会社設立1年目こそ「攻めの税務体制」を―― マネーフォワードに強い“伴走型税理士”を探そう!

会社設立1年目こそ「攻めの税務体制」を―― マネーフォワードに強い“伴走型税理士”を探そう!

今回は、設立1年目の企業が陥りがちな会計・税務の課題から、マネーフォワードクラウド(MFクラウド)を最大限活用し、信頼できる税理士と共に「攻めの経営」を実現するための具体的なステップまでを解説します。

以下のような経営者はぜひご確認いただければと思います。

  • 今年法人を設立したばかりの方
  • まだ税理士と顧問契約を結んでいない方
  • マネーフォワードクラウド会計で自力入力を始めたものの、仕訳の正確性、決算の進め方、効果的な節税について専門家のアドバイスとサポートを求めている経営者の方

いま何が起きている?――設立1年目のリアルな現状把握

法人設立、おめでとうございます。事業を軌道に乗せるべく奮闘されていることと思います。さて、会計や税務の状況はいかがでしょうか? 設立1年目の企業様からよく伺う現状を整理してみましょう。

【会計環境のよくある状況(ヒアリングより)】

項目現状起こりうる影響・課題
会計ソフトマネーフォワードクラウド会計を導入済みデータはあるものの、仕訳ルールが自己流で一貫性がない可能性がある
入力体制社長自らが銀行・カード連携データを元に仕訳登録勘定科目の選択に迷いが生じたり、消費税区分の判定が曖昧になったりしがち
決算・申告税理士が不在で、決算・申告は未経験申告締切から逆算したスケジュール管理が不明瞭必要とされている設立後の手続きや効果的な節税策も未検討のまま…
税務調査対策具体的な対策はノープランいわゆる「自計化」していても、請求書や領収書などの根拠書類が整理されておらず散在しがち
経営管理売上管理のExcelデータと、MFクラウドの試算表が直接リンクしていない手元の“現金残高”と帳簿上の“黒字/赤字”が一致しないという感覚に陥りやすい

このように、MFクラウドを導入していても、その機能を十分に活かせず、かえって非効率や潜在的なリスクを抱えているケースは少なくありません。特に、税務の専門知識がないまま自己流で入力を続けると、後々大きな問題につながる可能性があります。

「社長が入力してるから大丈夫」に潜む、見過ごせない落とし穴

「MFクラウドで銀行口座もカードも連携してるし、入力も自分でやってるから税理士はまだいいかな…」そう考える経営者の方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、そこには見過ごせない「落とし穴」が存在します。

  • 税法・会計基準のアップデート追従は困難: 税法や会計基準は毎年のように改正されます。本業で多忙な経営者が、これらの最新情報を常にキャッチアップし、正確に実務へ反映させるのは至難の業です。
  • ミスの発覚は「後から」: 入力ミスや解釈の間違いは、すぐには表面化しません。問題が発覚するのは、税務調査が入った時や、融資相談で銀行から指摘された時など、時間差で、かつ外部からの指摘という形で現れることがほとんどです。
  • 決算直前の大混乱リスク: 日々の入力ミスが積み重なると、決算直前になって大量の修正作業が必要になることがあります。その結果、想定していた利益や納税額が急変動し、資金繰り計画が狂う…といったストレスフルな事態に陥りかねません。
  • 節税は「期首」からの準備が鉄則: 効果的な節税策の多くは、期中に計画的に実行する必要があります。「決算前に何かできないか?」と考えても、打てる手は限られてしまいます。節税のチャンスは期首から始まっているのです。

社長自身が会計ソフトを操作できることと、税務的に正しく、かつ有利な処理ができているかは、全く別の問題なのです。

放置できない!3つの核心課題:決算遅延・資金繰り不安・節税機会の損失

設立1年目に税理士と連携せずに進めた場合、特に以下の3つの核心的な課題に直面するリスクが高まります。

決算遅延リスク:

決算申告の期限は事業年度終了後2ヶ月以内です。税理士不在のまま、期限が迫ってから慌てて帳簿整理を始めても、資料収集や複雑な処理に手間取り、間に合わせるために連日「終電コース」になる…といった事態も現実的です。期限に遅れれば、延滞税などのペナルティも発生します。

資金繰り不安:

「設立1年目は赤字だろうし、法人税はゼロだから大丈夫」と考えるのは早計です。たとえ赤字でも、消費税(※課税事業者選択時や特定期間の判定による)、源泉所得税、社会保険料など、支払うべき税金や費用は発生します。これらを想定せずにいると、突然のキャッシュアウトに慌てることになりかねません。

節税機会の損失:

設立初期から活用できる節税策は意外と多くあります。例えば、小規模企業共済経営セーフティ共済(倒産防止共済)への加入少額減価償却資産の特例中小企業経営強化税制(設備投資の即時償却や税額控除)など、これらは基本的に“事前に検討・実行”しておく必要があります。知らなかった、検討する時間がなかった、では大きな機会損失です。

これらの課題は、設立初期の貴重な経営資源(時間、資金、労力)を浪費させ、会社の成長を阻害する要因となり得ます。最初のうちは税理士へ依頼する報酬を抑えたい気持ちはとても理解できますが、税理士への報酬を抑えた以上の損失を被るケースも多々ありますので、最初の段階で最低限の相談をしておいた方が無難です。

改善ロードマップ:MFクラウド×専門家連携で「リアルタイム経営情報」へ

では、どうすればこれらの課題を克服し、MFクラウドを真の経営ツールとして活用できるのでしょうか? その答えは、専門家である税理士と早期に連携し、計画的に体制を構築することにあります。以下に、その具体的なロードマップを示します。

【MFクラウド × 税理士連携 改善ロードマップ】

フェーズ目安期間主な役割ゴール具体的なアクション例
0. 仕訳ルール整備〜1ヶ月税理士会計処理の標準化勘定科目や税区分のテンプレート作成、MFクラウドの自動仕訳ルールの最適化
1. 月次監査 & 試算表確定2〜3ヶ月MF自動連携+税理士レビュー翌月15~20日までの月次業績把握自動連携されたデータを税理士がチェックし、月次損益計算書(PL)と簡易資金繰り表を作成・報告
2. KPIダッシュボード構築4〜6ヶ月税理士+経営者経営状況の可視化売上高、限界利益率(またはFL比率)、キャッシュ残高など、重要指標をグラフ等でリアルタイム表示
3. 節税 & 資金調達プラン決算3ヶ月前税理士財務戦略の具体化各種共済制度の活用提案、補助金申請サポート、融資相談に向けた事業計画・資金繰り計画作成支援
4. 決算シミュレーション決算1ヶ月前税理士納税額予測と最終調整当期利益見込みに基づき、法人税・消費税等の納税額を予測。役員報酬の調整等による節税案を提示

このロードマップはあくまで一例ですが、重要なのは段階的に、税理士と協力しながら進めるという点です。 フェーズ0で入力の基礎を固め、フェーズ1で月次の経営状況をタイムリーに把握できるようにし、フェーズ2で重要な経営指標(KPI)を常にモニタリングできる体制を構築。そして、フェーズ3、4で得られた正確な数値に基づき、戦略的な節税や資金調達へと繋げていきます。

これにより、MFクラウドは単なる記帳ツールから、未来を見通すための「リアルタイム経営情報基盤」へと進化するのです。

後悔しない税理士選び:“伴走型税理士”に求めるべき7つの必須条件

ロードマップを成功させるためには、適切な税理士選びが不可欠です。特に設立初期は、単に決算申告を代行するだけでなく、経営に寄り添い、共に成長を目指してくれる「伴走型」の税理士が理想と考えます。

では、具体的にどのようなスキルや姿勢を求めればよいのでしょうか? 必ず確認したい7つの条件を挙げます。

1. MFに精通していることが確認できること

  • MFクラウドのAPI連携や自動仕訳ルールなどシステム仕様に精通している証明
  • 税理士事務所HP等で導入実績や認定アドバイザーのバッジを確認

2. 仕訳レビューを画面共有でレクチャー可能

  • 指摘だけでなく、操作方法や考え方を教えてもらうことで、自社の経理能力が向上する
  • 初回面談時に「MFクラウドの操作画面を見ながら教えてもらえるか?」とデモを依頼してみる

3. 月次試算表を10営業日以内に提出

  • リアルタイムな経営判断のためには、月次業績の早期把握が不可欠
  • 事前に提出期限をすり合わせしてもらう

4. チャットワーク・Slack等に対応

  • 日々の疑問点を気軽に、迅速に解消できるコミュニケーション手段があるか
  • 利用可能なツール返信時間の目安、追加費用の有無を確認

5. 設立1~3年企業の支援実績が豊富

  • 同じフェーズの企業が抱える特有の課題や悩みを熟知し、的確なアドバイスが期待できる
  • 具体的な支援事例の紹介を依頼する、事務所の口コミや評判を調べる

6. 資金調達・補助金の専門家(または連携)

  • キャッシュが不足しがちな設立初年度を乗り切るための具体的なサポートが必要
  • 認定経営革新等支援機関(認定支援機関)であるか、具体的な実績を確認

7. 料金テーブルがシンプルで明確

  • 後から想定外の追加請求が発生するリスクを回避し、安心して依頼できる
  • 顧問料、決算料、その他オプション(年末調整、償却資産税申告など)が明示されているか

これらの条件を満たす税理士は、MFクラウドの活用支援はもちろん、設立初期の経営課題全般に対して、強力なパートナーとなってくれるでしょう。

自社に合うのは?税理士の規模別マッチング早見表(設立初期はココが狙い目!)

税理士事務所と一口に言っても、その規模は様々です。規模によって特徴や得意分野、料金体系も異なります。設立1年目の企業にとって、どの規模の事務所がマッチしやすいのでしょうか?

事務所規模特徴本ケース(設立1年目)への適合度コメント
① 税理士1名(スタッフ0~2)フットワークが軽く、柔軟な対応が期待できる。価格も比較的安価な傾向。★★★★★教育熱心でMFクラウドに強い先生ならベストマッチの可能性。ただし、所長の急病時などのバックアップ体制は確認が必要。
② 税理士1名+スタッフ5名前後MFクラウド運用チームを持つ場合も。組織的な対応が可能で、相談へのレスポンスも比較的早い★★★★コストパフォーマンスとサポート体制のバランスが良い。設立初期の企業にとって有力な選択肢の一つ。
③ 税理士複数+スタッフ10名前後部門制を敷き、専門性の高いサービスを提供。DX支援専門部署を持つ場合も。★★★☆☆専門的なサポートは期待できるが、価格はやや高めになる傾向。コミュニケーションが担当者レベルで完結しがちになる可能性も。
④ それ以上の規模税務・会計以外にも法務・労務などワンストップで対応可能。保証体制も充実★★☆☆☆サービスは充実しているが、設立初年度にはオーバースペック気味で、顧問料も高額になる可能性が高い。

設立1年目で、これからMFクラウドを活用した経理体制を構築していく段階であれば、フットワークが良く、経営者との距離が近い①や②の規模の事務所が特に狙い目と言えるでしょう。コミュニケーションを密に取りながら、二人三脚で体制を作っていくのに適しています。

初回面談で必ず確認!失敗しないための10の質問リスト

気になる税理士が見つかったら、次は初回面談です。限られた時間の中で、自社との相性や提供されるサービス内容を的確に見極めるために、事前に質問事項を準備しておくことが重要です。以下の10項目は、必ず確認するようにしましょう。(※チェックリストとしてダウンロードできるようにするのも良いでしょう)

【税理士との初回面談 必須確認質問リスト10】

  1. MFクラウドの導入・運用支援実績は具体的に何社くらいありますか?特に同業種の支援経験はありますか?
  2. 月次試算表や経営レポートはいつまでに、どのような形式(データ、紙、解説付きなど)で受け取れますか?
  3. 年間で発生が予想される税務署や市区町村への各種届出(設立関連、異動届など)は、すべて代行してもらえますか?追加費用は発生しますか?
  4. チャット等での質問は、月(または年間)何件まで無料ですか?それを超えた場合の料金体系はどうなりますか?
  5. 代表税理士の方が直接対応してくださる業務範囲と、スタッフの方が対応される業務範囲を教えてください。
  6. 節税に関する提案は、決算申告後だけでなく、期中にも積極的に行っていただけますか?
  7. 資金繰り表の作成や相談は可能ですか?もし可能な場合、どのようなツール(Excel、MFクラウド資金繰り機能など)で共有・管理しますか?
  8. 将来的なインボイス制度や電子帳簿保存法への対応について、どのようなサポートやアドバイスを期待できますか?
  9. 顧問料やその他料金の改定は、どのようなタイミングや条件で行われますか?
  10. 可能であれば、顧問契約後の支援内容がイメージできるよう、同規模・同業種の具体的な事例を3件ほど紹介していただけますか?(守秘義務に配慮した範囲で)

これらの質問を通じて、サービスの具体的内容、コミュニケーションの取りやすさ、料金の透明性、そして何より自社の状況を理解し、積極的に関与してくれる姿勢があるかどうかを見極めましょう。

顧問料は投資対効果で判断!「資金繰り表」を使った具体的な測定方法

税理士との顧問契約を検討する際、やはり気になるのは「顧問料」でしょう。きちんとしたサービスをトータルで受けようと思うと、設立1年目の企業の場合、月額2万円~3万円、決算料が10万円~15万円程度が一つの相場感と言えます(※事務所の規模やサービス内容、記帳代行の有無などによって変動します)。

ただし、料金はサポート範囲や工数によって変わります。トータルのサポートまでは必要ない場合には、お願いする範囲を限定することで、月額1万円~2万円といった形や、決算のときやスポットでの相談といったカスタマイズした契約もできると思いますので、まずは複数の税理士と面談をしてみて、各事務所の特徴や料金体系、また重要となる相性を確認してみることをお勧めします。

一概に税理士といっても、事務所によって、また税理士によって、まったくカラーが異なりますし、得意分野や支援スタイルが異なり、同一のサービスはありません。今は、税理士を複数紹介して選べるサービスがありますので、まずはそのサービスを利用して、できれば5名程度の税理士と面談をしてみて決めてみるのがよいのではないでしょうか?

「設立したばかりで売上も少ないのに、毎月数万円の固定費は厳しい…」と感じるかもしれません。しかし、ここで重要なのは、顧問料を単なる「コスト」として捉えるのではなく、「投資」として捉える視点です。適切な税理士と連携することで、顧問料を上回る経済的なメリットを得られる可能性が高いからです。

費用対効果の考え方

効果(リターン)の例

節税効果: 小規模企業共済や経営セーフティ共済への加入提案で、年間70万円の掛金が全額所得控除となりキャッシュが温存できた。

ミス防止効果: インボイス制度対応の不備による仕入税額控除漏れ(例えば年間30万円相当)を回避できた。

資金調達メリット: 税理士が作成に関与した精度の高い試算表や事業計画書を提出することで、銀行からの信頼度が向上し、当初予定より低い金利で運転資金500万円を調達できた(利息負担軽減)。

投資額

年間の税理士顧問料+決算料

投資対効果の計算式

年間顧問料総額(税金・支払利息のコスト削減額+資金調達額増加などのメリット額)​×100

計算例

年間のメリット合計額が 100万円、年間の顧問料総額が 50万円だった場合・・・「50万円100万円​×100=200% 」

⇒この場合、支払った顧問料の2倍のリターンがあった、と考えることができます。

もちろん、税理士の価値は金額だけで測れるものではありません。経営に関する相談相手がいる安心感や、本業に集中できる時間の創出といった無形の価値も大きいですが、このように具体的な金額メリットを試算してみることで、顧問契約への納得感を高めることができるでしょう。

まとめ:設立1年目こそプロを巻き込み“攻めの数字”を掴み取ろう

設立直後の大変な時期、「少しでもコストを抑えたいから、会計入力は自分でやる」という考え方自体は、決して間違いではありません。

しかし、導入したマネーフォワードクラウド会計を、単なる「記帳ツール」で終わらせてしまうのか、それとも経営の意思決定を加速させる「経営ダッシュボード」へと昇華させられるかで、設立2年目以降の成長スピード、資金繰りの安定度は大きく変わってきます。

MFクラウドは、あくまで“自動化された会計”を実現するための入口に過ぎません。 そのポテンシャルを最大限に引き出し、

  • 月次決算を早期化し、キャッシュフローを先読みする
  • 節税や資金調達の最適な打ち手を、“決算前”ではなく“期中”に計画的に仕込む
  • インボイス制度や電子帳簿保存法といった複雑な制度変更にも、迷わず的確に対応する

ためには、DX(デジタルトランスフォーメーション)と税務の両方に精通し、経営に寄り添ってくれる「伴走型税理士」の存在が不可欠です。

彼らとの連携により、「数字がよく分からないから、とりあえず守りの経営…」という状態から、「数字がリアルタイムに分かるからこそ、自信を持って攻めの経営判断ができる」状態へと移行することが可能になります。

設立1年目だからこそ、税理士顧問料はコストではなく“経営のスピードと質を高めるための投資”と捉え、早い段階で信頼できるパートナーを見つけることを強くおすすめします。

ぜひ、この記事で紹介したポイントを参考に、貴社に最適な税理士を見つけ、マネーフォワードクラウドをフル活用しながら、“攻めの数字”を掴みながら力強く駆け抜けてください