システム
- 特徴: 自社に最適化された高度な投資が可能
- 補助上限: 最大1億円
- 向いている企業: 独自の課題解決のためにカスタマイズされた設備が必要な企業
事業計画の必須要件
補助金を受けるには、以下の3つの目標を盛り込んだ事業計画の策定が必須です。これらは企業の成長と従業員への還元を示す重要な指標となります。
採択を勝ち取る!事業計画の「鉄板ストーリー」
現状と課題の提示
自社の現状を分析し、「人手不足」という具体的な課題を明確に示します。
課題解決への努力
採用活動の強化など、これまで課題解決のために行ってきた努力を記述します。
省力化投資の必要性
努力だけでは解決できない状況を説明し、なぜ今この投資が必要なのかを訴えます。
リソースの再配分
投資で生まれた余剰人員を、より付加価値の高い業務へ配置転換する計画を示します。
生産性向上と利益創出
リソース再配分が会社全体の生産性向上と利益増加にどう繋がるかを具体的に語ります。
従業員と経済への還元
得られた利益を賃上げで従業員に還元し、経済全体へ貢献する姿勢を示します。
採択率をさらに高める「加点項目」
事業計画書の内容に加え、以下の項目を満たすことで評価が上がり、採択の可能性が高まります。
事業承継・M&A
事業継続力強化計画(BCP)認定
大幅な賃上げ
女性活躍推進 (えるぼし等)
そもそも中小企業省力化投資補助金とは?全体像を解説
中小企業省力化投資補助金は、経済産業省の令和5年補正予算によって導入された補助金制度です。
人手不足の解消や生産性向上に効果のあるIoTやロボットなどの省力化技術の導入を支援し、企業の付加価値向上と賃上げにつなげることを目的としています。
この補助金制度には「カタログ注文型」と「一般型」の2つの類型が存在し、それぞれ異なる特徴を持っています。
いつからいつまで申請できる?2025年度のスケジュール
中小企業省力化投資補助金の申請スケジュールは類型によって異なります。
カタログ注文型は2025年8月9日以降、随時受付が行われ、採択・交付決定も随時行われる予定です。
一方、一般型には公募期間が設けられており、2025年の第3回公募は8月下旬まで申請を受け付け、11月下旬に採択発表が予定されています。今後のスケジュールは順次更新されるため、公式サイトで最新情報を確認することが重要です。
一般型とカタログ注文型、2つの類型は何が違う?
中小企業省力化投資補助金には、主に「カタログ注文型」と「一般型」の2つの類型があります。
カタログ注文型は、あらかじめ事務局が用意したカタログに掲載されている汎用的な製品(自動券売機や清掃ロボットなど)を導入する際に利用します。申請手続きが比較的簡単で、補助金申請の経験がない事業者でも利用しやすいのが特徴です。
一方、一般型は、事業内容に合わせてカスタマイズされた機器やオーダーメイドのシステムを導入する場合に利用できます。こちらはカタログ注文型よりも補助上限額が高く設定されています。
補助金の対象となる企業・事業・設備は?
補助金の対象となるのは、主に人手不足に悩む中小企業や小規模事業者です。
具体的には、労働生産性の向上や賃上げの目標を掲げた事業計画を策定する必要があります。
対象となる設備は、IoTやロボット、AI画像検査装置、クラウドシステムなど、人の手で行っていた業務を自動化・効率化できる機器やシステムです。単にパソコンを導入するだけといった汎用的なものは対象外となるため、注意が必要です。

採択率を上げる事業計画書の書き方とポイント
高い採択率を誇る中小企業省力化投資補助金ですが、確実に採択を勝ち取るためには、説得力のある事業計画書を作成することが不可欠です。
審査員がどこを評価しているのか、どのようなストーリー構成で書けばよいのか、専門家の視点から解説します。
審査員は何を見ている?3つの重要項目
審査員は、事業計画書を「的確性」「技術面」「計画面」「政策面」の4つの観点で評価します。
特に技術面では、省力化指数、投資回収期間、付加価値額、オーダーメイド性という4つの観点が重視されます。例えば、省力化指数は、導入した設備によってどれだけ業務時間が削減されるかを示すもので、具体的な数値で根拠を示す必要があります。また、計画面では事業の実行力や財務状況の妥当性が、政策面では地域や業界への波及効果が評価されます。
専門家が教える採択される事業計画の「ストーリーの型」
採択される事業計画書には「ストーリーの型」があります。
まず、自社の現状と課題(特に人手不足)を明確に示し、その課題を解決するためにこれまで行ってきた努力(例:採用活動の強化、残業で対応)を記述します。
次に、それでも解決できない状況だからこそ、今回の省力化投資が必要であることを訴えます。
そして、この投資によって人の手が空いた分を、付加価値の高い業務(例:技術指導、新製品開発)に振り向けることで、会社全体の生産性向上と利益増加を実現する、という未来を示します。
最後に、その利益を賃上げとして従業員に還元し、地域経済にも貢献するという流れで締めくくることで、審査員を納得させる説得力のある計画書になります。
採択の鍵を握る「加点項目」とは?
採択を有利に進めるためには、事業計画書の内容に加え、「加点項目」を満たすことも重要です。
加点項目には、事業承継やM&Aを実施した事業者への加点、事業継続力強化計画の認定を受けている事業者への加点、賃上げ目標をさらに高く設定した事業者への加点、そして女性の活躍を推進する「えるぼし認定・くるみん認定」を取得している事業者への加点などがあります。
これらを事前に準備しておくことで、採択される可能性をさらに高めることができます。

申請前に知っておくべき注意点とデメリット
中小企業省力化投資補助金は魅力的な制度ですが、申請や受給にはいくつかの注意点やデメリットも存在します。これらの点を事前に理解しておくことで、予期せぬトラブルを避けることができます。
賃上げ目標を達成できなかった場合、補助金は返還になる?
この補助金は、賃上げを重要な目的の一つとしています。
そのため、賃上げ目標(給与支給総額の年平均成長率+2%以上、事業場内最低賃金が地域別最低賃金+30円以上など)を達成できなかった場合、原則として補助金の一部を返還する義務が発生します。
ただし、天災などのやむを得ない事情や、付加価値額が増加せず事業計画期間の過半数が赤字であった場合など、特定の条件を満たす場合は返還を免除される可能性もあります。
ものづくり補助金やIT導入補助金との併用は可能か
中小企業省力化投資補助金は、他の補助金との併用について明確なルールがあります。
同じ内容の事業で他の補助金と併用することはできません。
また、過去にものづくり補助金の交付決定を受けてから10ヶ月を経過していない事業者や、過去3年間に2回以上交付決定を受けている事業者は、中小企業省力化投資補助金の対象外となります。
IT導入補助金と併用する場合も、同一の業務プロセスを対象とした省力化製品の導入は認められていません。
申請手続きは難しい?専門家に相談すべきか
特に「一般型」の申請手続きは、事業計画書の作成に高度な専門性が求められるため、独力で行うのは非常に難しいとされています。
投資効果の分析や向上についての理解が乏しい場合、採択に必要な事業計画書の策定は困難になるでしょう。そのため、採択のためには専門家の支援を推奨しています。
補助金の専門家に相談し、客観的な視点から事業計画書のブラッシュアップを行うことが、採択を勝ち取るための有効な手段です。

まとめ:採択率の高い補助金を活用して生産性向上を図ろう
中小企業省力化投資補助金は、人手不足という喫緊の課題を抱える中小企業にとって、非常に価値のある制度です。
第1回公募の採択率は約7割と高く、他の補助金に比べて採択されるチャンスが大きいと言えます。この補助金を活用することで、IoTやロボットなどの導入による業務の効率化、従業員の労働時間削減、そして賃上げを通じた人材確保という好循環を生み出すことが可能です。
事業計画書を論理的かつ説得力のある内容に仕上げ、必要に応じて専門家のサポートを受けることで、採択率の高いこの補助金を活用し、持続的な成長を実現してください。
第2回公募の採択結果レビュー
2025年8月8日に第2回の採択結果について公表がありました。
詳細は以下にてまとめていますが、採択率は約61%と、第1回に続き依然として高水準となっており、狙い目の補助金といえそうです。
こちらの記事で詳細を分析しています!